著者
池見 達也 大野 真 生天目 章
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.375-376, 1997-03-12

エージェントは独自のあり方を追求するが, 他者との関係の中でしか生きられなく, 本質的に社会的存在である. エージェントは自らに固有な何かを実現させようとせざるを得ない存在であり, 社会的位置づけによって行動することを余儀なくされる. これは, エージェントは何らかの組織の中に自らを位置づけることによってのみその生活を維持し, 他者との接触により社会的学習をしつつ成長するからである. 各成員がお互いに何らかの心理的関与を持っている集合体は「集団」と定義される. 自己の効用を持ち, それを最適するための合理的な意思決定をするエージェントの集団を考えたとき, エージェントは相互作用し, その結果, 同調行動をとるようになる. エージェントがいかに合理的な意思決定をするかは, 自己の効用関数と, エージェント間の相互作用の結果生み出される集団規範による集団圧力との間のバランスをどのようにとるかが一番の問題となる. 本研究では, このような同調行動問題を定式化し、また, 同調行動によって引き起こされる社会ゲームの一つであるバンドワゴン効果について考察する.
著者
海蔵寺 大成 青山 秀明 田中 美栄子 藤坂 博一 増川 純一 小野崎 保 相馬 亘 高安 秀樹 生天目 章 藤原 義久
出版者
国際基督教大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究の課題である統計力学の視点から経済現象を分析しようとする試みは最近、経済物理学と呼ばれ始めている。経済物理学は急速に発展しつつある学際的分野であるが、始まったばかりの研究領域である。本研究の目的は経済データの統計分析を通して経験則を発見し、その観察事実を物理学者と経済学者がお互いの知識を持ち寄り、議論することでこれまでの学問的な枠にとらわれない新しい実証的経済科学を作ることである。この時期にこの分野で研究している研究者が共同して一つの課題に取り組みお互いの知識や考え方を共有する機会が与えられたことは、今後の経済物理学の発展にとって非常に重要な意味があったと考える。本研究における主要な研究対象は次の2つである。I.「資産市場におけるゆらぎ」、II.「企業・個人の所得のゆらぎおよび経済社会ネットワーク」である。すなわち、本研究の課題は経済のストックとフローおよびそれらの相互作用を統計物理学的視点から分析することである。この2つの課題は経済物理学において最も関心をもたれているテーマであると同時に、多くの未解決な問題を含む研究課題でもある。それぞれの研究課題において、まず、徹底したデータマイニングが行われ、多くの統計的法則が発見された。また、発見された経験則を説明する新しい経済理論が統計物理学の視点から構築された。本研究の成果は、多岐に亘っているが、今後、これらの成果を発展、統合してゆくことで、実証的な立場からマクロ経済現象を明らかにする極めて独創的な経済学を作り出すことができると期待している。
著者
松山和史 生天目章
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.20, pp.97-102, 2008-03-07
参考文献数
9

カスケード現象は,多くの人が他人の行動を模倣した意思決定をすることで,自分の選好とは反する行動をとってしまう現象であり,社会科学では重要なテーマである.また,インターネット上でのランキングシステムや協調フィルタリングの普及により情報工学でも重要なテーマになりつつある[1].本研究では,多数のエージェントによる逐次的な意思決定をモデル化する.そして,意思決定の際に重要な二つの要求である個人選好の強さと社会的圧力の強さとの関係から,カスケード現象が生じるメカニズムを明らかにする.また,多数派とは反対の行動をとる天の邪鬼的な意思決定をするエージェントを導入し,カスケード現象が起きる条件やカスケードの大きさ等を求める.The cascades phenomenon is an important theme in the social sciences. It is the phenomenon that the people act contrary to one's own preference. It is the reason why many people make decision that imitated others behavior. It is becoming more and more important in information technology because of ranking-system on the internet or diffusion of collaborative filtering. In this research, we make the modeling sequential decision making by many agents. And we reveal mechanism that the cascades phenomena is happen from relationship strength of the social pressure and individual preference. These two things is important factor when people make decision. We obtain conditions which the cascades phenomenon is happen and the size of it by innovating agent which decision making like contrary persons.
著者
塚本 義明 生天目 章
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.12, pp.2664-2675, 1994-12-15
被引用文献数
1

