著者
木下 恵美 浦辺 幸夫 前田 慶明 藤井 絵里 笹代 純平 岩田 昌 河原 大陸 沼野 崇平
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.227-231, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
15
被引用文献数
2

〔目的〕本研究の目的は,片脚着地動作時の前・後足部運動と膝関節外反運動の関係を明らかにすることである.〔対象〕対象は健常成人女性13名とした.〔方法〕課題動作は高さ30 cm台からの非利き脚での片脚着地動作とし,台より30cm前方に着地させ,片脚立位を保持させた.課題動作中の膝関節外反角度,前足部回内角度,後足部外反角度,アーチ高を算出し,膝関節外反角度と各足部角度,アーチ高との相関関係を調べた.〔結果〕片脚着地動作時の前足部回内運動と膝関節外反運動に有意な相関関係は認められなかった.一方,後足部外反運動と膝関節外反運動には有意な正の相関が認められた.〔結語〕片脚着地動作での膝関節外反運動を予防するためには,後足部外反運動を少なくすることが重要であることが示唆された.
著者
前田 慶明 浦辺 幸夫 藤井 絵里 森山 信彰 岩田 昌 堤 省吾 沼野 崇平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】近年,全身振動刺激(Whole Body Vibration:WBV)の効果は下肢筋力の増強のみならず,成長ホルモンの上昇や骨代謝および骨密度の増加が報告されている。しかしながら,WBVを併用したトレーニングが体幹筋力や動的バランスに与える効果を示した報告は渉猟し得た限りでは見当たらない。本研究の目的は健常男性を対象に,WBVを併用したトレーニング(WBV群)を8週間実施し,WBVを使用しない群(非WBV群)に比べて体幹筋力や動的バランスに相違があるかを明らかにすることである。仮説は非WBV群に比べて,WBV群の方が体幹筋力や動的バランスが向上するとした。【方法】対象は健常男性20名(年齢26.5±4.7歳,身長170.0±5.3 cm,体重63.9±7.1 kg)とし,無作為にWBV群(10名)と非WBV群(10群)に群分けした。なお,研究デザインは無作為化比較試験とし,3回/週で8週間の介入を各群で実施した。トレーニングのプロトコールは1セット6項目で構成された体幹筋トレーニングを以下の順序で実施した。種目は左右サイドブリッジ,プランク,シットアップ,左右ツイストを各30秒間ずつ実施し,各項目間には30秒間の休憩を挟んだ。介入前後でのトレーニング効果を判定する指標は,体幹屈曲・伸展の最大等尺性筋力,スクワットジャンプとカウンタームーブメントジャンプの跳躍高,動的バランス指標の一つである下肢最大リーチ距離を測定するY Balance Test(前方,後外方,後内方),機能的な動きを評価するためのスクリーニングテストであるFunctional Movement Screen(FMS)を測定した。統計解析には二元配置分散分析を行い,その後に多重比較にはBonferroni法を用いた。統計学的解析は統計ソフトウェアSPSS Ver. 21.0 for Windows(IBM社)を使用した。有意水準は5%未満とした。【結果】WBV群の平均体幹屈曲筋力は8週間後に34%増加し,有意な交互作用を示した(F=6.79,p<0.01)。Y Balance Testの前方リーチ距離は17%増加し,介入効果を示す有意な相互作用を示した(F=11.00,p<0.01)。その他の項目では有意な差を認めなかった。【結論】本研究はWBVを併用した群と併用しない群でトレーニングを8週間実施し,体幹筋力や動的バランスに効果に相違があるかを検討した。その結果,WBV群が非WBVに比べて有意に体幹筋力や動的バランスが向上した。全身振動が不随意的かつ持続的に筋収縮を促し,それを継続的に実施した結果,体幹筋力や動的バランスをより効果的に向上させたと考える。この結果は理学療法やスポーツ現場で行うトレーニング方法として有用な情報であり,理学療法研究として意義があると考える。本研究では介入後フォローアップを実施しておらず,今後は長期的な介入効果を検証する必要がある。
