著者
平原 達也 青山 裕樹 大谷 真
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.45-55, 2010-02-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
17
被引用文献数
1

様々なイヤホンの音響特性とIEC60711カプラの問題点を明らかにすることを目的として,5種類のイントラコンカ型イヤホンと3種類の挿入型イヤホンと2種類のヘッドホンのIEC60711カプラレスポンス,実耳レスポンス,位相特性,遮音特性,音響クロストーク特性,高調波歪特性を測定し比較した。その結果,イヤホン及びヘッドホンの実耳レスポンスは6〜10kHzでカプラレスポンスより6dB以上低いことが分かった。また,挿入型イヤホンの実耳レスポンスは,音響漏洩の影響により,03kHz以下でカプラレスポンスより6dB以上低いことも分かった。更に,イヤホンの位相特性と群遅延特性には特異な点はないこと,遮音量は最大でも20dB程度であること,音響クロストーク量は10kHz以下で-40dB以下であること,2〜5次の高調波歪量は-40dB以下であることが分かった。このように,イヤホンの諸特性には特段の問題は認められないが,イヤホンを聴覚実験に用いる場合は,実耳レスポンスとIEC60711カプラレスポンスとは必ずしも一致しないことを念頭において,その諸特性を適切な方法で把握しておくことが重要である。
著者
淺沼 由美子 北原 里恵 林田 優季 青山 裕美
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.10, pp.2165-2172, 2019-09-20 (Released:2019-09-20)
参考文献数
15

本邦では,医療費削減政策と,ヒトでの有効性評価が必須でないため,ジェネリック外用剤の市場占有率が増大している.我々はヘパリン類似物質含有保湿クリーム(水中油型)が基礎発汗を誘導し角層水分量を増加させることを見いだした.そこでヘパリン類似物質含有保湿クリーム後発品の保湿効果をimpression mold法で基礎発汗能を含めて先発品と比較した.後発品は角層水分量が増加せず,基礎発汗が同等に増加しなかった.保湿外用剤後発品の薬効評価は,角層水分量,基礎発汗誘導能などヒトでの複数の生物学的同等性試験で評価する必要があると考える.
著者
青山 裕
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.171-193, 2022-06-30 (Released:2022-07-28)
参考文献数
86

Volcanoes in Hokkaido had vigorous eruption histories in the last 400 years. Especially in the southern Hokkaido, Hokkaido-Komagatake, Usuzan, and Tarumaesan, reawakened in the 17th century after the long-dormant period and vigorous magmatic eruptions of VEI5 class have been recorded in the historical literature and also in geological layers. Contrary to these volcanoes, we have documented histories only after the 20th century for Tokachidake and Meakandake. Continuous volcano monitoring has been performed in major active volcanoes in Hokkaido since 1960s. In the 1970s, with the increase in seismic activity of Tokachidake, sponsored research from Hokkaido Government to Hokkaido University began to establish disaster management plans for future eruptions of active volcanoes in Hokkaido, and research reports was edited by Hokkaido University. Although 50 years have passed since the publication of the first report on Tokachidake, the reports of the research on active volcanoes are still one of the first documents to be referred when investigating the past activities of volcanoes in Hokkaido and the results of old scientific surveys. In addition, the reports include interdisciplinary contents for that time such as prediction of future eruptive activities and disaster prevention measures. The sponsored research by Hokkaido Government has continued to the present, and a new report on Tokachidake was published in 2014. The compilation of such research reports is very effective for volcano researchers and for relating field to share their awareness of the problems of volcanoes beyond their individual fields of expertise. Monitoring network around the active volcanoes in Hokkaido has been remarkably improved for these 20 years by Japan Meteorological Agency (JMA), Hokkaido University and other relating institutions. Recent data exchange in real-time among different organizations reduces duplication of monitoring resources and increases multi-parameter monitoring ability. The improved volcano monitoring network is expected to detect precursory activities of future magmatic eruptions concerned at the major volcanoes. Looking back on the eruption in the 20th century in Hokkaido, small phreatic eruptions preceded magmatic vigorous eruptions in many cases. Not only mountaineers but also tourists and citizens can easily approach the crater area without any special equipment at several active volcanoes, so even a small eruption can lead to severe volcanic disaster. (View PDF for the rest of the abstract.)
著者
青山 裕彦 坂本 信之 松井 浩二
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