ニューラルネットワークの規模の問題を解決するための方法として分散学習が考えられる、これは、大規模な問題がすでにいくつかの小さな問題に分割されており、その小さな問題について学習した結果を統合して大規模な問題を解決する試みである。また、この際に全体を掌握する管理者的存在はないものとする。本論文では、多層ネットワークの学習アルゴリズムである瞬時学習法および記憶に基づく学習を統合した構造化学習法に基づく分散学習法を提案する。大規模な問題が、すでにいくつかの小さな問題に分割されており、それらを並列処理するには並列処理された結果を統合するためのメカニズムが必要である。分散アルゴリズムが加法法性を有すれば、分散処理された情報を統合するためのメカニズムを容易に実現できる。本論文で提案する分散学習法は、一つの学習問題がいくつかに分割された状態で、それぞれ分割された学習問題に構造化学習法を並列的に適用し、それぞれの学習結果を統合することにより全体の問題を学習させる方法である。並列処理により獲得した分散ネットワークモジュールの線形結合として全体の問題のニューラルネットワークが求まることを示す。オブジェクト指向プログラミングにより分散学習シミュレーションツールを開発し、その適用例について示す。
著者
佐藤 浩 久保 正男 福本 力也 廣岡 康雄 生天目 章
出版者
社団法人人工知能学会
雑誌
人工知能学会誌 (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.974-981, 2000-11-01
参考文献数
18
被引用文献数
31
著者
小山 英朗 生天目 章
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.20, pp.19-24, 2008-03-05

ランダムに存在する目標を最も効率的に探索する方法に関しては,多くの分野で長い間研究されてきた.最近,探索空間の広さと比較してわずかにしか存在しない稀少資源や目標を探索するとき,Levy Flight に基づく探索は Random Walk に基づく探索よりも効果的であると報告されている [1].しかしながら,両モデルに基づく効率性の定量的比較や資源密度と効率的な探索の関係及び目標が移動する時の効率的な探索法などについては,まだ十分に研究されていない.本研究は,Random Walk に基づく探索と Levy Flight に基づく探索を定量的に比較する.特に,目標到達までに要するステップ数を比較し,目標密度の違いによる影響について比較する.また,目標が移動するとき,両モデルによる探索効率に変化が現われるかを実験する.その結果,希少な目標を探索するには,Random Walk 探索よりも Levy Flight 探索法の方がはるかに効率的であることを示す.What is the best strategy for efficient search of randomly located targets? This question has been studied in many fields. Recently it is reported that Levy Flight search is more efficient than Random Walk based search in sparsely target site. It has not also been argued that quantitative comparison, relation of between density and efficient search or efficiency of searching when target is moving. In this study we have comparison study of Random Walk and Levy Flight. And we compare efficiency of searching of Random Walk and Levy Flight. At first, we experimented that influence of changing percentage of target sites in number of steps until which reaches target site. Secondly, we experiment that whether the change appears in detection efficiency when the target site is moving. As a result, regardless of stationary and moving, we are able to appear that the detection efficiency of Levy Flight search far exceeds that of Random Walk search under sparsely target site.
著者
山本 聡彦 小松 孝紀 生天目 章
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1_26-1_33, 2011-01-25 (Released:2011-03-25)

