著者
沢村 一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理
巻号頁・発行日
vol.105, no.105, pp.13-14, 2005-05-24

論理学の計算機科学、中でもソフトウェア科学や人工知能の分野で果たしてきた役割はよく知られていることである.他方、議論学は、1970年代頃より、それまでの形式的・数学的論理学では無視あるいは避けられてきた、広義の(非形式的)論理学(虚偽論, 修辞学, を含めて)を研究する分野として、人文社会科学の主に哲学、言語学、社会学などの分野で開始されてきた.最近、真のあるいは実際的な論理学であるといってもよいこの「議論学」が、計算機科学においても注目されてきた.特に、この10年世界的に精力的に研究が推進されているエージェント指向コンピューティングの分野では、エージェント間の通信、相互作用に基づく情報処理の有効な手段あるいは基礎として、その注目度は高い.本講演では、(1)論理学と議論学を改めて比較検討し、(2)議論が計算機科学における今後の有望な通信・計算機構となることを論じ、(3)議論の形式的モデル、特に不確定情報下における多値議論の論理とその応用について述べ、(4)今後の展望や世界的な研究動向を紹介する.また、議論に関係する周辺の話題として、弁証法的議論、西洋対東洋的議論、議論に関するe-learningシステムなどについても触れる.
著者
沢村 一 高橋 武久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.548, pp.25-30, 2005-01-10
被引用文献数
1

我々は以前の論文[15]で多値議論の論理LMAを形式化した.これは知識表現言語として、拡張注釈付き論理型言語EALPを用い、不確実情報下におけるエージェント間議論を可能にするものであった.本論文では、このLMAを東洋論理を特徴づけるテトラレンマ(四句分別)に特殊化することを考える.そしてその表現能力や応用可能性を確認する.このために、LMAを、次のような東洋的、文化的な議論に適用する : 死刑制度の是非に関する多値議論、西洋と東洋の多元的な議論.これらを通して、西洋的あるいは東洋的議論の融合、表象をもたない議論の可能性について論じる.
著者
向井 孝徳 宮下 裕充 若木 利子 松永 久美子 福本 太郎 沢村 一 新田 克己
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.38, pp.1-6, 2006-05-11

これ迄,マルチ議論エージェントシステムにおいて,各エージェントの知識ベースは,対象問題に関する言明文(ルール)で表現され、オントロジー知識は用いられていない.一般にWeb上の電子商取引等の問題では,売り手と買い手の売買に関するそれぞれの固有の戦略的知識以外にオントロジー知識を用いた推論が必要と考えられる.本研究では、各議論エージェントがセマンティックWeb上のOWL DL言語,または,記述論理SHOIN(D)で表現された共有知識としてのオントロジーと,EALP(或は,ELP)の論理プログラムで表現された各自のルールベースの知識の両者を議論・推論で扱えることを目的として,オントロジーに関する単調な記述論理推論系と対話的証明論に基づくマルチ議論エージェントの非単調な推論との統合推論方式の提案,及び,それに基づく議論エージェントシステムとセマンティックWeb推論系の統合推論システムの試作と評価を行なった.
著者
沢村 一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.p665-673, 1989-06-15
被引用文献数
5
著者
沢村 一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.216-224, 1981-05-15

R.Montagueは自然言語(英語)に現れるさまざまな種類の内包的な語法を一つの形式的体系の中に取り入れるために一種の高階の様相論理である内包論理を展開した.この内包論理はまた言語としてのプログラミング言語に現れる内包性の問題をも解決することができる.これまで様相論理に含まれるが概念とプログラムについて議論するさいに起る概念との間には意味論的および統語論的な両方の観点から密接な対応が存在するという理由で様相論理がプログラムの論証に対して適用されてきたが この能力のゆえに内包論理の一般的枠組はプログラムの論理を考えるさいに様相論理よりもより十分な表現能力を提供している.本文ではプログラミング言語の内包性にのみ注目して最初に 内包性の問題を解くために必要な言語要素を付加された内包論理について述べ 次にこの論理を基礎として Hoare論理の関数的変形となっている内包的Hoare論理(IHL)を形式化する.内包的Hoare論理は単にHoare論理の表現力に富んだ別形としてだけではなく これまで提案されてきたいろいろな算法論理とさらにはプログラミング言語と自然言語の双方に対する統一的な論理体系の可能な一つの形体であると考えられる.
著者
梅田 勇一 沢村 一
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.1518-1527, 2002-05-15
被引用文献数
4

エージェント指向コンピューティングの世界では,それぞれのエージェントが各自の持つ情報を生かしながら協調・合意して問題解決にあたることが求められている.本論文では,議論の導入がこの問題に有効であるとの考えのもとで,次のような機能を持つエージェントシステムを提案し,実際にネットワーク上で現実の問題に適用して有効性を示す.(1)複数のエージェントが各自の知識ベースをもとに議論・反論を行う.(2)反論に行き詰まったら,相手の議論への補強を考えることによって協調を試みる.(3)この2つを行っても結果が定まらないとき,弁証法的な合意形成を行う.In the upcomming networked society, it is desired that several computers on network can resolve conflicting problems or make better solutions through argumentation. In this paper, we propose a novel approach to agent systems where several agents communicate, argue with each other, reinforce other arguments for cooperation and finally make a dialectical agreement through argumentation from distributed knowledge bases. By applying it to a variety of application, we show the potential and practical usefulness of the system.