著者
河野 辰幸 神津 照雄 大原 秀一 草野 元康
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.951-961, 2005-04-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
31
被引用文献数
7

Barrett粘膜の頻度を得る日的で,初回内視鏡検査施行例2,595例を対象に疫学調査を施行した.その結果Barrett粘膜は2,577例中536例(20.8%)に認められた.Barrett粘膜の長さは女性よりも男性で有意に長く,Barrett粘膜の頻度と年齢層との問には相関関係を認めなかった.Barrett粘膜の有無と胸やけの有無,Barrett粘膜の長さと逆流性食道炎の重症度,食道裂孔ヘルニア重症度との間に相関を認め,萎縮性胃炎がBarrett粘膜の長さに影響を及ぼしていた.逆流性食道炎がBarrett粘膜の発生に重要な役割を担っているものと推察されたが,欧米と比較して,典型的Barrett食道の頻度は著しく低かった.今後統一したBarrett粘膜の定義や診断基準によるevidenceの集積がさらに必要と思われた.
著者
川田 研郎 河野 辰幸 中島 康晃
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.70-80, 2017 (Released:2017-01-20)
参考文献数
54

近年,欧米においてはバレット食道が急速に増加しており,本邦においても今後増加することが懸念されている.バレット食道を診断するためには,十分に食道胃接合部を伸展させ,下部食道柵状血管の下端もしくは胃の襞の上縁を確認し,胃から連続する円柱上皮を確認する.SSBEの表在癌は右前壁に多いとされ,まず通常内視鏡で発赤・凹凸不整の所見を見落とさないことが重要である.深達度診断には白色光観察に加え,画像強調内視鏡,拡大内視鏡,超音波内視鏡,食道造影が用いられる.凹凸のほとんどない0-Ⅱbや0-Ⅱa,基部にくびれを有する0-Ⅰ型,浅い陥凹を有する0-Ⅱc型は粘膜癌を示唆する.酢酸併用画像強調+拡大内視鏡は癌の側方伸展の診断に有用である.バレット食道癌の深達度診断は治療方針をたてるのに重要である.一部のT1a-DMM癌と粘膜下層癌には転移が見られるため,内視鏡治療の適応拡大は慎重に行う必要がある.
著者
河野 辰幸
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.102, no.2, pp.170-175, 2005 (Released:2005-06-06)
参考文献数
46

バレット腺癌においても,外科治療の意義は確実な局所コントロールとリンパ節を系統的に郭清できることによる根治性の追求にあり,食道扁平上皮癌での治療経験が参考となる.その侵襲の大きさと術後生ずるかもしれないQOLの低下が問題である.内視鏡治療は転移に対しては無力であるが,表在性病変に対する内視鏡切除術の局所制御能は外科切除術に匹敵し,原発巣の詳細な組織学的評価が可能であるなど,粘膜内に止まる可能性のある限局性病変に対しては常に第一段階治療法の役割を担う.逆流防止手術や内視鏡的アブレーションなど,バレット上皮の消褪や腺癌への進展予防における役割についてはなお一定の見解が得られていない.
著者
出江 洋介 吉野 邦英 河野 辰幸 永井 鑑 長浜 雄志 三宅 智 中村 正徳 奈良 智之 遠藤 光夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.8, pp.1979-1983, 1994-08-01
被引用文献数
2

症例は21歳の男性.平成4年8月より嚥下困難,吐血が出現し,平成5年1月8日呼吸困難のため緊急入院.内視鏡では食道入口部直下から白苔に覆われた易出血性の隆起性病変を認めたが生検では壊死組織および真菌であった.胸部CTでは縦隔内に内部の不均一な腫瘤影を認めた.Open biopsyにより,食道の筋原性腫瘍が疑われたため1月26日,右開胸開腹食道亜全摘経後縦隔胃管再建術を施行した.Ao,N(-),Mo,Ploであった.切除標本では,13.0×7.5×3.2cmの有茎性腫瘍で,組織学的に平滑筋肉腫と診断した.術後3か月で右頸部,上縦隔,右肺,右胸膜に再発し化学療法と放射線療法を行った.一部に効果も認められたが急速に増大し術後6か月目に呼吸不全により死亡した.本例は本邦における食道平滑筋肉腫報告例では最年少であり診断と治療を中心に考察を加えた.