著者
河西 理恵 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.303-308, 2009 (Released:2009-05-28)
参考文献数
13

[目的]現在,欧米を始めとする諸外国では,2:1ないしは3:1モデルの臨床実習(実習指導者1人に対し学生2名あるいは3名)が主流となっている。本総説の目的は,過去に欧米諸国で行われた2:1モデルの研究から,効果やメリットおよび問題点を検証することである。[方法]1990年以降に理学療法学科の学生を対象に行われた2:1ないしは3:1の臨床実習モデルに関する論文を検索した。検索にはMEDLINE,CINAHLを用いた。検索の結果,6論文(量的研究3編,質的研究3編)を抽出した。[結果]全ての論文が,2:1モデルの効果を示していた。メリットとして特に多く挙げられていたのが,協同学習とピアサポートであった。また,2:1モデルは従来の1:1モデルと比べても,メリットが多く,デメリットが少ないことが示唆された。一方,問題点として,学生の学力差や性格の違いといった指摘が多かった。[結語]今回の結果から2:1モデルの有効性はある程度示されたが,参加者や対象施設の少なさ,および論文数自体の少なさなどから,2:1モデルのエビデンスが十分に確立されたとは言い難い。今後の課題として,研究方法の改善や研究数自体を増やすとともに,近い将来,我が国独自の2:1モデルの研究が始まることを期待する。
著者
河西 理恵
出版者
日本徒手理学療法学会
雑誌
徒手理学療法 (ISSN:13469223)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.15-19, 2019 (Released:2019-04-22)
参考文献数
6

徒手理学療法教育のグロ-バルスタンダードであるIFOMPT(International Federation of Orthopaedic Manipulative Physical Therapists)の教育戦略の特長は,高い教育目標の設定と目標達成のための最適なカリキュラム,および学習成果の評価方法まで一貫した基準を設けたこと,そして,これらの基準を遵守しているかを確認 するための定期的なモニタリングの実施により,IFOMPT が承認した教育機関であれば世界中どこでも一定で高水準の教育を受けられるシステムを確立したことである。また,近年,エビデンス重視の臨床実践が定着したことで, 現在の専門徒手理学療法士(OMPT)には実技能力だけでなく,臨床実践におけるエビデンスの批判的評価能力や高度なクリニカルリーズニング能力,研究論文を批判的に解釈し臨床応用できる能力など,EBP の実践に不可欠な さまざまな能力が求められている。
著者
中西 智也 小倉 隆輔 河西 理恵
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】問題基盤型学習(Ploblem-based learnig:以下,PBL)の活用は,臨床推論能力の向上や自己主導型学習態度の育成に有効的であるとされている。本邦でも卒前教育での実践例は多く報告されているが,卒後教育における報告は少ない。そこで本調査は,臨床経験の浅い有資格者の卒後教育としてのPBLの有効性を検討し,効果的な卒後教育の在り方を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は経験年数2年目の理学療法士8名とした。方法は河西(2006)が養成過程において実施した内容を参考とし,ファシリテーター役をおき,紙上患者1例に対し2回の討論を行った。計4ヶ月で3症例の検討を行った。PBL終了1ヶ月後にPBL好感度,臨床・学習への影響,運営方法,仲間好感度に関する4項目13設問とPBL実施前・中・後の自主学習時間からなるアンケートを,集合調査法にて実施した。13設問は,設問ごとに100点満点の採点法と自由記載法を併用し,項目ごとの平均点および標準偏差を算出した。【結果と考察】対象となる8名のうち7名から有効回答を得た。PBLへの好感度は81.9±16.8点,仲間好感度は84.3±16.9点,臨床・学習への影響は80.3±14.3点,運営方法は75.2±17.0点であった。また,PBL実施前の学習時間は0.83±0.28時間,実施中は1.50±0.54時間,実施後は0.90±0.36時間となった。自由記載では,他者との討論を通じて自己省察が深まった,仲間意識が向上した,時間配分や手際が悪く疲労感が残った,などの意見が得られた。PBLにより臨床推論力や知識の向上,学習意欲や組織力へ好影響を及ばす可能性が示唆され,卒後研修として有効であると考えられる。一方,導入のためには時間的・身体的負担への配慮や,研修終了後の継続した自己学習時間を確保する工夫が必要になると考えられる。
著者
河西 理恵 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.203-208, 2010 (Released:2010-05-27)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

〔目的〕本研究の目的はPBLの効果と学生因子の関係について検証することである。〔対象と方法〕対象はK大学理学療法学科の3年生19名であった。PBLの効果指標を,学生自身による自己評価とPBLにおける発言頻度とし,約2ヶ月のPBL実施後,学業成績,性格,自己学習習慣の有無,自己学習時間,テスト志向性およびPBLに対する満足度などの学生因子とPBLの学習効果の関係をSpearmanの順位相関係数により検討した。〔結果〕PBLに対する学生の自己評価と学業成績,性格,自己学習習慣の有無,PBL実施中の自己学習時間およびPBLに対する満足度の間に有意な相関が認められた。また,発言頻度と自己評価ならびに学業成績,PBL実施中の自己学習時間,PBLに対する満足度の間にも有意な相関が認められた。〔結語〕PBLの効果には複数の学生因子が関与することが示唆された。