著者
河野 龍也
出版者
実践女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01 (Released:2010-08-23)

佐藤春夫は近年、「アジア文学」研究の立場から注目を集めているが、基礎研究の不足から全体像のつかみにくい作家となっている。国際研究の場における情報共有のために、一次資料を整理することが急務である。そこで本研究では、未調査のままであった春夫の書簡やノートの翻刻を行うとともに、春夫のアジア紀行に関する詳註を作成することで、彼のアジア理解と、文学者としてのアイデンティティ形成の淵源について考察した。
著者
河野 龍也
巻号頁・発行日
2014-04-01 (Released:2014-04-04)

2015年は、本研究における成果を対外的に示す機会に恵まれ、学界のみならず一般社会からも広い関心を集めることができた。特筆すべき実績としては、新発見資料2件の公開と、基本研究書の出版の2つが挙げられる。まず、新資料として、佐藤春夫の少年時代の日記を発見。4月7日に新宮市立佐藤春夫記念館を通じてメディア公開した。また9月7日には、1935年~1936年に書かれた春夫宛の太宰治書簡3点の発見を伝えた。いずれも、NHKニュースのほか新聞各紙で大きく報道された。前者の解説として、「佐藤春夫11、12歳の日記」(『読売新聞』4月21日朝刊)、「父との駆け引きに魅力」(『毎日新聞』夕刊5月14日)の2点、後者の解説として「80年間の誤解を解く太宰治の“長い”手紙」(共同通信1月~2月配信:地方各誌掲載)1点を依頼に応じて寄稿した。とりわけ話題性が大きかった後者では、私信の公開ということに配慮し、佐藤・太宰双方の遺族と緊密に連絡を取った。また公開後も、興味本位や誤解を含む反応を避けるため、正確な報道の要請と、研究上の意義の十分な伝達に細心の注意を払った。次に、計画中の『佐藤春夫読本』に新資料の図版を加え、記事を大幅に増補、地方の春夫関連資料も添えて400頁の内容とし、10月に勉誠出版より刊行した。前半約200頁の解説および取材記事を執筆。後半を寄稿論集とし、使用写真やレイアウトの提案を含めて全体の編集作業を綿密に行った。文壇に広範な影響力を持った佐藤春夫の初めての専門解説書として、研究に対する本書の寄与は大きい。上記のほか、2015年度は、湖南師範大学、輔仁大学に招かれ、2件の発表を行った。いずれも中国・台湾の研究者と同席するアジア文学・文化研究の場であり、国際的に関心を呼ぶ佐藤春夫の業績につき、批評性の再評価と、問題提起を行えたことは、極めて有意義であった。