著者
和泉 賢一 上村 太朗 松居 由夏 近藤 しおり 岡田 貴典
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.843-848, 2009-10-30 (Released:2010-03-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

症例は50歳,男性.腎機能低下を伴った2型糖尿病で,ナテグリニドにて治療中であった.感冒様症状のため入院前数日間食事摂取が困難となり,気分不良・意識障害で近医を受診した.意識障害の原因として低血糖を認め当院に紹介となる.ナテグリニドは吸収と消失が速く,通常,低血糖は起こりにくい薬剤である.しかし,本症例では,脱水による急性腎不全にて血清Cr 8.78 mg/dlと腎機能が悪化していた.また,ナテグリニドの血中濃度は上昇していたが,代謝産物M1とM7の血中濃度はナテグリニドより低い状態であった.すなわち,本症例は,腎機能低下に起因するナテグリニドとインスリンのクリアランス低下により低血糖を起こしたと考えられた.さらに,甲状腺機能低下状態が認められ,これが低血糖を悪化させた可能性が考えられた.ナテグリニド単独にて重篤な遷延する低血糖を起こした症例は珍しく,報告する.
著者
和泉 賢一 村上 一雄
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.79-84, 2009 (Released:2009-02-25)
参考文献数
15

症例は72歳男性.2型糖尿病と胃癌の診断にて治療中.胃癌は末期の状態であったが,化学療法を受けながら外来で治療されていた.糖尿病は,インスリンにて治療していたが,食事量が低下しており,次第に全身状態が悪化し意識レベルも低下してきたため(JCS I-3),平成18年11月入院となった.入院時血液検査にて,白血球11,070 /μlでありHb 10.2 g/dlと貧血を認めた.BUN 64.1 mg/dl,Cr 2.23 mg/dlと腎不全も認めていた.Na 142 mEq/l,K 4.5 mEq/l,Cl 94 mEq/l,血糖830 mg/dl,血清浸透圧は計算値353 mOsm/l,実測値で360 mOsm/lであった.血液ガスでは,4 L/分の酸素投与下にてpH 7.368,pCO2 58.6 mmHg,pO2 70.5 mmHg,HCO3 33.0 mmol/lであり,炭酸ガスが蓄積していた.anion gapは15 mEq/l,CRP 16.78 mg/dlであった.入院時の血清ケトン体は総ケトン体5,490 μmol/l(正常参考値<131 μmol/l),3ヒドロキシ酪酸3,420 μmol/l(正常参考値<85 μmol/l)と高ケトン血症であった.以上より,高ケトン血症を伴う高浸透圧高血糖症候群と判断した.生理食塩水とインスリン投与,電解質の補正などによる治療により,血糖と浸透圧は低下し意識状態も改善した. 高浸透圧高血糖症候群は総ケトン体0.5∼2 mM程度のケトーシスを伴うことがあるとされている1)が,老年期の5 mMを超える高ケトン血症を伴う本症例のような報告は殆どない.報告は少ないが,実際にはケトアシドーシスと高浸透圧高血糖症候群を合併する症例が認められることも多い.また,高齢者糖尿病では自覚症状が乏しいため,高度の代謝状態での悪化でも見過ごされ易い.そして,水·電解質の失調を来し比較的容易に高浸透圧高血糖症候群やケトーシスなどに至る例がある2). そのため,高齢化が進む現在,老年者の病態の多様性が非常に重要であり,このような症例を注意深く検討することが必要と考える.
著者
和泉 賢一 藤瀬 剛弘 井上 佳奈子 森 仁恵 山崎 孝太 本郷 優衣 高木 聡子 山内 寛子 蘆田 健二 安西 慶三
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.542-545, 2013 (Released:2013-09-19)
参考文献数
16
被引用文献数
3 6

症例は73歳男性.主訴は貧血.家族歴,生活歴ともに特記事項なし.既往歴に2型糖尿病,橋本病を認めた.血液検査所見にてMCV高値の大球性貧血を認めた(赤血球数279万/μL,ヘモグロビン12.2 g/dL,MCV 121.9 fL).葉酸は基準値内であったが,ビタミンB12を測定したところ,57 pg/mL(基準値:180~914)と低値を認めた.消化管内視鏡であきらかな貧血の原因と思われる所見を認めず,また,抗内因子抗体は陽性であった.治療について,本人と相談したところ,注射は絶対に拒否するとのことであった.同時期に糖尿病の神経障害の治療のため,メコバラミンを内服処方したところ,著明にHb,MCVに改善を認めた.経口によるビタミンB12投与により,悪性貧血が改善したと考えた. 高齢者に貧血は多く,その中でも,悪性貧血は高齢になるにつれ頻度の高くなる疾患であり,注意が必要である.悪性貧血は,ビタミンB12製剤の注射治療が主に行われており,内服治療は一般的ではない.しかし,最近,ビタミンB12大量内服で効果を認めた症例が報告されるようになった.本症例も,ビタミンB12経口内服後に貧血の改善を認めており,効果があると考えられた.身体機能が低下する傾向にある高齢者にとって,安全・安価に加え,侵襲度の低い治療選択肢が増えることは望ましい事と思われる.内服投与も,今後の高齢者悪性貧血の治療の選択肢として考慮して良いのではないかと考え,本症例を報告する.
著者
遠藤 大二 及川 伸 泉 賢一
出版者
酪農学園大学
雑誌
酪農学園大学紀要 自然科学編 (ISSN:0388001X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.41-49, 2006-10

一般的に、牛群や個体の管理は牛群検定(乳検)データの統計的解析に基づいて実施されている。季節変動、乳量の個体変動、乳脂肪分、体細胞数などの乳検データをグラフ化するためのアプリケーションソフトが開発された。ソフトはインタラクティブに二次元の散布図を構成する乳検データを選択できるようにデザインされた。データベースアプリケーション(マイクロソフトアクセス)の使用により、参照データ等による修正や乳検とは独立に採取されたデータとも連携した分析が可能になった。分析事例として、2005年12月15日の検査においては、1産目の牛群に比べて2産目以降の牛群で体細胞数の変動が高かったことが示された。このアプリケーションソフトは大学内の乳生産および疾病研究者に、1)乳検データを分析する際の効率を高め、2)研究者独自のデータと生産性の関係分析をより効果的に行うことを可能にし、3)学内の研究協力を推進するという点で、利益をもたらすことが期待される。本論文では、アプリケーションソフトの構築と利用画面について述べる。