著者
兵頭 正浩 入江 将考 濱田 和美 花桐 武志
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A-79_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【背景】肺癌患者の筋肉量減少は予後不良因子と報告されているので,体重減少のみでなくサルコペニアの評価は臨床的に有用である.しかし,身体組成と予後との関連は不明な点が多い.本研究の目的は,早期肺癌患者と比較することで,進行肺癌患者の身体組成の特徴を明らかにすることである. 【方法】 2017年4月から2017年12月までに当院において,肺癌に対し胸腔鏡下肺切除術を施行した症例と進行肺癌に対する薬物療法の初回導入時にリハビリ介入を行った症例のうち,身体機能・組成評価を実施出来た症例を対象とした.身体機能は,6分間歩行距離(6MWD)と等尺性膝伸展筋力(下肢筋力)を,身体組成は,生体電気インピーダンス法を用いて四肢骨格筋量(SMI),細胞位相角(PA),体水分均衡(ECW/TBW)を測定した(何も手術前,化学療法開始前).早期肺癌群(早期群)と進行肺癌群(進行群)において,臨床データ,身体機能・組成を比較した.統計分析は,Fisherの正確検定またはt検定を用い,有意水準は5%とした. 【結果】 研究期間内の呼吸リハ実施例の80例中,51例が解析対象となった(早期群:40例,進行群:11例).2群間の比較の結果,有意差があったのは,Performance Status(p<0.01),6MWD(p<0.01),下肢筋力(p=0.01),PA(p=0.01),ECW/TBW(p<0.01). 一方, 年齢,BMI,SMIには有意差を認めなかった. 【結論】 早期群と比較して進行群は,予後不良因子とされているPS,PAが有意に劣っていた.一方,SMIやBMIは有意差を認めなかった.これは進行群でECW/TBWが有意に高いことから分かるように,筋の過水和がその一因であったと考えられる.身体機能が有意に低かったことからも,進行群における筋質の低下が結果に影響を及ぼしていた可能性がある.肺癌患者におけるサルコペニア評価には,単に筋肉量だけに着目するだけでなく,ECW/TBWも考慮することが重要であった.また,身体機能を併せて測定することで身体組成が正しく評価できることが示唆された. 【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に沿い研究計画書を作成し,当院の研究審査委員会(登録番号:15000-161)の承認(承認番号:2015-0005)を得ている.対象者全員に十分な説明を行い,同意を得て評価及び呼吸リハビリテーションを実施した.なお,ヘルシンキ宣言に準じ倫理的配慮に基づきデータを取り扱った.
著者
楫山 健太 眞鍋 堯彦 佐古 達彦 花桐 武志
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.541-546, 2022-07-15 (Released:2022-07-15)
参考文献数
16

症例は72歳男性.咳嗽,左前胸部痛を主訴に当院を受診した.来院時の胸部CTにて左胸腔内に巨大腫瘤が認められ,腫瘤による縦隔偏位および左肺気管支の圧排による無気肺が認められた.エコーガイド下に針生検を施行し,組織診断の結果,脱分化型脂肪肉腫が疑われた.手術は胸腔鏡下に開始し,腫瘤を摘出する際に左第4肋間開胸を施行した.術中所見では腫瘍は前縦隔より発生しており,左肺および胸壁などの周囲組織への浸潤は認められなかった.病理学的精査の結果は脱分化型脂肪肉腫の診断であった.今回われわれは前縦隔に発生した巨大腫瘤を呈した脱分化型脂肪肉腫の切除例を経験した.腫瘍切除に際して,腫瘍が巨大であるため通常開胸では視野確保が困難であり,胸腔鏡下操作が有用であった一例と考えられた.
著者
桑田 泰治 浦本 秀隆 宗 知子 花桐 武志 田中 文啓
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.060-063, 2012-01-15 (Released:2012-02-29)
参考文献数
8

症例は68歳男性.咳,血痰を主訴に近医を受診した.胸部CTで右肺尖部から肺門部にかけての腫瘤を認めた.気管支鏡検査にて放線菌が疑れたため,抗生剤治療を開始した.自覚症状は改善したが,腫瘤の縮小を認めなかったため,肺癌の合併を疑い,診断と治療を兼ねた手術を行った.術式は胸腔鏡補助下右肺上葉切除術とリンパ節郭清(術中迅速病理診断carcinoid).術後診断はadenocarcinoma, p-T3N1M0 stage IIIA.摘出標本からは放線菌は認めなかった.今回,我々は肺放線菌症に肺腺癌を合併した比較的稀な症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
片江 祐二 島田 佳宏 松本 康二郎 近藤 秀臣 森 俊陽 西田 茂喜 安田 学 花桐 武志
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.189-190, 2018-03-25 (Released:2018-05-21)
参考文献数
5

