著者
河西 秀哉
出版者
神戸女学院大学
雑誌
論集 (ISSN:03891658)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.51-61, 2014-12

本稿は、高校の日本史の授業で、女性に関する歴史がどのように教えられているのかを検討するものである。2009年3月に改正された新しい学習指導要領に基づいて作成された日本史Bの教科書8冊を検討し、その中で女性の問題がどのように取り上げられているのかを明らかにした。本稿では特に、近現代史をその検討対象としている。男性に比べて、女性の人物は教科書で取り上げられることも少ない。また、取り上げられる女性も特定の人物に集中している。女性に関する記述は、曖昧な部分も少なくない。こうした現状に対して、女性史・ジェンダー史の研究成果を踏まえた教科書叙述の必要性を主張した。一方で、ただ女性に関する教科書の記述を多くすればよいものではない。多様な性の、多様なあり方を取り上げることで、今を生きることを生徒に考えさせる歴史叙述のあり方についても論じた。This paper considers how history relating to women is taught in Japanese high schools. Based on my examination of eight textbooks that were created along the newly revised (March 2009) curriculum guidelines, I show how women's issues are covered , In particular, this paper focuses on modern history. Fewer women than men are covered in the textbookds. Primarily, only a specific group of female figures is considered. Further, there are more than a few ambiguous parts in the passages relating to women.I argue that it is necessary to write textbooks that depict the research accomplishments of women in history. However, textbook passages on women should not simply be increased. I discuss history writing that, by covering the diverse forms of diverse sexualities take, makes students think about living in the present.
著者
河西 秀哉 Hideya KAWANISHI
雑誌
論集
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.75-91, 2013-06

本稿が明らかにするのは、初期のうたごえ運動の活動実態である。うたごえ運動は、1948年に関鑑子(せきあきこ)によって、中央合唱団が結成されたことにより始まった。1953年に「第1回日本のうたごえ祭典」が開催され、その後、全国に急速に広まっていく。中央合唱団は共産党系の青年組織である日本共産青年同盟の音楽部門として結成されたことからもわかるように、共産党の影響を大きく受けていた。しかしうたごえ運動は共産党の影響下にあったわけではなく、社会の動向に大きく影響を受け、歌を通して平和を追求する運動を行っていた。これまで、うたごえ運動の研究はほとんど行われてこなかったが、近年になって急速になされるようになってきた。しかし、一次史料がほとんど検討されていないこと、初期の動向がほとんどわからないことなどの問題が残っている。そこで本稿は、中央合唱団の機関誌『うたごえ』の分析を通じて、1940年代後半から1950年代初頭にかけてのうたごえ運動の実態の解明を行った。その結果、①みんなで歌うという行為に活動の重点を置いていたこと、②平和を追求するような思想を持ち、そのような歌を歌っていたこと、③ロシア音楽や日本民謡を特にレパートリーとしていたこと、などが明らかになった。
著者
河西 秀夫
出版者
日本情報地質学会
雑誌
情報地質 (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.57-68, 2005-06-25
被引用文献数
10

