著者
島田 裕巳
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.293-316, 2008

近代の社会に入って、新宗教が登場して以降、そうした教団は、さまざまな角度から批判を受けてきた。この論文では、新宗教の先駆的な形態である天理教からはじめて、戦後に巨大教団に発展した創価学会、そして無差別テロを実行するまでにいたったオウム真理教をとりあげ、それぞれの教団がどのような形で批判を受けてきたのかを見ていく。天理教の場合には、神懸かりする教祖を盲信する淫祠邪教の集団として批判され、批判の主体はメディアと既成教団だった。創価学会に対しては、最初既成仏教教団が批判を展開したが、政界進出後は左翼の政治勢力からも批判を受け、言論出版妨害事件以降になると、メディアが創価学会批判の中心になった。オウム真理教に対しては、最初からメディアが批判的で、一時は好意的に扱われた時期もあった。近年では、オウム真理教の場合に見られるように、メディアが新宗教批判の主体で、そこには社会の新宗教観が反映されている。
著者
牧迫 飛雄馬 島田 裕之 土井 剛彦 堤本 広大 堀田 亮 中窪 翔 牧野 圭太郎 鈴木 隆雄
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.197-206, 2017 (Released:2017-06-20)
参考文献数
31
被引用文献数
2

【目的】地域在住高齢者に適するようにShort Physical Performance Battery(以下,SPPB)算出方法の修正を試みた。【方法】高齢者4,328 名をSPPB(0 ~12 点)で評価し,歩行速度と椅子立ち座りは対象者の測定値(四分位)を基に,立位バランスは立位保持の出来高によって配点した地域高齢者向けのSPPB community-based score(以下,SPPB-com)(0 ~10 点)を算出し,24 ヵ月の要介護発生との関連を調べた。【結果】対象者の78.7% でSPPB が,10.5% でSPPB-com が満点であった。SPPB-com が4 点以下で要支援・要介護発生率が高く(12.8%),SPPB-com,年齢,女性,MMSE が要支援・要介護発生と有意に関連していた。【結論】SPPB を再得点化したSPPB-com は地域在住高齢者の要支援・要介護リスクを把握する指標として有益となることが示唆された。
著者
牧迫 飛雄馬 島田 裕之 土井 剛彦 堤本 広大 堀田 亮 中窪 翔 牧野 圭太郎 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11253, (Released:2017-04-22)
参考文献数
31
被引用文献数
2

【目的】地域在住高齢者に適するようにShort Physical Performance Battery(以下,SPPB)算出方法の修正を試みた。【方法】高齢者4,328 名をSPPB(0 ~12 点)で評価し,歩行速度と椅子立ち座りは対象者の測定値(四分位)を基に,立位バランスは立位保持の出来高によって配点した地域高齢者向けのSPPB community-based score(以下,SPPB-com)(0 ~10 点)を算出し,24 ヵ月の要介護発生との関連を調べた。【結果】対象者の78.7% でSPPB が,10.5% でSPPB-com が満点であった。SPPB-com が4 点以下で要支援・要介護発生率が高く(12.8%),SPPB-com,年齢,女性,MMSE が要支援・要介護発生と有意に関連していた。【結論】SPPB を再得点化したSPPB-com は地域在住高齢者の要支援・要介護リスクを把握する指標として有益となることが示唆された。
著者
島田 裕巳
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.293-316, 2008-09-30 (Released:2017-07-14)
被引用文献数
1

近代の社会に入って、新宗教が登場して以降、そうした教団は、さまざまな角度から批判を受けてきた。この論文では、新宗教の先駆的な形態である天理教からはじめて、戦後に巨大教団に発展した創価学会、そして無差別テロを実行するまでにいたったオウム真理教をとりあげ、それぞれの教団がどのような形で批判を受けてきたのかを見ていく。天理教の場合には、神懸かりする教祖を盲信する淫祠邪教の集団として批判され、批判の主体はメディアと既成教団だった。創価学会に対しては、最初既成仏教教団が批判を展開したが、政界進出後は左翼の政治勢力からも批判を受け、言論出版妨害事件以降になると、メディアが創価学会批判の中心になった。オウム真理教に対しては、最初からメディアが批判的で、一時は好意的に扱われた時期もあった。近年では、オウム真理教の場合に見られるように、メディアが新宗教批判の主体で、そこには社会の新宗教観が反映されている。
著者
古名 丈人 島田 裕之
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.132-137, 2006 (Released:2008-06-06)
参考文献数
60
被引用文献数
10 5

