著者
林 哲也 酒井 智彦 塩崎 忠彦 廣瀬 智也 村井 勝 大浜 誠一郎 上田 宜克 越智 聖一 大西 光雄 嶋津 岳士
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.527-531, 2019-06-30 (Released:2019-06-30)
参考文献数
9

救急活動における傷病者の観察では,経皮的血中酸素飽和度(pulse oximetric saturation,以下SpO2)が測定不能な場合がある。救急現場における脳内局所酸素飽和度(regional saturation of oxygen,以下脳内rSO2)の有用性の検討を開始したところ,状態の悪化がとらえられたと考えられる1 例を経験したので報告する。症例は40代女性。救急隊接触時,意識レベルJapan Coma Scale(JCS)-3,心拍数160回/ 分,SpO2は測定不能であった。 しかし,脳内rSO2は64%と低値を示し,病院到着時までに意識レベルがJCS-10に低下し,脳内rSO2も病院到着までに59%へ低下するのが確認できた。救急現場においてSpO2による傷病者のヘモグロビンの酸素飽和度を評価できない場合,脳組織のヘモグロビンの酸素飽和度を評価することは有用であると考えられた。
著者
片山 祐介 北村 哲久 清原 康介 酒井 智彦 溝端 康光 嶋津 岳士
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.697-703, 2018-12-31 (Released:2018-12-31)
参考文献数
12

患者が病院を受診すべきか否かを自身で判断できないことは救急車要請の一因である。その一方で,電話相談で「緊急度が低い」と判定されたにもかかわらず救急車出動した事例の実態については明らかにされていない。方法:対象者は2013〜2015年に大阪市内から救急電話相談に電話をし,「緊急度が低い」と判定された症例で,救急車が出動した症例のうち救急活動記録とひもづけできた救急搬送患者である。5歳年齢階層ごとの判定例1,000人当たりの救急車出動数を算出し,年齢階層別の動向をJoinpoint分析で評価した。結果:緊急度が低いにもかかわらず救急車が出動したのは185件で,もっとも多かった年齢階層は0〜4歳群で23件であった。一方でJoinpoint分析結果では,35〜39歳以降大きく増加していた。考察:とくに高齢者では緊急度が低いにもかかわらず救急車が出動する傾向にあり,救急車に代わる病院受診手段の確立が求められる。
著者
廣瀬 智也 清水 健太郎 小倉 裕司 山野 修平 大西 光雄 鍬方 安行 嶋津 岳士
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.53-61, 2013 (Released:2013-06-07)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

【はじめに】慢性肝不全に対しては分枝鎖アミノ酸(BCAA)などのアミノ酸が通常使用されるが,急性肝不全症例にその使用は推奨されていない.一方,急性肝不全時のアミノ酸値の変化を詳細に検討した報告は少ない.【目的】急性肝不全時の血中アミノ酸値を検討すること.【対象と方法】2004 年から2007 年に当センターに入院した急性肝不全症例において,血中アミノ酸値と臨床経過を後ろ向きに解析した.【結果】対象は8 例で,全例劇症肝炎の定義を満たしていた.年齢は中央値38.0 歳(IQR34.5-40.8),性別は男5 人,女3 人.入院時の血中総アミノ酸量は中央値10305.0 nmol/ml と極めて高値であった.血漿交換,透析などの治療過程において総アミノ酸値は低下し,BCAA 値は正常もしくは低値を示す症例が見られた.【結語】劇症肝炎時は,血中アミノ酸値は全体に高値をとり,治療過程において低下する.アミノ酸の投与時期や投与方法に関しては今後の検討課題である.
著者
清水 健太郎 小島 将裕 小倉 裕司 嶋津 岳士
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.797-802, 2016 (Released:2016-06-20)
参考文献数
52

プロバイオティクスは、「適正な量を摂取したときに宿主に有用な作用を示す生菌」、プレバイオティクスは、「大腸の有用菌の増殖を選択的に促進し、宿主の健康を増進する難消化性食品」のことである。急性期病態において腸管は全身性炎症反応の源となる傷害臓器のひとつであり、特に腸内細菌叢の崩壊は感染合併症や予後と関連している。腸内細菌叢を安定化させるプロバイオティクス・プレバイオティクス治療は、侵襲外科手術や外傷後の感染合併症予防に対して有効性が報告されており、急性期疾患での適応が広がっている。また、基礎研究の発展とともに腸内細菌叢の免疫系への深いかかわりが近年注目されている。腸内細菌叢の解析方法も培養だけなく網羅的なメタゲノム解析によって未知の原因菌が明らかになってきた。このような基礎・臨床研究によって急性期におけるプロバイオティクス・プレバイオティクス治療のメカニズムの解明と新たな治療法の開発が望まれる。
著者
廣瀬 智也 小倉 裕司 竹川 良介 松本 寿健 大西 光雄 鍬方 安行 嶋津 岳士
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.11, pp.933-940, 2013-11-15 (Released:2014-01-07)
参考文献数
23

