著者
海蔵寺 大成 青山 秀明 田中 美栄子 藤坂 博一 増川 純一 小野崎 保 相馬 亘 高安 秀樹 生天目 章 藤原 義久
出版者
国際基督教大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究の課題である統計力学の視点から経済現象を分析しようとする試みは最近、経済物理学と呼ばれ始めている。経済物理学は急速に発展しつつある学際的分野であるが、始まったばかりの研究領域である。本研究の目的は経済データの統計分析を通して経験則を発見し、その観察事実を物理学者と経済学者がお互いの知識を持ち寄り、議論することでこれまでの学問的な枠にとらわれない新しい実証的経済科学を作ることである。この時期にこの分野で研究している研究者が共同して一つの課題に取り組みお互いの知識や考え方を共有する機会が与えられたことは、今後の経済物理学の発展にとって非常に重要な意味があったと考える。本研究における主要な研究対象は次の2つである。I.「資産市場におけるゆらぎ」、II.「企業・個人の所得のゆらぎおよび経済社会ネットワーク」である。すなわち、本研究の課題は経済のストックとフローおよびそれらの相互作用を統計物理学的視点から分析することである。この2つの課題は経済物理学において最も関心をもたれているテーマであると同時に、多くの未解決な問題を含む研究課題でもある。それぞれの研究課題において、まず、徹底したデータマイニングが行われ、多くの統計的法則が発見された。また、発見された経験則を説明する新しい経済理論が統計物理学の視点から構築された。本研究の成果は、多岐に亘っているが、今後、これらの成果を発展、統合してゆくことで、実証的な立場からマクロ経済現象を明らかにする極めて独創的な経済学を作り出すことができると期待している。
著者
海蔵寺 大成
出版者
国際基督教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

1998年から2000年にかけて起きた米国のインターネット・バブルとバブル崩壊のメカニズムを研究した。(1)インターネット関連企業の株価の逆累積分布はパレート分布に従っており、パレート指数が1に近づいた時、暴落が起きていることが分かった。(2)バブル崩壊は、イジング・モデルにおける相転移に対応することを理論的に示した。
著者
八田 達夫 海蔵寺 大成 竹澤 伸哉 唐渡 広志
出版者
政策研究大学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

八田:東京のオフィスビルの容積率緩和がもたらす発生交通量の増大が引き起こす東京主要道路の混雑率の増加を測定し、その金銭換算を行った。さらに、これを容積率緩和のもたらす便益の増大と比較した。海蔵寺:「土地市場におけるバブル崩壊のメカニズム」を研究した。次ぎのことがわかった。(i)バブルは、限られた地域の土地(丸の内周辺など)に投資資金が集中し、地価分布の歪みが拡大してゆく現象であること、(ii)少数地点の地価が極度に高騰してゆく結果、利用可能な投資資金の大半が限られた土地に吸収されてしまい、高値を維持できなくなることからバブル崩壊が起きること、(iii)バブルの崩壊は、土地価格分布のジニ係数の時間的変化をモニターすることで予測可能であることがわかった。竹澤:2005年から2006年は、スポーツ設備における不動産開発とJREITに関する予備的研究を行い、学会で発表した。また、不動産開発プロジェクト等のデータベース(Bloomberg,PACAP,Deloitte-Touche,等のデータベースを使用)の構築を完成させた。さらにJREITに関する分析が完了し、論文"Beneficiary Rights in the Japanese REIT Market"(Nobuya Takezawaと共著)日本ファイナンス学会の2007年度大会で発表した。また、同論文のアップデート版が、アジアファイナンス学会で2008年7月横浜にて発表することになった。さらに、ウエスタン経済学会から、論文"Default Analysis of Golf Courses in Japan"の研究発表の許可を得た。唐渡:1991年から2001年の期間を対象にしてGISのポリゴンデータより土地利用変遷をデータ化した。これを利用して、事務所および住宅家賃関数の推定を通じて都心部の土地利用の非効率性の費用を計測した。また、用途変更パターンを観察しWheatonらの再開発定理を検証した。マンション価格のrepeat sales dataを開発し、品質変化の調整をおこなった不動産価格指数を測定した。代表的な価格指数Case&Shiller型の問題点である、住宅の経年変化による指数推定値のバイアスを取り除くための計量経済学的手法を提案した。不動産価格のマイクロな構造を分析するためのヘドニック・アプローチの理論と応用についてとりまとめた。さらに空間計量経済分析により地価関数の空間相互依存性を検証するための検定手法を提案した。
著者
海蔵寺 大成
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.533, pp.57-63, 2000-01-12
被引用文献数
1

この研究の目的は, 多くの経済主体が相互作用する金融ネットワークにおける新しい期待形成仮説, 「相対的期待形成仮説」を提案することである.相対的期待形成仮説はケインズの美人投票仮説の数学的定式化であると解釈することができる.この期待形成仮説から経済主体の投資態度分布として, ボルツマン分布が導出されることが示される.