層序式は2つの地層の接触関係を(下位の地層単元)(関係単元)(上位の地層単元)の形で表現するものであるが, この式では1つの地層が複数の地層に接触する場合は表現できない.また, 層序グラフは露頭の構造を図で表現するものであるが, このままではデータベースに使用できない.このため, 行列を使用して数式で表現する必要がある.これらの問題を解決するために, 著者は層序式に新しい記号である(), {}, [), (]の導入と構造行列の導入を提案した.新しい記号()及び{}, [), (]は次のように定義される.(L_1##_1L_2##_2…##_<n-2>L_<n-1>)##_<n-1>L_n ⇔ L_1##_<n-1>L_n, L_2##_<n-1>L_n, …, L_<n-1>##_<n-1>L_n, L_1##_1L_2##_2…##_<n-2>L_<n-1> L_1##_1(L_2##_2L_3…L_<n-1>##_<n-1>L_m)⇔ L_1##_1L_2, L_1##_1L_3, …, L_1##_1L_n, L_2##_2L_3…L_<n-1>##_<n-1>L_n {(L_1##_1L_2##_2L_3…##_<n-3>L_<n-2>)##_<n-2>L_<n-1>} ##_<n-1>L_n ⇔{L_1##_1L_2##_2L_3…##_<n-3>L_<n-2>, L_1##_<n-2>L_<n-1>, L_2##_<n-2>L_<n-1>, …, L_<n-3>##_<n-2>L_<n-1>} ##_<n-1>L_n ⇔(L_1##_1L_2##_2L_3…##_<n-3>L_<n-2>)##_<n-1>L_n, (L_1##_<n-2>L_<n-1>)##_<n-1>L_n, (L_2##_<n-2>L_<n-1>)##_<n-1>L_n, …, (L_n##_<n-2>L_<n-1>)##_<n-1>L_n L_1##_1 [L_2##_2L_3…##_<n-2>L_<n-1>)##_<n-1>L_n ⇔L_1##_1L_2##_2L_3…##_<n-2>L_<n-1>, L_2##_<n-1>L_n, L_3##_<n-1>L_n, …, L_<m-1>##_<n-1>L_n ⇔L_1##_1L_2##_2L_3…##_<n-2>L_<n-1>##_<n-1>L_n, L_2##_<n-1>L_n, L_3##_<n-1>L_n, …, L_<n-2>##_<n-2>L_n L_1##_1(L_2##_2L_3…##_<n-2>L_<n-1>]##_<n-1>L_n ⇔L_2##_2L_3…##_<n-2>L_<n-1>##_<n-1>L_n, L_1##_1L_2, L_1##_1L_3, …, L_1##_3L_<n-1> ⇔L_1##_<11>L_2##_2L_3…##_<n-2>L_<n-1>##_<n-1>L_n, L_1##_1L_3, …, L_1##_1L_<n-1> L_1, …, L_pは地層であり, ##_iは関係単元である.層序式に()及び[), (]を使用すると, 1つの地層に複数の地層が接触する場合の層序を明確に記述できる.構造行列A=[a_<ij>]は層序グラフを式化したものである.下位の地層L_iと上位の地層L_jが直接接している場合a_<ij>の元はL_iとL_jの接触関係の記号であり, 他の場合は0である.露頭構造行列とA[a_<ij>]とB[b_<ij>]から, C[c_<ij>]=A[a_<ij>]※B[b_<ij>]の演算を行い地域構造行列C[a_<ij>]を組み立てることができる.著者はこのアルゴリズムを提案した.
著者
河西 秀夫
出版者
日本情報地質学会
雑誌
情報地質 (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.161-175, 2010 (Released:2010-10-13)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

Google Earthは衛星写真を使用した3次元地形表示ソフトであり,ユーザーによりデータの登録が可能なことから,簡易なGISソフトとして使用できる. データの登録はダイアログボックスを使用する方法とKMLを使用してドキュメントを記述する方法があるが,KMLにはダイアログボックスでは登録できない機能が多数存在する.ダイアログボックスで登録したデータはKMLドキュメントとして保存される.このKMLドキュメントを追加・修正していくと便利である.第2回では線と領域の表示,図面の貼付けについて,実例に即してダイアログボックスによる登録方法とその結果作成されるKMLドキュメントの読み方と修正方法を解説する.立体表示を行うと,断層などの登録データ地形との関係が直感的に理解できるという利点がある.また,図面を貼り付けると図面に高さ情報を付加することができるので,新たな情報を得ることが可能になる.
著者
河西 秀夫
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.84-92, 1994-08-10
参考文献数
12
被引用文献数
1

