- 著者
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八田 達夫
- 巻号頁・発行日
- 2014-03
本報告は,北九州市の発展のために最も必要とされている国の規制改革を選択する事を目的としている。このため,まず,北九州の飛躍的な発展のためには,北九州空港を活性化し,北九州市を支店都市として復活させることが鍵であることを示す。その上で,北九州空港を活性化するために必要な 3 項目の国の規制改革を明らかにする。高度成長期以降,全国の中枢都市のほとんどが人口を伸ばした。しかし鉄道時代から航空時代に転換した時点で,ジェット機対応空港を持っていなかった北九州市の人口は,例外的に縮小した。それに対して,ジェット機対応空港を持つ福岡市は,中枢都市としての自然な発展を遂げた。しかし福岡空港の混雑が限度に達している。滑走路 1 本当たりの発着数は,すでに日本一である。10 年後に発着数を約 30%増大する滑走路の増設工事が予定されているが,それ以上の増設は地形的に見込めない。ところが博多駅から小倉駅を経由して 25 分で到着できるようになる北九州空港を活用することによって,福岡市は今後も伸び続けていける。一方,北九州市はこの空港の発展によって,支店都市としての機能を回復できる。北九州空港の利用者数を大きく増加させるために必要な方法は,①24 時間空港である北九州空港の夜間使用の活性化のための夜間空港使用料の引き下げ,②北九州空港・福岡市間を直結する高速バス定期便導入語バス会社間の競争促進によるバス料金の抑制,③小倉駅・北九州空根間の新幹線建設と博多駅・小倉駅間の新幹線特急料金の引き下げである。次に,この観点から,北九州空港活用のために有用な規制改革を分析した。第 1 に,北九州空港を活性化するには,夜間の空港使用料を引き下げる必要がある。これは,十分な政策的根拠があるのならば,空港法に基づく空港管理規則第 11 条による国土交通大臣の告示に基づいて引き下げることが可能である,本稿では,北九州空港の場合,夜間空港使用料を引き下げることを正当化する政策的な根拠があることを示す。第 2 に,北九州空港・福岡市間に多くの高速バス会社の参入を促すためには,福岡の各バス会社が権益を持っている福岡市のバスターミナルが,認可された使用料の下で開放される必要がある。確かに,バスターミナルは,自動車ターミナル法によって開放が義務づけられてはいるが,使用料の決定方式は自動車ターミナル事業者の届出に任されている。送電線が開放されているように,あらかじめ認可された使用料でのオープンアクセスをバス会社に義務付ける法改正が必要である。第 3 に,近い将来,博多駅と北九州空港とを直接結ぶ新幹線で利用されることになる際,博多駅・小倉駅区間の新幹線の旅客運賃を下げる必要がある。十分な根拠があれば,鉄道事業法第 23 条に基づく旅客運賃に対する国土交通大臣の改善命令によってこの区間の運賃の引き下げが可能である。博多駅・小倉駅区間の場合には,これを正当化する根拠があることを明らかにする。