脊椎動物は分節的に構成されていると考えられるが,その発生的基本単位は体節である.体節自身から発生する骨格や筋はもとより,脊髄神経や交感神経系の分節的形成も体節によって支配されている.本研究では脊椎動物のボディプラン形成機構を考察するため,体節から中軸骨格が形成される機構,とくにその胸部を特徴づける肋骨の部域特異的形態形成機構を題材に取り上げた.1.肋骨形成の3区画:体節周囲組織の肋骨形成との関わりを調べ,椎骨と結合している短い部分(近位肋骨)は神経管の底板や脊索に,その遠位にある長い部分(遠位肋骨)は表皮外胚葉に依存して発生することを示した.遠位肋骨はさらに壁側板に進入する部分(遠位肋骨胸骨部)としない部分(遠位肋骨椎骨部)の2区画に分けられる.これは近年提唱された(Burk, A),abaxial, primaxial区画にそれぞれ対応する.2.遠位肋骨形成と体節分化:表皮外胚葉と体節との相互作用を物理的に阻害すると,皮筋板の外側部(Sim 1),皮筋板辺縁近傍の椎板(Scleroaxis)の形成不全が示された.これらの遺伝子発現領域が遠位肋骨の形成に関わるのであろう.3.体壁筋の部域特異的形態形成〜腹壁筋の発生的分節性(1)体節の発生運命:腹壁の筋はほぼ第27体節のみからできることを移植実験から示した.その他の腰部体節は,肋骨のみならず,体壁筋も形成しないのである.(2)神経支配:ところが腹壁筋の支配神経は胸神経であった.筋の発生由来と支配神経の由来する分節が異なっており,支配神経からは筋の発生由来をいうことはできない.4.四肢形成と肋骨形成:胸部に四肢を誘導すると遠位肋骨胸骨部ができなかった.abaxial区画については,体壁と四肢が相補的に形成されるのである.5.中軸骨格原基の部域特異性の決定:体節形成の最も初期,原始線条から陥入する直前に,すでに決定されていることを,当該部位の移植と,そのHox遺伝子群の発現,形態形成能から示した.
著者
寺田 暁彦 中川 光弘 大島 弘光 青山 裕 神山 裕幸
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1-2, pp.17-26, 2004

In this paper, the authors describe remarkable thermo-activities especially at the fumaroles B on the southwestern cliff of the summit dome on Tarumae volcano, which unusually occurred soon after the Tokachi-oki erathquake that took place on Sep. 26 2003 (MJMA 8.0). The unusual thermoactivities include (1) increase in gas flux, (2) weak glow witnessed by the high-sensitive camera in the nighttime with positions moving night by night, and (3) ash ejection of about 24m^3. Since the high-sensitive cameras can detect thermal radiation, the observed glow would be evidence for high-temperature of rock surface. It is considered that the Tokachi-oki earthquake would affect the volcano to eject a large amount of high-temperature gas, which resulted in the weak but unusual glow and ash deposits of the order of 10m^3 in volume.
著者
山本 希 三浦 哲 市來 雅啓 青山 裕 筒井 智樹 江本 賢太郎 平原 聡 中山 貴史 鳥本 達矢 大湊 隆雄 渡邉 篤志 安藤 美和子 前田 裕太 松島 健 中元 真美 宮町 凛太郎 大倉 敬宏 吉川 慎 宮町 宏樹 柳澤 宏彰 長門 信也
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

