著者
中川 俊輔 岡本 康裕 児玉 祐一 西川 拓朗 田邊 貴幸 河野 嘉文
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.33-36, 2018 (Released:2018-06-19)
参考文献数
10

再発髄芽腫に対するtemozolomide(TMZ)の報告は本邦ではまだない.症例は6歳の男児で,小脳原発の高リスク髄芽腫(desmoplastic type,術後の脊髄MRIで播種病変あり)と診断された.脳腫瘍摘出術と放射線照射後に寛解を確認した.術後化学療法(ifosfamide, cisplatin, etoposide)と自家末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法(busulfan, melphalan)を行った.術後24か月後のMRIで右側脳室,右側頭葉,左小脳半球に腫瘤性病変を認め再発と診断した.欧米からの有効性があるという既報を参考に,TMZ(150 mg/m2/日×5,4週間毎)の内服で治療を開始した.腫瘍は残存しているが縮小傾向で,再発後28か月が経過し,TMZを30サイクル行った.副作用もほとんど認めず,良好なQOLを維持できている.TMZは髄芽腫の再発に対する化学療法として有用な可能性がある.
著者
根路銘 安仁 西 順一郎 藤山 りか 武井 修治 吉永 正夫 河野 嘉文
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.967-974, 2004
被引用文献数
7

風疹の局地的流行は現在も続いており, 先天性風疹症候群 (CRS) の報告も増加しているが, 播した院内感染を経験した. 2003年3月から4月に計15名の院内感染者を認め, 院内感染対策として全病院関係者259名に風疹抗体検査 (赤血球凝集阻止反応;HI法) を病院全額負担で説明を行い, 同意を得て検査した. 発症者と拒否者2名を除いた251名が検査を受け, 感受性者が67名みられた. 発症者を除いた53名に風疹ワクチンを病院半額補助で勧奨接種した. その後速やかに終息し, 職員から患者への伝播は無かった. 発症者15名のうち9名は, 感染前の調査では, 既往歴または予防接種歴があると答えており問診だけでは信頼性に乏しいと考えられた. 感受性者・発症者は高年女性, 男性に多く, 全年齢層に対策が必要と考えられた. 抗体検査, ワクチン費用補助で約20万円を要した. 発症者の欠勤日数は平均6日, 平均賃金は約12,000円で, 今回の院内感染で総額約140万円が病院の損失になった. 女性の多い職場である病院では妊娠に伴う問題があり, 予防接種の時期やCRSの危険性等, 風疹感染対策は重要であると考えられる. 風疹の病院職員における流行は, 発症者の賃金の損失だけでなく病院運営に支障をきたし収入面での損失の可能性もあり, 事前の風疹感染対策は経営上充分に投資効果があると考えられる.
著者
西川 拓朗 岡本 康裕 河野 嘉文 大堀 純一郎 福岩 達哉 西元 謙吾 黒野 祐一
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-4, 2009 (Released:2012-11-20)
参考文献数
7

症例は 5 歳 2 か月の男児。5 歳 1 か月頃から,誘因なく右頬部の圧痛と腫脹が出現した。近医での MRI 検査で右頬骨体部を破壊し右上顎洞および右眼窩内に浸潤する腫瘤性病変を認め,当院に紹介となった。Ga シンチでは同部位に異常集積を認めたが,他部位に異常集積は認めなかった。生検組織所見により CD1a, S–100蛋白陽性細胞の増殖を認め,ランゲルハンス細胞組織球症(LCH),Single-system, Single-site と診断した。腫瘤は眼窩内に進展していることから全身化学療法を行った。開始 1 週目で右頬部の圧痛・熱感・腫脹は消失し,治療終了後12か月後の現在も再燃なく寛解を維持している。LCH の限局性病変の治療については自然軽快する例も多く,一定のコンセンサスが得られていない。本例では,眼窩内に進展しているため,中枢神経浸潤や後遺症が残る可能性を懸念し化学療法を選択した。LCH は頭頸部に症状が出るものが多く,小児耳鼻咽喉科疾患として注意を要する。