著者
岩井 俊 山形 愛可 関村 敦 本野 望 薄田 勝男 浦本 秀隆
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.37-43, 2021-01-15 (Released:2021-01-15)
参考文献数
14

肺癌手術における偶発症として迷走神経反射や胸腔内温蒸留水による心機能異常は稀に認められる.しかし,術中の偶発的な心停止はその頻度,機序や患者背景などについての報告は認められない.今回,我々は術中に心臓への機械的圧迫や,破滅的な大出血を来たしていないにもかかわらず,突然心停止を来たした症例を4例経験した.1例は縦隔リンパ節郭清中に,3例は胸腔内の温蒸留水による洗浄中に心停止に至っていた.いずれの4症例も用手的な心臓圧迫や自然な自己心拍の再開などにより,停止時間は2分以内であり,術後に重篤な合併症,後遺症を来たすことはなかった.ただし,1例のみ,術後7日目に脳梗塞を来たした.しかし,脳梗塞はヘパリン投与により改善し,後遺症を残さなかった.術中の偶発的な心停止は胸腔内洗浄でも起こりうるが,麻酔科などと適切に対応することで重篤な合併症や後遺症を残すことなく,良好な経過を導き得る.
著者
桑田 泰治 浦本 秀隆 宗 知子 花桐 武志 田中 文啓
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.060-063, 2012-01-15 (Released:2012-02-29)
参考文献数
8

症例は68歳男性.咳,血痰を主訴に近医を受診した.胸部CTで右肺尖部から肺門部にかけての腫瘤を認めた.気管支鏡検査にて放線菌が疑れたため,抗生剤治療を開始した.自覚症状は改善したが,腫瘤の縮小を認めなかったため,肺癌の合併を疑い,診断と治療を兼ねた手術を行った.術式は胸腔鏡補助下右肺上葉切除術とリンパ節郭清(術中迅速病理診断carcinoid).術後診断はadenocarcinoma, p-T3N1M0 stage IIIA.摘出標本からは放線菌は認めなかった.今回,我々は肺放線菌症に肺腺癌を合併した比較的稀な症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
浦本 秀隆
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.215-219, 2008-06-01 (Released:2017-04-11)

企業の安全管理において通勤方法は重要な管理要素の一つである. 当事業所は特有の立地条件のため, 従業員の大半が自動車通勤であり, 高速道路を利用している人もいる. 本研究では高速道路通勤による健康への影響を調査した. 高速道路通勤を利用する群(highway: HW)は高速道路通勤を利用しない群(non-highway: NHW)に比べ男性に多く, 年齢が若かった. NHW群は5年間の観察期間にて(body mass index: BMI), 収縮期血圧, 拡張期血圧, 総コレステロールは有意に悪化したが, HW群は収縮期血圧を除いて増悪を認めなかった. さらに中性脂肪は有意に改善した. また運動する習慣や栄養バランスへの配慮が低く, ストレス解消法も無いと答えた人が多かったにもかかわらず, ストレスを感じない人が多く, 高速道路運転によるストレス解消が推測された. 高速道路通勤はむしろ健康に好影響を与える可能性がある.
著者
平良 彰浩 下川 秀彦 浦本 秀隆 迎 寛 山口 幸二 田中 文啓
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.159-163, 2014-03-15 (Released:2014-04-28)
参考文献数
8

胸壁発生のカンジダ膿瘍は我々が検索しうる限り報告例はない.今回悪性腫瘍との鑑別診断に苦慮したカンジダ膿瘍の1例を経験したので報告する.症例は80代男性.2011年9月に肝細胞癌に対し,肝後区域切除施行.術後肝膿瘍(candida albicans)を発症し,経皮経肝膿瘍ドレナージ,ボリコナゾール投与にて,軽快し退院となった.2012年6月に右前胸部痛と腫脹,弾性硬の腫瘤を自覚.精査にて肝細胞癌の胸壁への転移が疑われた.胸壁腫瘍に対して,胸壁合併切除(第5-7肋骨)及び胸壁再建を施行した.術後病理診断にて膿瘍形成,炎症細胞の浸潤を認め,細菌培養にてCandida albicans陽性となりカンジダ膿瘍と診断された.術後はミカファンギン150 mg/dayを4週間投与,ボリコナゾールの内服を2週間行った.術後6ヵ月において再発は認めていない.胸壁に発生したカンジダ膿瘍に対し外科的切除を施行した症例を経験したので報告する.
著者
馬場 哲郎 浦本 秀隆 山田 壮亮 桑田 泰治 永田 好香 重松 義紀 下川 秀彦 小野 憲司 竹之山 光広 花桐 武志
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.002-006, 2011-01-15 (Released:2011-04-27)
参考文献数
12

肺カルチノイド切除10例について臨床病理学的因子と治療成績に関して検討を行った.定型的カルチノイド(TC)が7例で非定型的カルチノイド(AC)が3例.平均年齢は49.5歳で,男性6例,女性4例(全例TC)であった.術前にカルチノイドの診断がついたのは4例であり,他組織型の肺癌と診断されたのが4例.術式は肺摘除が2例,二葉切除が1例,肺葉切除4例,区域切除1例,部分切除1例,気管支形成術1例であった.TCでは術後(平均観察期間63ヵ月)の再発例はなく,ACは全例が再発.カルチノイド全体での5年生存率は62.5%で,TCは100%,ACでは5年生存例はなかった.TCについては機能温存手術の適応の検討が,ACについては周術期の補助療法など集学的治療の検討が必要であると考える.