【背景】自転車事故は小児期外傷の要因であるが,小児の自転車ハンドルによる直接外力の危険性は一般的に知られていない。【目的】小児自転車ハンドル外傷の特徴を明らかにすること。【方法と対象】2000年1月1日から2011年12月31日に当センターに来院した自転車関連外傷(15歳以下)を検討し,ハンドル先端により受傷した群(ハンドル外傷群)とそれ以外の自転車乗車中事故例(非ハンドル外傷群)に分けて比較検討した。【結果】ハンドル外傷群9例,非ハンドル外傷群46例。ハンドル外傷群は男児7例,女児2例,平均年齢8.6±3.4歳,平均ISS 8.8±5.3,ICU滞在日数7.4±4.6日,生命予後は全例良好であった。受傷部位は頸部1例(気管損傷:1例),胸部1例(胸部打撲のみ:1例),腹部7例(肝損傷:3例,膵損傷:1例,後腹膜出血:1例,腎損傷:1例,膀胱・腹壁損傷:1例)であった。治療は緊急手術治療1例,待機手術治療1例,緊急TAE1例,保存的治療6例であった。ハンドル外傷群は,非ハンドル外傷群と比べると年齢,性別,ISS,ICU滞在日数,転帰に有意差はなかった。腹部AISスコアはハンドル外傷群で有意に高く,頭部AISスコアは非ハンドル外傷群で有意に高かった。搬送経緯では,現場からの直接救急搬送は非ハンドル外傷群で,転院搬送はハンドル外傷群で有意に多かった。【考察】自転車ハンドル外傷は外力がハンドルの先端に集中するため,外見以上に重篤な深在性内臓損傷を伴うことが多いが,受傷機転などから過小評価されるケースがしばしばある。自転車ハンドル外傷の予防としては,自転車ハンドル先端の形状を工夫する,腹部への防護服を装着するなどが挙げられる。【結語】小児自転車ハンドル外傷は深部臓器の損傷を伴いやすく,初療における慎重な診断が求められる。
著者
清水 健太郎 小倉 裕司 後藤 美紀 朝原 崇 野本 康二 諸富 正己 平出 敦 松嶋 麻子 田崎 修 鍬方 安行 田中 裕 嶋津 岳士 杉本 壽
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.12, pp.833-844, 2006-12-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
53
被引用文献数
2

腸管内には多彩な細菌群がバランスを保ち共存しており,腸内環境を整えると同時に生体へ豊富なシグナルを送り続けている。腸管は,侵襲時の主要な標的臓器(target organ)であり,腸内細菌叢の維持は腸上皮におけるバリア機能の維持と感染防御の点で極めて重要と考えられる。しかしながら,急性期重症病態の腸内細菌叢や腸内環境に関する検討はほとんどされていない。われわれは,SIRS患者の腸内細菌叢と腸内環境の変化を明らかにし,近年注目されているシンバイオティクス(synbiotics)療法(“善玉”生菌+増殖物質)の有効性を評価した。研究結果を含め,侵襲時の腸管機能と腸管内治療に関して総説する。(1) SIRS患者において,腸内細菌叢および腸内環境は著しく崩れる。「善玉菌」であるBifidobacteriumとLactobacillusは健常人の1/100-1000程度に減少し,「病原性」を有するブドウ球菌数は,健常人の100倍程度に増加した。腸内細菌叢の崩壊と同時に,短鎖脂肪酸の産生は減少し,腸管内pHは上昇した。このような腸内環境の悪化は腸内細菌叢をさらに崩す(“腸内環境の悪循環”)と考えられる。(2)シンバイオティクス療法は,SIRS患者の腸内細菌叢および腸内環境を維持し,経過中の感染合併症を減少させる。シンバイオティクス投与により,BifidobacteriumとLactobacillusが高く維持され,腸管内の短鎖脂肪酸,pHも保たれた。また腸炎の発生だけでなく,肺炎や菌血症の合併を有意に減らした。シンバイオティクス療法が感染症の合併を防止するメカニズムに関しては,今後の検討を要する。(3)現在,急性期重症病態に対する標準化された腸管内治療は存在しない。シンバイオティクス療法は,腸内細菌叢を保持し,腸内環境と腸管機能を保つ点で生理的であり,重症患者の臨床経過を改善する有望な腸管内治療法と考えられる。
著者
松田 外志朗 栗原 敏修 浅沼 博司 中江 晴彦 冨吉 浩雅 森田 正則 嶋津 岳士 平出 敦
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical journal of Kinki University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1-2, pp.71-79, 2012-03-01