平均寿命の延長と老化に伴う個人差の増大は,運動学研究における決定論的な議論を困難にする.一方,疫学的な研究は大規模な代表性ある集団を対象とすることが多く,高齢者の諸機能の特徴,平均像を同定することができる.本稿では,まず,高齢者の運動機能研究における疫学的視点の必要性を述べ,長期縦断研究の結果から高齢者の歩行機能の加齢変化を提示した上で,健康や寿命との関わりについて概説する.さらに,運動学やバイオメカニクスと疫学の共通の課題となる転倒に焦点をあて,学際的な研究によってこれらの問題が解決できる可能性について述べる.
著者
馬場 俊介 樋口 輝久 山元 亮 島田 裕介 横井 康佑 木田 将浩
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.107-122, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
4

著者らが2007年から実施してきた「近世以前の日本の土木遺産の総合調査」では,データ蓄積と現地調査,ならびに,WEB公開を同時並行で進める中,残存遺構の価値を,(1)保存状態と(2)本質的価値に分け,後者については試行的に判断・公開してきた.保存状態の評価基準の作成に比べて本質的価値の評価基準の作成が遅れたのは,基準作成にあたって相当数のデータ蓄積が必要であり,かつ,文献上の確認も数多く必要となったからである.この度,調査開始5年目にしてようやく基準を作成できる水準に達したと判断したことから,遺構の中で最もデータ数の多い道路遺産(道標・町石・常夜灯)について,本質的価値の基本的概念を,その背景となったバックデータとともに示す.また,各評価対象項目の1位に相当するものを個別に紹介する.
著者
島田 裕之 古名 丈人 大渕 修一 杉浦 美穂 吉田 英世 金 憲経 吉田 祐子 西澤 哲 鈴木 隆雄
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.105-111, 2006-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
25
被引用文献数
50