著者
小笠原 沙映 浦辺 幸夫 前田 慶明 沼野 崇平 藤下 裕文 福井 一輝
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>足関節内反捻挫は発生頻度の高いスポーツ外傷であり,予防のためにテーピングが行われている。テーピングは,テープの走行や本数を変化させることで,関節の制動効果を高めている。テープの走行の違いにより,関節運動への影響が変化するが,1本のテープが関節運動にどのように制限を与えているかは明らかではない。本研究の目的は,後足部の内反制限のため,走行が異なる3種類のテープを施行し,サイドステップ動作時に,テープがどのように関節運動を制限しているのかを明らかにすることとした。</p><p></p><p>仮説は,距骨下関節軸に直交するテープの走行が後足部の内反制限に最も効果的であるとした。</p><p></p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は,足関節捻挫の既往のない健常な女性8名(年齢21.4±0.5歳,身長157.3±5.6 cm,体重49.4±5.5 kg)とした。テープは日東メディカル社のEB-50を使用した。テープは対象の利き脚(ボールを蹴る脚)に,内果から足底を横切り,下腿遠位1/3まで貼付した。テープの張力を一定にするため,テープを徒手筋力計(アニマ社)のプローブに当てた状態で張力を加え,40 Nになった時点で貼付した。課題動作は,利き脚側の側方1 mへのサイドステップとした。課題動作の分析には,赤外線カメラ16台からなる三次元動作解析装置(Vicon Motion Systems社)を使用し,サンプリング周波数100Hzで記録した。赤外線反射マーカーをOxford foot modelに基づき下肢30箇所に貼付した。測定条件は,①テープなし,②足底面に垂直で,テープの後縁が外果の最突出部を通る走行のテープ,③足底面に垂直で,テープの前縁が外果の最突出部を通る走行のテープ,④足底面に対して後方に傾き,テープの後縁が外果の最突出部を通る(距骨下関節軸に直交する)走行のテープの4条件で行った。動作解析ソフトVicon Nexus1.8.5(Vicon Motion Systems社)を用いて,着地時の後足部内反角度とその後の最大内反角度を算出した。4条件間の比較には,Wilcoxon符号付順位和検定を用い,危険率5%未満を有意とした。</p><p></p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>足部接地時の後足部内反角度(平均±SD)は,①16.0±5.2°,②14.0±7.7°,③14.4±7.8°,④13.1±10.0°となり,④は①と比較して有意に低値となった(p<0.05)。最大後足部内反角度は,①19.5±5.7°,②18.8±8.9°,③17.1±8.2°,④16.0±9.2°となり,各条件間で有意差はなかったが,④が最も低値となった。</p><p></p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>サイドステップ時の後足部内反角度は,④が最も低値を示したことから,距骨下関節軸に直交した走行が後足部の内反制限に与える影響が大きく,仮説を支持する結果となった。さらに,②のように外果の前方を通るテープ,③のように外果の後方を通るテープでも,足底面に対して垂直に走行するため,一定の効果を示すことが分かった。今後は,1本ずつのテープの役割を考えて,さらに検討をすすめたい。</p>
著者
川井 智貴 浦辺 幸夫 前田 慶明 堤 省吾 沼野 崇平 小宮 諒 鈴木 雄太 藤下 裕文
