著者
則武良英 武井裕子# 寺崎正治# 門田昌子# 竹内いつ子# 湯澤正通
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第60回総会
巻号頁・発行日
2018-08-31

問題と目的 プレッシャーとは課題遂行者の遂行成績の重要性を高める要因であり (Baumeister, 1984),ワーキングメモリ (以下WM) の働きを阻害することで,課題成績低下を引き起こす (則武他,2017)。そのためプレッシャーの影響を緩和する介入が求められる。Ramirez & Beilock (2011) は,筆記開示を短期的に使用し,高プレッシャー状況下での算数課題成績低下の緩和効果があることを示した。その緩和効果の背景として,認知的再体制化によってネガティブな情動が低減され,WMへの影響が緩和されたとされている。しかし,実際にWMへの影響が緩和されたのかどうかについては未解明である。そこで本研究の第1の目的は,プレッシャーにより引き起こされたWM課題成績低下に対する筆記開示の効果を調べることである。 他方で,筆記開示には情動を一時的にネガティブにさせる可能性が指摘されている (King & Minner, 2000)。そこで本研究では,ポジティブな感情を扱い,明示的に認知的再体制化を促進する利益焦点化筆記開示(Benefit-Focused writing: 以下BFW) (Facchin et al., 2013)の効果を調べることを第2の目的とする。BFWと区別するために,通常の筆記開示を情動暴露筆記開示(Emotional disclosure writing;以下EDW)と呼称する。方 法実験参加者: 大学生61名(EDW群20名,BFW群21名,統制群20名)を対象とした。課題:言語性WM課題として,図形の計数を記名・再生するCounting span(Conway et al., 2005)を使用した。視空間性WM課題として,反転・回転したアルファベットの方向を記名・再生するSpatial span (Shah & Miyake, 1999)を使用した。質問紙:主観的プレッシャーの程度を測定するために,大学生用日本語版The State-Trait Anxiety Inventoryの状態不安指標(清水・今栄, 1981)と,主観的プレッシャー指標(DeCaro et al. (2010)を使用した。筆記開示:EDW群は高プレッシャー状況下で課題に取り組むこと関する思考や感情を自由に筆記した。BFW群は高プレッシャー状況下で課題に取り組むことに関するポジティブな側面だけを筆記した。統制群は実験後の予定を,感情を交えずに筆記した。 手続き:全ての実験参加者は,プレ条件で言語・視空間性WM課題の遂行と,各WM課題の遂行前に状態不安指標,遂行後に主観的プレッシャー指標に回答した。プレ条件終了後に,プレッシャーシナリオ (DeCaro et al., 2010) ((1)プレ条件と比較して,ポスト条件の課題成績が20%以上向上した場合のみ報酬が得られる。(2)ペアが設定されており,自分とペアの両方が(1)の条件を達成すると追加報酬が得られ,ペアは既に(1)を達成している。(3)遂行の様子をビデオカメラで撮影し映像は分析される)が提示された。その後,実験参加者は各群の筆記開示を7分間行った。ポスト条件ではプレ条件と同様に,WM課題の遂行と質問紙の回答をした。結 果 言語性WM課題得点を従属変数として,ブロック (プレ・ポスト)×グループ (EDW群・BFW群・統制群) の2要因の分散分析を実施した結果,交互作用が有意であった (F (2, 58) = 7.49, p < .01)。単純主効果検定の結果,EDW群 (F (1, 58) = 4.42, p < .05) とBFW群 (F (1, 58) = 27.49, p < .01) でブロックの単純主効果が有意であった。統制群では統計的に有意な差は示されなかった。視空間性WM課題得点を従属変数として,ブロック×グループの2要因の分散分析を実施した結果,交互作用が有意であった (F (2, 58) = 18.82, p < .01)。単純主効果検定の結果,EDW群(F (1, 58) = 13.86, p < .01)とBFW群 (F (1, 58) = 8.27, p < .01) と統制群(F (1, 58) = 17.54, p < .01)でブロックの単純主効果が有意であった。 状態不安指標得点と主観的プレッシャー指標得点を従属変数とするブロック×グループの2要因の分散分析を実施した結果,有意な交互作用はみられなかった。考 察 EDWとBFWはプレッシャーが引き起こすWM課題成績低下の影響を緩和することが示された。今後の課題として,主観的プレッシャーの測定方法の改善,認知的再体制化の程度の測定が挙げられる。
著者
十代田 朗 安島 博幸 武井 裕之
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.373-378, 1991-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
28
被引用文献数
1

戦前の東京には, 武蔵野を中心に数多くの別荘が存在していた。しかし, これらの別荘は同時代に高原や海浜に盛んに立地していた避暑・避寒を目的とした別荘とは異なり, 気温の違いを求めたものではなかった。これらはわが国における別荘の原型のひとつであるが, 武蔵野に関する研究は, 多くがその開発史や風景・イメージに関するものであり, 武蔵野に存在した別荘はあまり研究の対象とされることがなかった。そこで本研究では, 市区史, 地誌, 古地図, 現地踏査, 別荘所有者へのヒアリング, 伝記などによって, 戦前の武蔵野における別荘の多くが “はけ” に立地し, レクリエーション拠点, 書斎, 農園など多様な利用がされたこと, その成立背景を示した。
著者
十代田 朗 安島 博幸 武井 裕之
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.373-378, 1992-03-31
被引用文献数
1 1

戦前の東京には,武蔵野を中心に数多くの別荘が存在していた。しかし,これらの別荘は同時代に高原や海浜に盛んに立地していた避暑・避寒を目的とした別荘とは異なり,気温の違いを求めたものではなかった。これらはわが国における別荘の原型のひとつであるが,武蔵野に関する研究は,多くがその開発史や風景・イメージに関するものであり,武蔵野に存在した別荘はあまり研究の対象とされることがなかった。そこで本研究では,市区史,地誌,古地図,現地踏査,別荘所有者へのヒアリング,伝記などによって,戦前の武蔵野における別荘の多くが"はけ"に立地し,レクリエーション拠点,書斎,農園など多様な利用がされたこと,その成立背景を示した。
著者
西田 浩志 栗山 由加 川上 賀代子 武井 裕輔 千葉 貴裕 増田 秀美 風間 克寿 大塚 彰 佐藤 眞治 小西 徹也
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.169-175, 2011-06-10
被引用文献数
1

芽キャベツとケールの交配から生まれた新しい野菜であるプチヴェールはカルシウムなどをはじめとしたミネラルやビタミン・βカロテンなどの栄養素に富んだ野菜であることから, その機能性に関する研究成果が待たれている。本研究では高脂肪・高ショ糖・高コレステロールの肥満誘導食 (ウエスタン飼料) を与えたマウスに対してプチヴェールがどのような影響を及ぼすかを検討した。通常食群 (CT), 通常食+5%プチヴェール群 (PV), ウエスタン飼料群 (W), ウエスタン飼料+5%プチヴェール群 (WPV) の4群を設定した。ウエスタン飼料給餌による体重および内臓脂肪重量の増加をプチヴェールが抑制した。トリグリセリド (TG) およびコレステロール値を測定したところ, 血中および肝臓ではプチヴェールの明確な作用が確認されなかったものの, 糞中への排泄量をプチヴェールが有意に促進することが分かった。また, ウエスタン飼料による肝臓中の脂肪酸合成酵素 (FAS) の活性上昇をプチヴェールが抑制することも明らかになった。 プチヴェールは脂肪酸代謝や糞中への脂質排泄を制御することでマウスの肥満を抑制することが示唆された。