本研究では,地域在住の高齢者を対象としてTimed Up & Go Testを実施し,性差と加齢変化を調べた。また,転倒,活動性,健康感との関係を調べ,高齢者の地域保健活動におけるTimed Up & Go Testの有用性を検討した。対象は地域在住高齢者959名であり,平均年齢74.8歳(65-95歳),男性396名,女性563名であった。検査および調査項目は,身体機能検査としてTimed Up & Go Test,歩行速度,握力,膝伸展筋力,Functional Reach Testを実施した。質問紙調査は過去1年間の転倒状況,外出頻度,運動習慣,趣味,社会活動,主観的な健康感を聴取した。Timed Up & Go Testを5歳の年齢階級別に男女差を調べた結果,すべての年代において男性が有意に速い値を示した。加齢変化をみると男女とも70歳末満と以上の各年代に有意差を認めた。男性においては他の年齢階級間に有意差は認められなかった。一方,女性では70-74歳と80-84歳,85歳以上,および75-79歳と80-84歳の間,80-84歳と85歳以上の年代間において有意差を認めた。転倒,活動性,健康感との関係では,転倒状況,外出頻度,運動習慣とTimed Up & Go Testの有意な関係が認められた。以上の結果から,高齢者におけるTimed up & Go Testは性差と加齢による低下が明らかとなった。また,転倒,外出頻度,運動習慣と密接な関係が示され,地域保健活動の評価指標としての有用性が確認された。
著者
李 成喆 島田 裕之 朴 眩泰 李 相侖 吉田 大輔 土井 剛彦 上村 一貴 堤本 広大 阿南 祐也 伊藤 忠 原田 和弘 堀田 亮 裴 成琉 牧迫 飛雄馬 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0161, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】近年の研究によると,心筋こうそく,脳卒中など突然死を招く重大な病気は腎臓病と関連していることが報告されている。クレアチニンは腎臓病の診断基準の一つであり,血漿Aβ40・42との関連が示されている。また,糖尿病を有する人を対象とした研究ではクレアチンとうつ症状との関連も認められ,うつ症状や認知症の交絡因子として検討する必要性が指摘された。しかし,少人数を対象とした研究や特定の疾病との関係を検討した研究が多半数であり,地域在住の高齢者を対象とした研究は少ない。さらに,認知機能のどの項目と関連しているかについては定かでない。そこで,本研究では地域在住高齢者を対象にクレアチニンが認知機能およびうつ症状とどのように関連しているかを明らかにし,認知機能の低下やうつ症状の予測因子としての可能性を検討した。【方法】本研究の対象者は国立長寿医療研究センターが2011年8月から実施した高齢者健康増進のための大府研究(OSHPE)の参加者である。腎臓病,パーキンソン,アルツハイマー,要介護認定者を除いた65才以上の地域在住高齢者4919名(平均年齢:72±5.5,男性2439名,女性2480名,65歳から97歳)を対象とした。認知機能検査はNational Center for Geriatrics and Gerontology-Functional Assessment Tool(NCGG-FAT)を用いて実施した。解析に用いた項目は,応答変数としてMini-Mental State Examination(MMSE),記憶検査は単語の遅延再生と物語の遅延再認,実行機能として改訂版trail making test_part A・B(TMT),digitsymbol-coding(DSC)を用いた。また,うつ症状はgeriatric depression scale-15項目版(GDS-15)を用いて,6点以上の対象者をうつ症状ありとした。説明変数にはクレアチニン値を3分位に分け,それぞれの関連について一般化線形モデル(GLM)を用いて性別に分析した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は国立長寿医療研究センターの倫理・利益相反委員会の承認を得た上で,ヘルシンキ宣言を遵守して実施した。対象者には本研究の主旨・目的を説明し,書面にて同意を得た。【結果】男女ともにクレアチニンとMMSEの間には有意な関連が認められた。クレアチニン値が高い群は低い群に比べてMMSEの23点以下への低下リスクが1.4(男性)から1.5(女性)倍高かった。また,男性のみではあるが,GDSとの関連においてはクレアチニン値が高い群は低い群に比べてうつ症状になる可能性が高かった1.6倍(OR:1.62,CI:1.13~2.35)高かった。他の調査項目では男女ともに有意な関連は認められなかった。【考察】これらの結果は,クレアチニン値が高いほど認知機能の低下リスクが高くなる可能性を示唆している。先行研究では,クレアチニン値は血漿Aβ42(Aβ40)との関連が認められているがどの認知機能と関連があるかについては確認できなかった。本研究では先行研究を支持しながら具体的にどの側面と関連しているかについての検証ができた。認知機能の下位尺度との関連は認められず認知機能の総合評価指標(MMSE)との関連が認められた。しかし,クレアチニンとうつ症状においては男性のみで関連が認められたことや横断研究であるため因果関係までは説明できないことに関してはさらなる検討が必要である。【理学療法学研究としての意義】老年期の認知症は発症後の治療が非常に困難であるため,認知機能が低下し始めた中高齢者をいち早く発見することが重要であり,認知機能低下の予測因子の解明が急がれている。本研究ではクレアチニンと認知機能およびうつ症状との関連について検討を行った。理学療法学研究においてうつや認知症の予防は重要である。今回の結果は認知機能の低下やうつ症状の早期診断にクレアチニンが有効である可能性が示唆され,理学療法研究としての意義があると思われる。
著者
島田 裕之
出版者
一般社団法人 日本老年療法学会
雑誌
日本老年療法学会誌 (ISSN:2436908X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-5, 2022-03-01 (Released:2022-03-30)

日本老年療法学会は,高齢者の健康増進,障がいの一次,二次,三次予防の効果的な知見を創出するために,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士等の専門職が一体となって議論する場を提供し,知見の共有やイノベーションの創出を目的としている。この目標を達成するためには,研究を通じた生涯学習の促進が必要であり,研究実施の手順を自己の経験を踏まえながら記述した。本学会を通して質の高い研究が広く公表されることを期待している。
著者
橋立 博幸 島田 裕之 潮見 泰藏 笹本 憲男
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.159-166, 2012-06-20 (Released:2018-08-25)
被引用文献数
5

