著者
池口 徹 合原 一幸
出版者
一般社団法人 日本応用数理学会
雑誌
応用数理 (ISSN:24321982)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.260-270, 1997-12-15 (Released:2017-04-08)
参考文献数
25
被引用文献数
1

This paper reviews such embedding theorems of dynamical systems as Takens' embedding theory and the extended theory by Sauer et al. and practical methods to reconstruct possible attractors only from observed time series data. These are bases for time series analysis from the view point of nonlinear dynamical systems theory. The reconstruction method by filtered delay coordinates is also discussed.
著者
寺崎 健 池口 徹 合原 一幸 田中 智
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.78, no.12, pp.1601-1617, 1995-12-25
被引用文献数
6

本論文では,従来主として確率的な不規則現象としてとらえられてきた経済時系列データに対して,決定論的非線形ダイナミカル特性に関する解析を行う.解析の対象としたのは,対ドル円の為替レートおよび日経平均株価である.これらのデータの決定論的非線形ダイナミカル特性を定量的かつ客観的に評価するため,相関積分を用いた相関次元解析,ヤコビ行列推定法によるリヤプノフスペクトラム解析および決定論的非線形(区分線形)予測による解析を行った.相関次元解析では,いずれの場合にも相関積分から求められる局所的な傾きが収束せず,少なくとも次元が1けた程度の低次元のアトラクタを形成していないことが示唆された.リヤプノフスペクトラム解析では,いずれの場合でも最大リヤプノフ指数が正となり,決定論的カオスの特徴の一つでもある軌道不安定性を示唆する結果が得られた.最後に,決定論的非線形予測の解析結杲では,その予測精度と予測時間との関係は典型的な低次元カオスとは定性的に異なる.以上の結果により,本論文で解析した経済データは,少数自由度の力学系によって記述される典型的な決定論的カオスではない可能性が高く,軌道不安定性をもつ,より複雜な対象であることが示唆される.
著者
原木 大典 鈴木 智也 池口 徹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.676, pp.43-48, 2006-03-14

自然界など複雑なシステムにおいて生成された時系列データを解析及び予測するために、様々な手法が提案されている.その手法の有用性を評価する指標として、平均二乗誤差が用いられることが多い.この指標は、予測値を局所的な1点に定めた時の真値との誤差の平均を評価する.一方、台風の通過予報円のように、今後の状態変化を大域的な視点から予測領域として示すことも重要である.このような予測領域提示の従来法の一つにアンサンブル予測がある.アンサンブル予測とは、複数の近傍群から個別に予測器を構成し、複数の予測値を得ることで、予測領域を算出する手法である.本研究では,予測領域の算出にブートストラップ法を適用することで、アンサンブル予測との予測性能を比較する.さらに、数値シミュレーションにより、効率的な予測領域の算出にはブートストラップ法が非常に有用であることを示す.
著者
紅林 亘 藤原 寛太郎 中尾 裕也 池口 徹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.69, pp.87-90, 2013-05-20

共通のノイズ外力によって複数の系が同期する現象をノイズ同期現象といい,リミットサイクル振動子のノイズ同期現象については,既に理論的な解析法が確立されている.一方で,カオスなどのより一般の系については,未だ理論的な定式化が存在しない.本稿では,まず,従来の位相縮約法の概念を拡張し,ノイズ外力を受けるカオス振動子に対して適用できる新しい位相縮約法を提案する.そして,新しい位相縮約法をカオス振動子に適用し,そのノイズ同期現象について解析する.これにより,共通のノイズ外力に駆動される2つのカオス振動子の位相差の確率分布を導出することができ,ノイズ同期現象の統計的性質を理論的に予測することが可能となる.
著者
徳田 功 福田 弘和 池口 徹 郡 宏 池口 徹 郡 宏
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

視交叉上核(SCN)におけるニューロン群のネットワークモデルを生理実験に基づいて忠実に構築し,数値解析を行うことにより,哺乳類のサーカディアンリズムの動的メカニズムの理解を目指した。ラットSCNスライス計測データからニューロン間の結合構造を推定し,ネットワークモデルを構築して解析を行ったところ,スライスデータで観測される位相波を再現することが出来た。ニューロン間に位相差を生じる位相波は時差ボケ機構などにおいて重要な役割を果たしていると考えられる。また,概日リズム制御を目標に,電気化学振動子の結合系に対して遅延フィードバックを適用し,クラスター状態の制御が可能であることを確認した。さらには,植物遺伝子発現データの位相応答特性の計測結果に基づいて,特異点摂動から同期状態の制御を試みた。