【目的】当科を初診した転移性骨腫瘍症例の特徴と必要な検査について検討した.【対象と方法】2012年からの5年間に新小倉病院で転移性骨腫瘍と診断され,カルテベースで後方視的に調査しえた132例のうち,悪性腫瘍の既往がなく整形外科受診時に転移性骨腫瘍が明らかになった9例(全例男性,60-88歳[中央値76歳])を対象にした.検討項目は,①初診時の主訴,②罹患骨,③腫瘍原発巣,④原発腫瘍検索方法,⑤原発腫瘍同定率である.【結果】①初診時の主訴は腰痛・背部痛が7例,②罹患骨は脊椎が8例で最も多かった.③腫瘍原発巣は前立腺癌4例,肺癌3例であった.④⑤原発腫瘍検索は,体幹部CT検査が9例で,その同定率は77.8%であった.【考察】整形外科を初診する70歳以上の男性では転移性骨腫瘍の可能性を念頭におく必要があり,原発腫瘍の検索には体幹部CT検査(造影含む)が簡便かつ非侵襲的で考慮すべき検査と考えた.
著者
兵頭 正浩 入江 将考 濱田 和美 安田 学 花桐 武志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに】</p><p></p><p>非小細胞肺癌(NSCLC)患者の肺切除後の心肺合併症(術後合併症)は,短・長期的に術後患者に悪影響を及ぼすことが報告されている。我々は先行研究において術後合併症の独立因子を同定したが(Eur Respir J. 2016),呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)としては術後合併症の予防的側面だけではなく,回復も重要な課題である。本研究は,術後合併症患者における臨床経過と身体機能の推移を明らかにすることを目的とする。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>2005年6月から2012年10月までに当院において,術前病期I期の診断で胸腔鏡下肺葉切除術を施行したNSCLC連続症例を対象とした(全例呼吸リハ実施)。身体機能評価は,6分間歩行距離(6MWD)と等尺性膝伸展筋力を,手術前,術後2病日,術後7病日,退院時の計4回測定した。呼吸リハは手術翌日から開始し漸増的運動療法を行った(2回/日)。合併症を発症しても呼吸リハは原則中止せず病態に応じて継続介入した。カルテより術後経過の詳細を調査した。術後合併症有り群と無し群において,術後在院日数と身体機能評価の推移を比較した。統計分析には,Mann-Whitney U検定,反復測定の分散分析,Bonferrorni多重比較を用いた。有意水準は危険率5%とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>包含基準を満たした188名を解析対象とした。術後合併症有り群は36例で,術後在院日数の中央値は9日だった。合併症内訳(重複例あり)は,肺瘻遷延18例,心房細動12例,無気肺8例,肺炎4例,気胸3例,乳糜胸1例だった。肺瘻遷延例で胸膜癒着術を1回以上行ったのは9例で胸腔ドレーン留置期間の中央値は10日間で,遅発性再気胸全例がドレーン再挿入し留置期間の中央値は13日間だった。術後在院日数は合併症有り群で有意に長かった(17日vs9日,p<0.001)。反復測定の分散分析による2群間の身体機能の比較の結果,6MWDは主効果,測定時期,交互作用の何れも有意で(p=0.024,<0.001,=0.031),多重比較検定の結果,術後7病日と退院時の差が最も大きかった。下肢筋力では測定時期のみ有意で(p<0.001),術後2病日と退院時の差が最も大きかった。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>先行研究ではCOPD併存は術後合併症の有意な独立因子であったが,実際,術後肺瘻,心房細動,無気肺,肺炎といった合併症が高頻度であったのは,脆弱な気腫肺,肺血管床の減少,気道クリアランス低下など,COPDの臨床的特徴と合致する結果だった。これらは胸腔ドレーン留置,心房細動のrate control,難治性肺炎などの積極的な運動療法が困難となる治療期間を伴うものだった。下肢筋力の推移はどの時期も2群間に差はなかったので,筋力は周術期において術後合併症の影響を受けていない事が示唆された。一方,6MWDは2群間に差を認め,術後合併症やその治療が影響していたと考えられた。しかしながら術後在院日数に差があったが退院時6MWDに群間差がなかったのには,呼吸リハが合併症治療期間も中止せず病態に応じ継続介入していたことも要因であった可能性が示唆された。</p>
著者
馬場 哲郎 浦本 秀隆 山田 壮亮 桑田 泰治 永田 好香 重松 義紀 下川 秀彦 小野 憲司 竹之山 光広 花桐 武志
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.002-006, 2011-01-15 (Released:2011-04-27)
参考文献数
12

肺カルチノイド切除10例について臨床病理学的因子と治療成績に関して検討を行った.定型的カルチノイド(TC)が7例で非定型的カルチノイド(AC)が3例.平均年齢は49.5歳で,男性6例,女性4例(全例TC)であった.術前にカルチノイドの診断がついたのは4例であり,他組織型の肺癌と診断されたのが4例.術式は肺摘除が2例,二葉切除が1例,肺葉切除4例,区域切除1例,部分切除1例,気管支形成術1例であった.TCでは術後(平均観察期間63ヵ月)の再発例はなく,ACは全例が再発.カルチノイド全体での5年生存率は62.5%で,TCは100%,ACでは5年生存例はなかった.TCについては機能温存手術の適応の検討が,ACについては周術期の補助療法など集学的治療の検討が必要であると考える.