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1274, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】近年,ダーツは生涯スポーツやレクリエーションとして注目されており,介護施設などでも取り入れられている。さらにダーツは身体機能回復の効果があるともいわれているが,どのような身体機能に対して効果があるかを示した報告は少ない。ダーツでは狙い通りにダーツを投げるために姿勢の安定性が重要なことから,高齢者でも楽しく実施でき,かつバランス能力改善を目的としたエクササイズとして使用できる可能性がある。本研究では,ダーツを継続することがダーツ投擲時の重心動揺にどのような影響を及ぼすかを若年者で検討し,今後高齢者がダーツを行うことの有用性について示唆を得ることを目的とした。【方法】対象は健常男性12名とし,ダーツ経験のない未経験群6名(年齢22.1±1.5歳,身長171.0±3.9cm,体重64.2±7.3 kg),2年以上の経験がある経験群6名(年齢29.8±5.3歳,身長165.2±7.4 cm,体重65.5±13.4 kg,経験年数3.4±1.1年)とした。対象は,裸足で重心動揺計(竹井機器工業)上のスローラインに立ち,前方237cm,上方173cmに設置したダーツボードの中心(直径4cm)を狙って,ダーツ投擲を20投刺さるまで行った。対象の利き手の肩峰,上腕骨外側上顆,尺骨茎状突起に直径20 mmのマーカーを貼付し,デジタルカメラ(Power Shot A2600,Canon)1台を25Hzに設定し,3m側方から撮影した。Image J ver. 1.48(NIH)で算出したマーカーの座標データをもとに,解析区間を肘関節屈曲開始時(投擲前のテイクバック開始時)から最大伸展時(投擲後のフォロースルー終了後)と定義した。分析項目は,ダーツボードの中心から刺さったダーツまでの距離(cm),解析区間内の単位軌跡長,前後方向単位軌跡長,左右方向単位軌跡長とした。統計学的解析は,各算出項目の群間比較に対応のないt検定を用い,危険率5%未満を有意とした。【結果】ダーツボードの中心から,刺さったダーツまでの距離は経験群が3.7±1.0 cm,未経験群が8.2±0.9 cmであり,経験群はより中心に近い位置に投げることができた(p<0.05)。ダーツ投擲時の単位軌跡長は経験群が26.6±5.9 mm/s,未経験群が38.0±10.6 mm/sとなり,前後方向単位軌跡長では経験群が20.5±5.4 mm/s,未経験群が30.6±8.6 mm/sであり,いずれも経験群が有意に小さかった(p<0.05)。左右方向単位軌跡長では経験群が14.6±5.5 mm/s,未経験群が17.4±4.5 mm/sであり,有意差はなかった。【結論】本研究から,経験群は未経験群よりダーツの成績がよく,ダーツの成績向上には前後方向のバランス制御が重要であることが示された。先行研究では,同一動作の反復により姿勢の安定性が向上するとされている(大畑ら,2003)。ダーツでは,上肢の投擲動作とバランス制御が要求される。ダーツ経験者は投擲動作時のバランス制御能力が高いことから,今後はダーツが高齢者のバランス能力改善目的のエクササイズとして有用かどうか確かめていく。
著者
小林 怜司 浦辺 幸夫 沼野 崇平 小宮 諒 福井 一輝 前田 慶明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.747-750, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
11

〔目的〕母趾球荷重が,選択移動時間に及ぼす影響を明らかにすることである.〔対象と方法〕対象は,健常男子大学生12名とした.選択移動時間は,ランプ発光後できるだけ素早く中央マットから左右マットにサイドステップで移動し,中央マットから両足が離地するまでの時間として測定した.直立姿勢,母趾球荷重を意識していない構え姿勢,母趾球荷重を行った構え姿勢の3条件で選択移動時間を測定し,同時に右脚の内側広筋,腓腹筋,長腓骨筋の筋活動開始時間を測定した.〔結果〕母趾球荷重を行った構え姿勢で,内側広筋と長腓骨筋の筋活動開始時間ならびに選択移動時間が短縮した.〔結語〕母趾球荷重を行った構え姿勢で,選択移動時間が短縮することが明らかになった.
