著者
浅井 康文 佐藤 昌太 坂脇 英志 相坂 和貴子 加藤 航平 水野 浩利 前川 邦彦 丹野 克俊 森 和久 奈良 理 高橋 功 目黒 順一
出版者
一般社団法人 日本交通科学学会
雑誌
日本交通科学学会誌 (ISSN:21883874)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.21-27, 2011 (Released:2018-03-01)
参考文献数
6

北海道では、ドクターヘリ(3機体制)と北海道防災ヘリなどとの共存体制や、さらなる航空機医療の充実を目的に、2010年5月北海道航空医療ネットワーク研究会が設立された。本研究会では、試験事業として民間企業からの寄付によって小型ジェット機を1ヶ月間チャーターし、患者搬送、医師搬送、臓器搬送を実施したので、その結果と運航の可能性や課題等について報告する。結果は、総出動件数16件で、患者搬送9件(要請11件)、臓器搬送4件、医師搬送3件であり、事故なく安全に運航できた。また、着陸可能な北海道内の8空港で見学会を開催し、普及活動も同時に実施した。1ヶ月間の固定翼機運航の成果を踏まえて、北海道地域再生医療計画に基づき、2011年度より3年間に渡り、固定翼機(メディカルウイング)の運航が実地される。
著者
巽 博臣 升田 好樹 今泉 均 杉山 由紀 本間 広則 黒田 浩光 浅井 康文
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.187-190, 2009-04-01 (Released:2009-10-15)
参考文献数
12
被引用文献数
2 4

重症患者では,胃蠕動の低下から胃内容の停滞,逆流をしばしば経験する。高度侵襲後の胃内容停滞が生じた重症患者に対し,六君子湯(以下,本剤)が著効した3症例を経験した。症例1は63歳女性で,Wegener肉芽腫症に合併した重症肺炎のため人工呼吸管理中であった。胃管排液量が500 ml·day−1前後と増加したため本剤を投与し,投与3日目から急速に排液量が減少した。症例2,症例3は胸腹部大動脈瘤術後の患者で,空腸チューブおよび胃管から経腸栄養を開始したが,胃管排液量が250~500 ml·day−1に増加したため本剤投与を開始し,投与2日目から排液量が減少した。いずれの症例も本剤投与による排液量減少から,円滑な経腸栄養の施行が可能となった。従来,本剤の薬理効果として胃運動機能改善,胃粘膜血流量増加,胃粘膜防御因子増強などが報告され,集中治療を要する重症患者で胃内容停滞症例にも有用であると考えられた。
著者
澤田 健 黒田 浩光 升田 好樹 今泉 均 巽 博臣 小濱 卓朗 秦 史壯 浅井 康文
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.71-75, 2007-01-01 (Released:2008-10-24)
参考文献数
9
被引用文献数
6 4

試験開腹術にて早期診断できなかった非閉塞性腸管虚血症 (nonocclusive mesenteric ischemia, NOMI) の一例を経験した。症例は76歳男性で, 腹痛を主訴に来院し, S状結腸憩室穿孔に対して, 発症から9時間後にS状結腸切除と人工肛門造設を行った。入室24時間後にショックとなり, 腸管壊死を疑い試験開腹術を行った。術中, 腸管壊死を示唆する所見はなかった。その後も血清乳酸値が上昇し, 再手術から30時間後の胸腹部造影CTでは腸管全体の造影効果の低下を認めたが, 腸間膜動脈・門脈などに血栓を示唆する所見はなかった。その後, 血清乳酸値は低下傾向を示した。しかし, 創が離開し腹腔内を観察したところ, 十二指腸から大腸まで壊死しており保存的治療としたが, 多臓器不全により死亡した。開腹による一回の腸管漿膜面からの肉眼的な判断では, NOMIの診断を見誤る可能性がある。血管造影はもちろんであるが, 開腹にて判断がつかない場合には, 滅菌ドレープを用いて被覆した状態での腹壁開放創とした腸管観察も一つの手段と考えられた。また, 腸管虚血による血清乳酸値の上昇を示す症例で, 上昇後にみられる血清乳酸値の低下は腸管虚血の病態改善を示すものではない可能性が示唆された。