著者
江尻 桂子 松澤 明美 Keiko Ejiri Akemi Matsuzawa
出版者
茨城キリスト教大学
雑誌
茨城キリスト教大学紀要. II, 社会・自然科学 = Journal of Ibaraki Christian College. I, Humanities, II, Social and natural sciences (ISSN:13426370)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.153-160, 2013

The present study discusses workforce participation and family income of households with mothers who take care of children with disabilities. We collected data from 103 Japanese mothers of children with disabilities using a questionnaire survey. The results showed that they face more difficulties in participating in paid work, and their households have lower family incomes compared to mothers of children without disabilities. On the basis of these results, we discuss the importance of providing financial and other support for families who take care of children with disabilities.
著者
江尻 桂子
出版者
茨城キリスト教大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

幼児・児童における危険認知能力の発達過程について、実験的に検討した。その結果、こうした認識が芽生え始めるのは年長児頃であること、正しい危険認識に基づき、危険回避行動ができるようになるのは小学1年以上であることが示された。また保護者へのアンケート調査から、保護者らは不審者の連れ去りに関して不安を感じてはいるものの、そうした事件に子どもが自ら巻き込まれる可能性は低いと考えていること、また、我が子の危険回避能力について必ずしも正しく認識しているわけではないことが示された。これらの結果をもとに、幼児・児童における発達水準に応じた防犯教育のあり方を提案した。
著者
江尻 桂子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.332-341, 2010-12-20 (Released:2017-07-27)
被引用文献数
2

本研究では,幼児・児童が,いつ頃から,未知人物との接触場面における危険の可能性について認識できるようになり,その認識のもとに,適切な行動の選択ができるようになるかを検討した。実験では,保育園年中児,年長児,小学校1年生,2年生,あわせて166名を対象に,個別面接のかたちで紙芝居と質問を行った。紙芝居では,主人公の子どもがひとりで歩いて家に帰っているときに「よく知っている人」または「全く知らない人」に何らかの誘いを受けるというストーリーを読み聞かせた。そして,もし自分が主人公であったらどのように行動するのか,また,なぜそのように行動しようと思うのかを尋ねた。実験の結果,年中から年長(4〜6歳)にかけて,接近してくる大人が既知の人物であるか,未知の人物であるかによって適切な行動を選択できるようになることがわかった(e.g.,未知人物にはついて行かない)。しかし,その際の判断の理由をみると,年長児でも必ずしも適切な理由(人物の既知性や危険性)に基づいて行動を選択しているわけではないこと,そして,正しい認識に基づいた行動の選択ができるようになるのは,小学1年生(6〜7歳)以上であることが明らかとなった。本研究の結果をふまえ,幼児・児童における,発達水準に応じた安全・防犯教育のあり方について議論した。
著者
江尻 桂子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.154-164, 1994-12-15 (Released:2017-07-20)

「これまでにない新しいもの」とは, 様々な既有知識を組み合わせることによって産み出される。では, この「知識の組み合わせ」とは, いつ頃からできるようになるのか。また, これを外的な援助によって促すことができるのか。以上の問題意識のもとに本研究は, 「この世に存在しないX (人間・家) を描く」という課題を用いて, 子どもの想像画の発達的変化と教示による効果について検討した。実験Iは, 幼児・小3・小5, 各45名を次の3条件に分けて行った。課題遂行前に「存在しないX」の例を言語的に与える (ヒント群) , 言語的かつ視覚的に与える (見本群〉, 何も与えない〈統制群) である。分析は, まず各絵について, どのような方略を使用してXを描いているかを判定した (e.g. 顔が三角形の人間→「要素の形の変化」) 。そして, 各方略の出現頻度を年齢, 条件ごとに比較した。その結果, 1. ヒント群, 見本群は統制群に比ベ, 高度な方略の使用が多くなること, 2. これらの条件下では, 幼児でも「組み合わせ」方略 (異なる概念カテゴリーを組み合わせてXを描く) を使用できること, 3. ただし, 幼児の行う組み合わせは微細で部分的なものが多く, 小3, 小5のように大幅で全体的なものではないことが明らかになった。実験IIでは, こうした教示による効果が持続するかどうかを検討するため, 幼児37名を対象に, 教示前, 教示直後, 1週間後の反応を調べた。教示を与えた群は, 教示直後, 1週間後, いずれにおいても統制群に比べて成績が高く, 効果の持続が確かめられた。
著者
江尻 桂子
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.431-440, 2013 (Released:2015-03-21)
参考文献数
39

本稿では、障害児の母親の就労について検討した国内外の研究を総覧し、これまでの知見をまとめた。国外の研究からは、(1) 障害児の母親において、就労の困難や労働時間の短縮といったワーク・ロス(労働損失)が生じていること、(2) ワーク・ロスの生起には、障害児本人および家族に関わる要因(障害の重さや世帯構成など)のほか、地域を基盤とした医療体制や支援サービスの充実が関与していること、また、(3) 母親の就労の有無は、母親の精神的健康や収入に影響していることが示されている。国内の研究からも、(1) 障害児の母親において就労困難がみられること、(2) その背景には、子どものケアに関わる社会的資源の不足をはじめとしてさまざまな要因が存在していることが指摘されている。以上の結果をもとに、今後、わが国において障害児の母親の就労問題を検討するにあたって、どのような研究が必要であるかを議論した。