蔵王山は,東北日本弧中央部に位置し宮城県と山形県にまたがる第四紀火山であり,現在の蔵王山の火山活動の中心となる中央蔵王においては,火口湖・御釜周辺での火山泥流を伴う水蒸気噴火など多くの噴火記録が残されている.一方,蔵王山直下では,2011年東北地方太平洋沖地震以後,深部低周波地震の活発化や浅部における長周期地震や火山性微動の発生が認められ,今後の活動に注視が必要であると考えられる.そのため,地震波速度構造や減衰域分布といった将来の火山活動推移予測につながる基礎情報を得るために,「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の一環として,人工地震を用いた構造探査実験を実施した.本人工地震探査は,全国の大学・気象庁あわせて9機関から21名が参加して2015年10月に行われ,2箇所のダイナマイト地中発破 (薬量200kgおよび300kg) によって生じた地震波を132点の臨時観測点 (2Hz地震計・500Hzサンプリング記録) および定常観測点において観測した.測線は,屈折法解析による火山体構造の基礎データの取得およびファン・シューティング法的解析による御釜周辺の地下熱水系の解明を目指し,配置設定を行った.また、地中発破に加え、砕石場における発破も活用し、表面波解析による浅部構造推定の精度向上も目指した.得られた発破記録から,解析の第一段階として,初動到達時刻を手動検測して得られた走時曲線のtime term法解析を行った結果,P波速度5.2~5.5 km/sの基盤が地表下約0.5kmの浅部にまで存在することが明らかとなった.また,本人工地震探査時および2014年に予備観測として行った直線状アレイを用いた表面波の分散性解析の結果も,ごく浅部まで高速度の基盤が存在することを示し,これらの結果は調和的である.一方,ファン状に配置した観測点における発破記録の初動部および後続相のエネルギーを発破点からの方位角毎に求め,御釜・噴気地帯を通過する前後の振幅比から波線に沿った減衰を推定した結果,御釜やや北東の深さ約1km前後に減衰の大きな領域が存在することが示された.中央蔵王においては,これまで主に地質学的手法により山体構造の議論が行われてきており,標高1100m以上の地点においても基盤露出が見られることなどから表層構造が薄い可能性が示唆されてきたが,本人工地震探査の結果はこの地質断面構造とも整合的である.一方で,得られた速度構造は,これまで蔵王山の火山性地震の震源決定に用いられてきた一次元速度構造よりも有意に高速度であり,今後震源分布の再検討が必要である.また,御釜やや北東の噴気地帯直下の減衰域は,長周期地震の震源領域や全磁力繰り返し観測から推定される熱消磁域とほぼ一致し,破砕帯およびそこに介在する熱水等の流体の存在を示唆する.今後のさらなる解析により,震源推定の高精度化など,火山活動および地下流体系の理解向上が期待される.
著者
加賀谷 美幸 青山 裕彦 濱田 穣
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.31, pp.61-61, 2015

樹上性の強い霊長類ほど前肢の運動範囲が広く、前肢帯の可動性も高いとされる。前肢帯を構成する肩甲骨や鎖骨の立体配置やその位置変化の種間の違いを明らかにするため、京都大学霊長類研究所に飼育されるヒヒ、ニホンザル、オマキザル、クモザルの成体を対象として計測を行った。獣医師の協力のもと、麻酔下、接触型三次元デジタイザを用い、前肢や前肢帯骨格の位置を示す座標を、肢位を変えて取得した。また、X線CT撮影を行い、各個体の骨格要素の形状を抽出し、先に計測した三次元データに重ねあわせることにより、前肢や前肢帯の骨格の位置関係をソフトウェア上で復元した。ヒヒやニホンザルでは、上腕骨は矢状面上の投影角にして180度程度(体幹軸の延長ライン)までしか前方挙上されないが、オマキザルでは180度以上、クモザルはおよそ270度に達し、樹上性の強い新世界ザルでは頭背側への上腕の可動性が大きいことが明らかとなった。これら最大前方挙上位においては、肩甲骨が背側へ移動し、オマキザルやクモザルでは肩甲骨関節窩が頭外側を向くが、ニホンザルやヒヒでは関節窩が頭外側かつ腹側に向いており、肩甲骨棘上窩が長いために脊柱の棘突起と肩甲骨内側縁が干渉していた。とくにヒヒでは、前肢挙上時に鎖骨が胸郭上口をまたぐように胸骨から直線的に背側に向いていた。ヒヒの肩甲骨は内外側に長く鎖骨が相対的に短いことが知られており、これらの骨格形態の特徴が肩甲骨関節窩のとり得る位置や向きの自由度を低めているようであった。また、クモザルの鎖骨は弓状に大きな湾曲を示すことが知られていたが、前肢挙上時には胸郭上口の縁のカーブに鎖骨の湾曲が沿う配置となり、これによって体幹部との干渉を避けつつ肩甲上腕関節を保持できていることが観察された。このように、前肢帯骨の立体配置は種によって異なり、それが前肢の運動機能の種差をもたらしているようすが明らかとなった。
著者
青山 裕
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.1369-1373, 2004-10-20
被引用文献数
1