【目的】本研究は生活機能低下の危険のある高齢者において筋力増強運動を含む機能的トレーニングが生活機能に及ぼす影響を検証することを目的とした。【方法】二次予防対象者に選定された地域在住高齢者68人(平均年齢77.4歳)を,下肢粗大筋群の重錘負荷運動およびマシンを用いたトレーニングを行う筋力増強運動群(n = 40)と,下肢粗大筋群の重錘負荷運動とともに姿勢バランス練習,歩行練習を行う機能的トレーニング群(n = 28)に群別し,運動介入を3ヵ月間行った。介入前後には,下肢筋力,姿勢バランス能力,歩行機能(timed up & go test(TUG),最大歩行速度(MWS)),活動能力,主観的健康観を評価した。【結果】介入前後において機能的トレーニング群は筋力増強運動群に比べてTUG,MWS,主観的健康観の成績の有意な改善を示した。【結論】二次予防対象者における3ヵ月間の筋力増強運動を含む機能的トレーニングは,筋力増強運動のみの実施に比べて,歩行機能,主観的健康観の向上が得られる有用な介入である可能性が示唆された。
著者
牧迫 飛雄馬 阿部 勉 大沼 剛 島田 裕之
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.382-388, 2009
参考文献数
12
被引用文献数
1

【目的】在宅訪問サービスの継続要因および訪問リハビリテーションが要介護高齢者に与える影響について検証することを目的とした。【方法】対象者は,訪問リハビリテーションを利用する要介護高齢者33名(訪問リハ群),および訪問看護または訪問介護を利用しており訪問リハビリテーションを利用していない要介護高齢者13名(非訪問リハ群)とし,3か月間のサービス継続前後で運動機能,生活機能,活動状況の変化を比較した。【結果】30%以上の対象者が3か月後には訪問サービスを中止または終了しており,訪問リハ群では脱落者のvitality indexが継続者よりも有意に低かった。訪問リハ群では運動習慣を有する者が多く,離床時間の増大に対して良好な結果を示した。運動機能や生活機能は,有意な変化を認めなかった。【結論】訪問リハビリテーションの継続には,意欲が関与することが示され,訪問リハビリテーションは運動習慣の確立や離床時間の増大へ良好な影響を与える可能性が示唆された。
著者
牧迫 飛雄馬 島田 裕之 吉田 大輔 阿南 祐也 伊藤 忠 土井 剛彦 堤本 広大 上村 一貴 Jennifer S. BRACH 鈴木 隆雄
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.87-95, 2013-04-20 (Released:2018-04-12)
参考文献数
41

【目的】日本語版-改訂Gait Efficacy Scale(mGES)の信頼性と妥当性を検証することを目的とした。【方法】地域在住高齢者240名を対象とした。そのうちの31名については,自記式による日本語版mGESの評価を2回実施した(評価間隔14〜20日間)。日本語版mGESの妥当性を検証するために,運動機能(chair-stand test,片脚立位時間,通常歩行速度,6分間歩行距離),生活空間,転倒恐怖感との関連を調べた。【結果】日本語版mGESは高い再検査信頼性を示し(級内相関係数[2,1]=0.945,95%信頼区間0.891〜0.973),すべての運動機能および生活空間と有意な相関関係を認めた。従属変数を転倒恐怖感の有無,独立変数を性別,各運動機能,生活空間,日本語版mGES得点としたロジスティック回帰分析の結果,転倒恐怖感と有意な関連を認めた項目は,性別(女性),通常歩行速度,日本語版mGES得点であった。【結論】高齢者における歩行状態の自信の程度を把握する指標として,日本語版mGESは良好な信頼性および妥当性を有する評価であることが確認された。
著者
坂田 亮一 勝俣 学 押田 敏雄 島田 裕之 神田 宏
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.76-81, 2004-06-20 (Released:2011-06-08)
参考文献数
13