15〜25KHzの周波数(VLF帯)の電磁波を用いて地表の電磁場応答を測定する電磁波探査がVLF-MT(Very Low Frequency-Magneto Telluric)法である。 Magneto Telluricは地磁気地電流法と訳されている。VLF帯の電磁波として米軍の送信所から発信される対潜水艦用の通信電波が使用されている。VLF-MT法では水平磁場強度とそれに直交する水平電場強度が測定され、これらの値から次式で見かけ比抵抗と位相角が求まる^1)。ρ_2=0.2T(E/H)^2(1)φ=arg(E/H)(2)ρ_2:見かけ比抵抗値(Ωm)φ:位相角(^)T:周期(秒)E:電場強度(mV/km)H:磁場強度(nT)地中に入射した電磁波の強度が1/e(eは自然対数の底)に減衰する深度を表皮深度δというが、この表皮深度をほぼ探査深度と見なすことができる。比抵抗ρの均質大地の表皮深度は次の式で求まる^2)。δ=500√<p/f>(3)ρ:比抵抗値(Ωm)f:測定周波数(Hz)比抵抗値として見かけ比抵抗値を使用して計算するが、見かけ比抵抗値が500Ωmの場合は表皮深度は35m、1000Ωmの場合は120mである。このようにVLF-MT法は探査深度が浅いが、装置が小型で軽量なことや短時間で測定ができることから、露頭が少ない火山地域の浅都の地質構造を推定する手段として有効であると思われる。筆者は先に富士山北麓の地域(山梨県鳴沢村)のテフラ堆積地帯でVLF-MT法を用いて浅都の地質構造を推定し、その有効性を報告した^3)。この報告では地盤は2層構造であるという仮定下で測定データの数値解析を行なったが、既存のボーリング資料の対比から、400Ωm以下の比抵抗層を火山砂礫層、401〜800Ωmの比抵抗層を凝灰角礫層、1200Ωm以上の比抵抗層は溶岩流と凝灰角礫層の互層、2000〜5000Ωmの比抵抗層を溶岩流であると推定した。また、地質構造の解析に当って、あらかじめ踏査やボーリング資料等の既存資料を使用してできる限り地質構造を検討しておく必要があることを指摘した。今回、前回の方法の有効性をさらに確認するために、富士山北麓地域と両様に富士山の噴出物が厚く堆積している富士山北西麓地域(山梨県富士吉田市)でVLF-MT法を用いて浅都の地質構造の調査を行い、2層構造の仮定下で測定データの数値解析を行った。また、VLF-MT調査とともに地質踏査を行い、解析を行うために必要な地質構造の把握を行った。本文では解析結果を報告するとともに、幾つかの問題点を検討する。
著者
有賀 浩子 河西 秀 野池 輝匡 小池 秀夫 伊藤 敦子
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.88-91, 2002
被引用文献数
7

症例は73歳の男性.脳梗塞, 不整脈と肺癌手術の既往あり.2000年1月16日に突然腹痛と嘔吐が出現し急性腹症として内科緊急入院となり, 翌日腹膜刺激症状が出現したため外科紹介とされた.疼痛のため顔面は苦悶状, 腹部はやや膨隆していたが柔らかく下腹部中心に強い圧痛と自発痛があるが腹膜刺激症状は軽度であった.入院時に撮影した腹部CT検査で腸間膜血管内に樹枝状のガス像を認めたため, 門脈内にガス像はなかったが門脈ガス血症と同様の状態であると判断し, 既往歴および現症から腸間膜動脈閉塞症による腸管壊死と判断し, 緊急手術を施行した.開腹すると腹腔内に膿性腹水を中等量認め, 腸管はトライツ靭帯50cm肛門側空腸からバウヒン弁の10cm口側回腸まで壊死していたため, 壊死部切除とドレナージを施行した.術前推測しえた腸間膜動脈閉塞症により小腸壊死の1例を経験したので報告する.
著者
有賀 浩子 野池 輝匡 河西 秀 小池 秀夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.382-385, 2000-03-01
被引用文献数
14

症例は76歳の女性.突然に発症した腹痛と嘔吐を主訴として来院した.腹部は膨満し圧痛のみで腹膜刺激症状は認められなかったが, 腹部CT検査で腹水および肝臓両葉に門脈ガス像と小腸の拡張, 小腸壁内のガス像, 小腸腸間膜血管内と思われる部位にガス像を認めた.門脈ガス血症をきたした腸管壊死と判断し, 開腹術を施行したところ40cmの壊死腸管を認めたため切除し端々吻合とした.病理組織結果は虚血による腸管壊死で, 術後経過は良好であった.門脈ガス血症は比較的まれな疾患であり, 虚血性腸疾患に伴うことが最も多く本症例の発生機序は腸管潰瘍部から腸内細菌が門脈内へ移行した敗血症の一徴候と考えた.本邦報告例94例を検討すると, 予後不良の疾患とされていたが近年, 救命症例数は増加しており, 早期の診断と原因疾患の検索および治療が重要と思われる.