著者
山勢 善江 山勢 博彰 明石 惠子 浅香 えみ子 木澤 晃代 剱持 功 佐々木 吉子 佐藤 憲明 芝田 里花 菅原 美樹 中村 美鈴 箱崎 恵理 増山 純二 三上 剛人 藤原 正恵 森田 孝子
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.37-47, 2021 (Released:2021-03-31)
参考文献数
20

2019年11月に中国で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、わが国でも全国に拡大し、2020年4月には第一波、夏に第二波、そして11月には第三波が到来した。 本学会では、COVID-19緊急事態宣言下での救急看護の実態と課題を明らかにすることを目的に、学会ホームページを通じて、本学会員を中心にWebアンケート調査を実施した。調査内容は、COVID-19患者への所属施設の対応、具体的対応、感染防止策、看護師の認識や思い等である。調査には425名が回答した。 多くの施設で、待合室や診察室として「新設の専用エリア」や「陰圧室」を使用していたが、「他患者と同じエリア」を使用していた施設もあり、ハード面の迅速な設置の困難さが明らかになった。また、半数以上の者が、感染防護具、看護師の不足を感じていた。さらに、救急看護師は未知の感染症への対応で、自分自身や家族への感染の恐怖、行政や所属施設、上司への不満などネガティブな感情をもつ者が多く、調査時点で心理的不安定を経験していた看護師は29.6%いた。 今後の医療の課題と対策には、感染対策指針やマニュアルの整備、検査体制の強化、ワクチンや治療薬の開発促進、専門病院の整備、専門的スタッフの配置、日本版CDCの設置、医療者への報酬増額があった。
著者
加藤 隆寛 田中 聡 渡邉 暁洋 織田 順 浅香 えみ子 有賀 徹 畝井 浩子 鏑木 盛雄 菊池 憲和 桑原 健 篠原 高雄 峯村 純子 眞野 成康 西澤 健司 定光 大海
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.725-734, 2016-12-31 (Released:2016-12-31)
参考文献数
18

目的:救急医療における薬剤師のおかれた状況や不足するスキルは不明であり,これらを把握することを目的にアンケートを実施した。方法:日本臨床救急医学会の薬剤師会員を対象に,救急医療・集中治療への従事,現在および今後実施したい業務,実施希望のトレーニングコースについて調査した。結果:195名より回答を得た。救急医療への従事は23.1%,集中治療が68.2%であった。救急医療での業務は主に薬品管理で(77.8%),患者対応はおもに依頼された時のみ(64.4%)行われていた。トレーニングコースは中毒,循環器系が求められていた。集中治療では抗菌薬,循環器系薬の介入が多かったが,フィジカルアセスメントの実施率は低かった。結論:救急医療に従事する薬剤師は少ない。全患者へ対応できる体制の整備,中毒,循環器系に関するトレーニングが有効と考えられた。集中治療ではフィジカルアセスメントの活用が次の課題になると考えられた。
著者
炭家 千尋 大川 貴治 男乕 夏実 川合 いずみ 浅香 えみ子
雑誌
第21回日本救急看護学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-09-03

【背景・目的】 Rapid Response System(RRS)は予期せぬ院内心肺停止率、死亡率の低下や入院日数を削減する可能性が示唆され、国内外の医療安全指針に採用されている。RRSの第1コンポーネントである求心的視点(患者のバイタルサイン等の異常への気づきとRRSの起動)は、看護師の状況認識力のひとつであるため、能力差により状態変化を見逃される可能性があることから、モニタリングの重要性が強調されている。しかし、全患者に生体情報モニターによる観察を行うことは、物理的に不可能である。これらの現状から、看護師の能力差によらず、患者への負担が最少で状態変化の把握ができ、適切なタイミングでの訪室と観察に繋がるシステムが望まれる。そこで、介護施設において、「見守りシステム」として利用されているパラマウント製品の「眠りSCAN®」が急変の前兆を早期に確認する患者安全のデバイスとして活用可能性があるのではないかと着眼した。しかし、眠りSCAN®は生体情報モニターではないため、患者の病態を正確に反映するものではない。ただし、患者の状態変化を示す呼吸数と心拍数が眠りSCAN®により得られる指標として含まれる。そこで、眠りSCAN®の指標が患者の病態変化を捉える看護師の感覚を裏付けることができるかを検証することとした。【方法】 ベッドサイドで呼吸・循環を持続モニタリングする必要のない救命病棟入院患者に対して、眠りSCAN®を退院まで使用した。人工呼吸器装着中の患者と15歳未満の小児患者は対象から除外した。眠りSCAN®で得られる指標(呼吸回数、心拍数、活動量)のうち、急変前兆候を示す呼吸と心拍数に焦点をあて、設定数を逸脱した場合には訪室し、患者の迅速評価、一次評価を行った。但し、眠りSCAN®によるデータに変化がない場合も看護師の懸念が生じた場合は訪室することを前提としている。【倫理的配慮】 得られたデータは匿名化を図り、機密性確保に努めた。また、研究発表後は再現不可能なかたちでデータは破棄をする。【結果】 対象患者は28名であった。看護師が訪室しようと思うレベルの数値が眠りSCAN®で示された患者に迅速評価・一次評価を実施した結果、眠りSCAN®の数値は、実測の呼吸数や心拍数、と差異がなかった。一時的に眠りSCAN®で逸脱した値を示した症例は、体動や咳嗽反射によって現れた生体反応であった。持続的に眠りSCAN®で逸脱した値を示した症例は、疼痛や喘息発作、発熱による生体反応であった。【考察】 看護師が「何かおかしい」と感じて観察する状態のバイタルサインと眠りSCAN®が表すシグナルは差異が無く反映していることが明らかとなった。よって、眠りSCAN®の指標は患者の病態変化を捉える看護師の感覚を裏付ける可能性が高いことが示唆された。 しかしながら、本研究で対応した看護師は中堅以上であったため、経験値などによって差が見られないかという点においては追研究が必要である。さらに、眠りSCAN®は医療機器や耐圧分散式エアマットレスの振動を読み取るという特性を踏まえた対象患者の選定と、同時にサンプル数を増やして追研究することで、この先、急変の前兆を早期に確認する患者安全に役立つデバイスとして医療現場で使用できる可能性が高まると考えられる。