医療の倫理は,クライアントに責任を負う医師の視点から主に研究され,個別の問題をいかにすべきかを多様な立場から論じ,あるいは判例が検討されている.もちろん,倫理問題には明確な答えが存在するのではなく,各個人により判断,見解は相違する.クライアントの生死に身近でかかわることの少ない診療放射線技師にとって医療倫理を論じることには,違和感があるかもしれない.最良の画像を提供する医療行為の実施以前に,クライアントは被写体であり,繊細な感情を持った「ひと」である.一方,医療被曝については,技師の裁量に倫理は欠かせない.また,職域の問題もあり,臨床現場では他医療従事者との関係も含め,疑問,葛藤を感じることが多々生じる.クライアント中心の医療に医療技術者としていかに参加するか,技師にとっての倫理を考え,意識するということはどういうことか,医療倫理の四原則にアドボカシーを考慮しつつ考察する.
著者
寺田 暁彦 中川 光弘 大島 弘光 青山 裕 神山 裕幸
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1/2, pp.17-26, 2004

In this paper, the authors describe remarkable thermo-activities especially at the fumaroles B on the southwestern cliff of the summit dome on Tarumae volcano, which unusually occurred soon after the Tokachi-oki erathquake that took place on Sep. 26 2003 (MJMA 8.0). The unusual thermoactivities include (1) increase in gas flux, (2) weak glow witnessed by the high-sensitive camera in the nighttime with positions moving night by night, and (3) ash ejection of about 24m^3. Since the high-sensitive cameras can detect thermal radiation, the observed glow would be evidence for high-temperature of rock surface. It is considered that the Tokachi-oki earthquake would affect the volcano to eject a large amount of high-temperature gas, which resulted in the weak but unusual glow and ash deposits of the order of 10m^3 in volume.
著者
和久 光靖 橋口 晴穂 栗田 貴代 金子 健司 宮向 智興 青山 裕晃 向井 良吉 石田 基雄 鈴木 輝明
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-17, 2011-01-05
被引用文献数
4

顕著な貧酸素水の発生源となり周辺の浅場生態系に致命的な打撃を与えている, 埋め立て用土砂採取跡地(浚渫窪地)およびその周辺海域における酸素の消費過程を解明するため, 主たる酸素消費物質である粒子状物質の沈降フラックスを測定した。2007年6月から2007年7月の間に計4回, 浚渫窪地の内外の3測点において, 浚渫窪地上面(CDL-3.5m)と浚渫窪地海底(CDL-6.9, -6.4m)に相当する深度にセディメントトラップを設置した。懸濁態炭素の沈降フラックス(PC flux)は, 0.35〜15.3gm^<-2>d^<-1>と観測日により大きく変動し, 膨大なPC flux(9.48〜15.3gm^<-2>d^<-1>)が-6.9, -6.4m層で観測された。膨大なPC fluxの観測時には, 浚渫窪地周辺の浅海域において, 浚渫窪地から湧昇した貧酸素水に起因すると推察される底生生物の大量へい死と, そこから浚渫窪地内部への海水流入が認められた。観測されたPC fluxを上方からの沈降成分と, 水平輸送に由来する成分へ仕分けた結果, 膨大なPC fluxの観測時, 水平輸送成分は, 多いときには上方からの沈降成分の7〜11倍に相当した。これらのことから, 浚渫窪地周辺の浅海域での底生生物の大量へい死に伴い激増した粒子状物質が, 海水の流動によって浚渫窪地に輸送された結果, 膨大なPC fluxがもたらされたと考えられた。このように, 浚渫窪地は, 窪地内部の貧酸素水に起因する周辺浅海域の底生生物のへい死を招き, 浚渫窪地へ膨大な量の粒子状有機物の集積を引き起こし, 貧酸素化を加速すると示唆された。
著者
二階堂 司 齋藤 源 藤田 光則 青山 裕俊
出版者
ダム工学会
雑誌
ダム工学 (ISSN:09173145)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.152-162, 2003-09-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
4

美利河ダムでは, サクラマス (サケ科サケ属) の降下魚対策のため, ダム湖を迂回するバイパス魚道が計画されている. 魚道上端と河川の接続部には, 河川の水と魚をまとめて取り込み, 余水だけを戻して魚を魚道に誘導する施設が必要であった. 施設計画の技術的課題は, この目的に対して有効な余水吐き形式を設定することと, 魚をできるだけ迷入させない細部条件を設定することであった. 実際の魚を使った現地実験を踏まえて検討した結果, 余水吐き形式は横越流堤による薄層越流方式が有効と判断された. また, 有効な越流水深や横越流堤の形状, および照明の併用など, いくつかの設計条件が得られた.