近年,様々な分野において,複雑ネットワークに関する研究が進められてきた.そのような中,与えられた目的に適合する特性を持った最適なネットワークとは何か,またそれをどのように設計するかという問題は,未だ解明されていないことが多い.従来の研究は,あるルールの下でネットワークを作成し,そのネットワークの特性を調べていくものが多い.本研究では遺伝的アルゴリズムを用いて最適なネットワーク(厳密には準最適なネットワーク)を生成させる方法を提案する.最適なネットワークを生成するための評価指標としてネットワークを表現する隣接行列の最大固有値とリンク密度の2つの線形結合関数を定義し,遺伝的アルゴリズムによりネットワークを進化させる.また,進化的に生成した準最適なネットワークの構造について解析をする.
著者
佐藤 浩 久保 正男 生天目 章
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.529, pp.67-72, 2001-01-03

人工市場とは, コンピュータシミュレーションを通じて市場を理解しようという学際的研究テーマであり, 経済のグローバル化と情報技術の発展を背景とし, マルチエージェント研究者をはじめとする多くの人々の関心を引きつつある.本稿は, 平成12年8月18日から20日にかけて, 富山県インテック大山研修センターで開催された計測自動制御学会第6回創発システムシンポジウムにおいて行われた, プログラムエージェントによる先物取引コンテストPre U-Mart 2000に関する実施報告である.テクニカル分析手法を用いた株価予測エージェントから, 他人の思惑を知り多数派に寄生するエージェントといった多様なエージェントが参加し, 取引を行った.
著者
高橋 正浩 生天目 章
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.3586-3595, 1999-09-15
被引用文献数
4

本論文では 個々の主体が選好を集団全体の選好を集約したマクロ情報と自らの選好を比較し自己修正する適応型合意形成モデルを提案する. 自己の選好に忠実であることは 個人合理性を追及することと同じであるが すべてのメンバが自己の合理性を追及することによって合意形成の困難性の問題が生じる. そこで 個々のメンバが無制限に自己の選好を主張するのではなく 集団の一員としての立場から自らの選好を集団全体の動向に逐次適応させる本合意形成モデルによって 集団全体として調和的な合意形成が可能になることを示す. また 異なる適応速度を内部属性として持つ主体によって構成される集団における合意形成上の特性について明らかにする. さらに 上位の意思決定者が存在する場合や 合意形成に時間的制約が存在する場合を考え それらが合意形成に及ぼす影響について シミュレーションによって明らかにする.In this research, we introduce a model of adaptive consensus formation by changing the preference of each individual. Being faithful to his own preference and pursuing individual rationality are the same thing. But, it is difficult to get harmonious consensus formation as a group when all member of group pursue the own individual rationality. We show that it is possible to get consensus formation by adapting each individual preference to group preference. We also show the characters of the consensus formation on a group of various type of members with the different speeds of adaption. We also consider the effects of the existance of the meta agent dicision-maker and the time constraint for the consensus formation, by some simulations.
著者
佐藤 浩 久保 正男 生天目 章
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.19, pp.97-100, 2007-03-04

複雑ネットワークの研究においてはその構造に着目することが重要である。ネットワークの構造を掴むために、さまざまな指標が用いられるが、単一の指標は性質の-面しか表現できないため、同一の指標を持つネットワークであっても、構造がまったく異なる場合がある。本研究では、指標と構造の関係を明らかにすることを目的とする。与えられた指標がどれだけ達成されたかを目的関数とした遺伝的アルゴリズムを用い、最適化を通じたネットワークの生成を行う。実験により、問題空間には非対称I性がみられ、最適化の指標により解空間の構造が大きく変わること、また、同じ指標を持ちながら異なる構造のネットワークが見出されることを明らかにした。In the research of complex networks, it is important to focus on the structure of the networks. Various measures such as centrality or radius are used to analyze the networks. One measure, however, can only capture the one aspect, so two networks that have same measure sometimes show completely different structure. The purpose of this study is to figure out the relation between measurements and structures. Genetic Algorithm is used to find networks that have specific measurement value. We show that GA can find the networks that are different in view of structure, but the same in view of measurement value.