通常の豚肉を用いて, 高温と低pH処理によりPSE様状態を呈する肉を人為的に調製した。調製した豚肉試料がどの程度のPSE状態であるか判定するために, 試料から抽出した筋漿タンパク質の変性程度を透過率 (Transmission Value: TM値) で測定した。その保水性, ならびにソーセージを試作しクッキングロス, 物性などの項目について比較検討を行い, PSE様豚肉における保水性とクッキングロスの関係について調べた。また加熱後の各豚肉ソーセージ試料の色調を測定し, 生肉でのPSE状態との関連性を検討した。PSE処理時のpHの低下に伴いTM値が上昇し, 筋漿タンパク質の変性が顕著に進んだ。ろ紙加圧法による保水性の測定値 (M/T値) は試料のPSE状態が進むに伴い, その値が徐々に低下し, クッキングロスは増加した。用いた試料において, 保水性とクッキングロスの間に負の相関が認められた。また, PSE様肉の保水性とクッキングロスともに, その測定値は対照区より劣る値を示した。色調測定での Hunter 値において, PSE状態の進行とともに正常肉に比べてLおよびb値の上昇とa値の低下が明らかにみられ, L*, a*およびb*も同様の変動を示し, 肉眼的所見からも赤色に乏しく白けた色調を呈した。物性測定の結果では, PSE状態が進むにつれテクスチャーが低下する傾向がみられ, このようなソーセージは商品価値が低いものと判断された。
著者
堤本 広大 牧迫 飛雄馬 土井 剛彦 中窪 翔 牧野 圭太郎 島田 裕之 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1499, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】認知症の前駆症状とされる軽度認知障害(mild cognitive impairment;MCI)では,客観的な認知機能が低下していることが定義とされ,灰白質容量が低下していることが報告されている。認知機能検査の中でも,遂行機能と灰白質容量との関係は多数報告されており,遂行機能が低下している高齢者ほど灰白質容量が低下していることが明らかとなってきている。しかし,MCI高齢者における遂行機能と灰白質容量との関連については議論の余地があり,遂行機能については下位機能が存在するため,灰白質容量低下に関連する下位機能を明らかにすることで,MCI高齢者の早期発見の一助となると考えられる。そこで,本研究では,MCI高齢者における灰白質容量と遂行機能の下位機能検査との関連を横断的に検討する。【方法】対象は,MCIに該当した高齢者83名(平均75.4±6.8歳)とした。遂行機能の下位機能検査として,注意の切り替え機能(Trail Making Test(TMT)),ワーキングメモリ(Digit Span(DS)),および選択的注意・抑制機能(Stroop test(ST))を実施した。灰白質容量の計測については,MRI装置(Magnetom Avanto,Siemens社製)を用いて撮像を行い,FSL(FMRIB's Software Library,Version 5.0)を用いて全脳における灰白質容量を算出した。統計解析では,灰白質容量と各遂行機能との相関関係を調べるためにPearsonの相関係数を算出した。その後,有意な相関関係が認められた遂行機能検査を独立変数とし,従属変数に灰白質容量,共変量に年齢,性別,body mass index,教育歴,mini-mental status examinationスコアを投入した重回帰分析を実施した。なお,統計学的有意水準は5%未満とした。【結果】遂行機能の中で,灰白質容量との有意な相関関係が認められたのはTMTのみで,TMTと灰白質容量との間には負の相関関係が認められた(r=-0.414,p<0.001)。その後,有意な相関が認められたTMTを独立変数とした重回帰分析を実施した結果,共変量で調整してもTMTと灰白質容量との関連性は有意であった(β=-0.376,p=0.001,R2=0.26)。【結論】本研究では,MCI高齢者における灰白質容量と遂行機能の下位機能検査との関連について検討し,注意の切り替え機能が低下しているMCI高齢者ほど灰白質容量が低下していることが示唆された。今後は,注意の切り替え機能が低下している健常高齢者がより早期にMCIへと移行するかどうかを検討する必要性があると考えらえる。また,本研究結果は,MCIのスクリーニングツールの中でもTMTが有用である可能性を示した。