[抄録] 糖尿病患者の増加及び高齢化に伴い, 低血糖症例は増加している.重症症例は, 意識障害などのため他者の援助を必要とし, 救急搬送されることが多い.低血糖症例にいかに対応するかは救急医療の現場において重要な問題である.近畿大学医学部附属病院では, 低血糖症例のほとんどが救急診療部門(ER)において初期治療がなされている.当院ERにおいて, 2008年4月から2010年3月までの2年間で84回の低血糖によるER受診があった.意識障害あるいは意識消失を主訴とする症例が多く, 高齢者の割合も高い.内分泌代謝内科で治療されている症例は半数以下であり, 糖尿病以外の疾患のために他の診療科かかりつけとなっている症例が多かった.低血糖症例に対し適切な初期診療を行うために, 当院における低血糖症例の特徴を検討し, 初期診療において必要な情報について解説する.また, 初期診療において, 注意を要する症例として, 低血糖が10時間以上遷延した7症例, 糖尿病治療を受けていなかった非糖尿病の12症例をとりあげる.さらに, 患者の高齢化や社会的な要因から留意すべき点について考察する.
著者
嶋津 岳士
出版者
日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.102-105, 2006-04-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
7
著者
中堀 泰賢 廣瀬 智也 塩崎 忠彦 小川 新史 大西 光雄 藤見 聡 嶋津 岳士
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.774-780, 2013-09-15 (Released:2013-12-30)
参考文献数
20
被引用文献数
2 4

【背景】rSO2(regional saturation of oxygen)とは,動脈・静脈・毛細血管を含む酸素飽和度のことで,「局所混合血酸素飽和度」もしくは「組織酸素飽和度」とも呼ばれる。この値を測定することで,局所の酸素需給のバランスの変化をとらえることができるとされている。心肺停止患者の脳保護の重要性は強調されているが,蘇生処置中の脳の酸素化を検討した研究はない。【目的】病院外心肺停止患者の蘇生処置中の脳内酸素飽和度(rSO2)の継時的変化を明らかにすること。【方法と対象】2008年3月から2010年3月まで我々の施設に搬送された病院外心肺停止患者で蘇生処置中に脳内rSO2値を測定した患者を対象とし,自己心拍の再開の有無別,PCPS施行時のrSO2値を後ろ向きに解析した。また健常人15人から正常範囲を決定した。【結果】Room air条件下でのrSO2値の正常範囲は71.2±3.9%であった。自己心拍再開を認めない例は25例(71.0±15.9歳),自己心拍再開例は13例(72.1±9.6歳),PCPS施行症例は5例(54.4±15.8 歳)であった。自己心拍再開を認めない症例は胸骨圧迫を施行してもrSO2値の上昇は認めなかった。一方,自己心拍再開例では再開により著明に上昇し,自己心拍再開時はrSO2値43.2±14.1%であったが,10分後55.7±12.3%,15分後59.7±8.5%と有意に上昇した(それぞれp<0.05,p<0.01)。PCPS施行例において,開始時rSO2値48.4±8.9%であったが,施行5分後63.0±8.8%,10分後66.2±5.7%,15分後68.1±4.6%と有意に上昇した(ともにp<0.0001)。【結語】脳内rSO2値は胸骨圧迫のみでは上昇せず,自己心拍再開とともに上昇する。PCPS導入により速やかに脳内rSO2値は上昇する。
著者
嶋津 岳士 田崎 修 清水 健太郎 松本 直也 藤野 裕士 田崎 修 清水 健太郎 松本 直也 藤野 裕士
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

研究成果の概要:危機管理に関する医学・医療領域からの新しい取り組みとして「緊急事態対応医学」という概念を提唱した。「緊急事態対応医学」はall-hazard approach、cross-sectoral function、lessons-learned approach、service continuity planningを4原則として体系化することが可能で、具体的な緊急事態や災害事例の検証ならびに諸外国の状況に関する調査を通じて有用性が示された。
著者
田崎 修 杉本 壽 嶋津 岳士 朝野 和典 鍬方 安行 小倉 裕司 塩崎 忠彦 松本 直也 入澤 太郎 室谷 卓 廣瀬 智也
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

救命救急センターにおいて、挿管患者に集中して「先制攻撃的接触予防策」を導入したところ、挿管患者だけでなく病棟全体のMRSA院内感染が減少した。救命センター入院早期(24時間以内)におけるMRSA院内感染のリスクファクターは、挿管、開放創の存在、抗生剤投与、およびステロイド投与であった。Neutrophil extracellular traps(NETs)は喀痰中において、呼吸器感染症に対して速やかに発現し、感染症が軽快すると減少した。NETsは感染症のみならず非感染性の高度侵襲にも反応して血中に発現した。今後、NETsの臨床的意義の解明が必要である。