著者
小西 克尚 玉田 浩也 北村 哲也 本康 宗信 沖中 務 伊藤 正明 井坂 直樹 中野 赳
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.197-201, 2004

症例は49歳男性.42歳時に僧帽弁狭窄症を指摘され,45歳時に人工弁置換術および左心耳縫縮術を施行された.以後外来にてアスピリン,ワーファリンを投与されていた(INR 1.32,TT38%であった).冠危険因子なし.平成13年1月1日午前1時,冷汗を伴う前胸部痛が出現し,2時間持続した後軽快.以降症状なく経過した.1月9日外来受診時に心電図上V3-5のST上昇,R波の減高を認め,心筋梗塞の診断にて同日入院となった.1月10日冠動脈造影を施行したところ左前下行枝#8に血栓を疑わせる透亮像を認めた.平成9年の冠動脈造影では同部位に動脈硬化性病変を認めず,冠動脈塞栓による心筋梗塞と判断.TIMI3の血流が保たれており,保存的に経過観察,抗凝固療法継続の方針となった.無症状にて外来経過観察を行い,6カ月後の確認造影で前回と同様の透亮像を認めた.血栓であれば透亮像は消失していると考えられ,IVUSにて観察した結果,冠動脈解離であることが判明した.末梢病変であり,運動負荷心筋シンチで虚血性変化を認めなかったことから,保存的治療を選択し,外来経過観察となった.このように,冠動脈造影のみでは限局性の冠動脈解離と血栓は鑑別が困難であり,その鑑別にIVUSが有用であると考えられた.