著者
利根川 直樹 浦辺 幸夫 前田 慶明 沼野 崇平 辰巳 廣太郎 橋本 留緒
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>バドミントン競技では,前後左右への機敏なフットワークが要求され,スマッシュなどストローク時に上肢の爆発的な力が必要となる。外傷は捻挫や肉離れなど下肢に多く,障がいは肩・肘関節など上肢に多いといわれているが(村尾,2012),その受傷機転を調査したものは少ない。さらに,競技中は風の影響を避けるため,真夏でも窓を閉め切る必要があり,苛酷な暑熱環境下でのプレーとなる。そのため熱中症発生の危険性が高いが(倉掛,2003),バドミントンの熱中症の発生状況に関する研究は少ない。</p><p></p><p>本研究の目的は,大学生バドミントン選手の傷害とその受傷機転,そして熱中症発生の実態を把握し,今後の予防対策の一助とすることとした。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>中国・四国地方のバドミントン部に所属する大学生577名にインターネットによるアンケートを実施し,有効回答の得られた218名(男子111名,女子107名)を対象とした。アンケート回収率は37.8%であった。</p><p></p><p>調査項目は身長,体重,競技経験年数,練習時間,外傷の有無と部位,外傷名,障がいの有無と部位,障がい名,受傷位置と動作,熱中症の有無・自覚症状・時期とした。熱中症の重症度は,自覚症状の回答から先行研究の判別方法を参考に,I度(軽度),II度(中等度),III度(重度)に分類した(坂手ら,2013)。</p><p></p><p>統計学的解析には,各項目について外傷経験のあり群,なし群の群間比較と,障がい経験のあり群,なし群の群間比較にMann-WhitneyのU検定,χ<sup>2</sup>検定を用いた。いずれも危険率5%未満を有意とした。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>選手218名中のべ75名(男子35名,女子40名)に外傷経験があり,のべ75名(男子44名,女子31名)に障がい経験があった。外傷部位は足関節が51件と最も多く,外傷名は捻挫が43件と最多であった。障がい部位は下腿前面が24件と最も多く,障がい名はシンスプリントが19件と最多であった。コート内の受傷機転は,非利き手側後方での外傷の割合が25.2%と最も高かった。外傷経験あり群は練習時間が有意に長く(p<0.01),外傷経験あり群および障がい経験あり群は,競技経験年数が有意に長かった(p<0.01)。</p><p></p><p>過去1年間の熱中症発生件数は52件であり,7月が最多で20件であった。熱中症経験者のうちI度は10.3%,II度86.2%,III度3.5%であった。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>本研究から,大学生バドミントン選手では外傷,障がいともに下肢に多い傾向がみられた。受傷機転では,非利き手側後方での受傷割合が高いことが明らかとなった。非利き手側後方ではオーバーヘッドストローク後に片脚着地となることが多く,傷害リスクの高い動作である可能性が示唆された。</p><p></p><p>大学生のスポーツ活動時の熱中症の調査と比較すると(坂手ら,2013),本研究ではIII度の割合が低値を示したものの,II度の該当率が高く,重症化させないように注意喚起を行う必要がある。</p><p></p><p>本研究によって,大学生バドミントン選手のある程度詳細な調査結果を得られた意義は大きい。</p>
著者
藤下 裕文 浦辺 幸夫 沼野 崇平 堤 省吾 森田 美穂 竹内 拓哉 前田 慶明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1261, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】アンプティサッカーは主に切断者が行うスポーツであり,ロフストランドクラッチ(以下,クラッチ)を使用して走行する。筆者らは第51回の本学会でクラッチを用いた片脚走行は,骨盤前傾角度と走行速度に相関があることを報告した。しかし,足部とクラッチの位置関係,クラッチの支持時間等が走行速度に与える影響については不明であった。一般的な走行では,ストライドの延長と足部の接地時間の短縮が走行速度を増加させる一要因とされており,クラッチを用いた片脚走行でも足部とクラッチ接地の距離が走行速度に影響している可能性が考えられた。本研究では,クラッチの接地方法が走行速度に与える影響を明らかにすることを目的とした。仮説は,足部とクラッチ接地位置の距離が伸び,クラッチの支持時間が短縮されることで走行速度が速くなるとした。【方法】対象は下肢切断のない健常男子大学生で,アンプティサッカー経験群6名(年齢20.5±1.3歳,身長173.7±4.9cm,体重64.5±0.8kg,経験歴:3か月以上),未経験群6名(年齢21.0±0.6歳,身長171.5±5.4cm,体重60.7±7.0kg)の計12名とした。測定には三次元動作解析装置と床反力計を用いた。反射マーカーをPlug-in Gait modelで全身に35か所,クラッチの先端部に1か所貼付した。課題動作は,下肢切断者を想定し,非利き脚を弾性包帯で膝関節最大屈曲位にて固定した。分析項目は走行速度,クラッチ接地時のクラッチ先端部とToeのマーカーの距離,足部接地時のクラッチ先端部とHeelのマーカーの距離,クラッチ支持時間とした。距離は身長で除し,クラッチに貼付したマーカーの鉛直座標の変化量が1mm以下になった瞬間を接地,それ以上変化した瞬間を離地とした。統計学的解析には,各項目の2群間の比較に対応のないt検定,走行速度との関係を示すためにピアソンの相関係数を用い,いずれも危険率5%未満を有意とした。【結果】走行速度(m/s)は経験群で3.3±0.2,未経験群で2.9±0.3となり経験群が有意に速かった(p<0.05)。クラッチ先端とToe,Heelのそれぞれの距離は2群間で差がなく,クラッチ接地の位置に差はなかった。クラッチ支持時間(ms)は,経験群で227.8±36.3,未経験群で324.4±40.4となり有意に経験群が短かった(p<0.05)。クラッチ支持時間は走行速度と強い負の相関(r=-0.87,p<0.05)を認めた。【結論】アンプティサッカーでのクラッチを用いた片脚走行は,クラッチを接地させる位置による走行速度の違いはなく,走行速度が速いほどクラッチ支持時間が短いことが分かった。より速く走行し,競技力を高めるための指導として,クラッチ支持の時間を短くするように指導することが有効である可能性を示した。
著者
小笠原 沙映 浦辺 幸夫 前田 慶明 沼野 崇平 藤下 裕文 福井 一輝
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1250, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】足関節内反捻挫は発生頻度の高いスポーツ外傷であり,予防のためにテーピングが行われている。テーピングは,テープの走行や本数を変化させることで,関節の制動効果を高めている。テープの走行の違いにより,関節運動への影響が変化するが,1本のテープが関節運動にどのように制限を与えているかは明らかではない。本研究の目的は,後足部の内反制限のため,走行が異なる3種類のテープを施行し,サイドステップ動作時に,テープがどのように関節運動を制限しているのかを明らかにすることとした。仮説は,距骨下関節軸に直交するテープの走行が後足部の内反制限に最も効果的であるとした。【方法】対象は,足関節捻挫の既往のない健常な女性8名(年齢21.4±0.5歳,身長157.3±5.6 cm,体重49.4±5.5 kg)とした。テープは日東メディカル社のEB-50を使用した。テープは対象の利き脚(ボールを蹴る脚)に,内果から足底を横切り,下腿遠位1/3まで貼付した。テープの張力を一定にするため,テープを徒手筋力計(アニマ社)のプローブに当てた状態で張力を加え,40 Nになった時点で貼付した。課題動作は,利き脚側の側方1 mへのサイドステップとした。課題動作の分析には,赤外線カメラ16台からなる三次元動作解析装置(Vicon Motion Systems社)を使用し,サンプリング周波数100Hzで記録した。赤外線反射マーカーをOxford foot modelに基づき下肢30箇所に貼付した。測定条件は,①テープなし,②足底面に垂直で,テープの後縁が外果の最突出部を通る走行のテープ,③足底面に垂直で,テープの前縁が外果の最突出部を通る走行のテープ,④足底面に対して後方に傾き,テープの後縁が外果の最突出部を通る(距骨下関節軸に直交する)走行のテープの4条件で行った。動作解析ソフトVicon Nexus1.8.5(Vicon Motion Systems社)を用いて,着地時の後足部内反角度とその後の最大内反角度を算出した。4条件間の比較には,Wilcoxon符号付順位和検定を用い,危険率5%未満を有意とした。【結果】足部接地時の後足部内反角度(平均±SD)は,①16.0±5.2°,②14.0±7.7°,③14.4±7.8°,④13.1±10.0°となり,④は①と比較して有意に低値となった(p<0.05)。最大後足部内反角度は,①19.5±5.7°,②18.8±8.9°,③17.1±8.2°,④16.0±9.2°となり,各条件間で有意差はなかったが,④が最も低値となった。【結論】サイドステップ時の後足部内反角度は,④が最も低値を示したことから,距骨下関節軸に直交した走行が後足部の内反制限に与える影響が大きく,仮説を支持する結果となった。さらに,②のように外果の前方を通るテープ,③のように外果の後方を通るテープでも,足底面に対して垂直に走行するため,一定の効果を示すことが分かった。今後は,1本ずつのテープの役割を考えて,さらに検討をすすめたい。