- 著者
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清末 愛砂
- 出版者
- 島根大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2008
本研究を進めるために必要となるデータや資料を収集するために、2008年度にイギリスでフィールドワークを2回実施した。本フィールドワークにおいては、大英図書館やLSE(London School of Economics)の図書館における文献調査のほか、市民的自由の問題に取り組んできた人権団体や複数のムスリム団体等を訪問し、イギリス社会におけるムスリム住民(難民、移民を含む)に対する人権侵害、およびイギリス政府の立法情報に関するインタビュー調査を行った。この結果、イギリスの対テロ法によって引き起こされた様々な人権侵害がムスリム住民に集中していること、また、統計的にムスリム住人が白人に比べると警察による職務質問を受ける割合がはるかに高いこと、9.11、および7.7のロンドンにおける同時爆破事件以降のイギリス社会でイスラーム・フォビアが著しく台頭していること、イスラーム・フォビアにおけるジェンダー差別の問題等が明らかとなった。2009年度は、これらのフィールドワークによって得られたデータ、および日本国内での文献調査等から得られたデータをもとに研究課題に関する分析を行った。その分析結果を日本平和学会2009年度春季研究大会(2009年6月13日から14日)の自由論題部門で「9.11以降のイギリスの対テロ法とイスラーム・フォビアの台頭-宗教差別・レイシズム・市民的自由の観点から-」と題して報告することができた。また、討論者や参加者から受けた欧州人権条約に関する示唆深いコメントやその他の質問をその後の論文化の作業にいかすことができた。2009年度末には、同学会の大会における報告をもとにしてまとめた論文「9.11&7.7以降の英国の対テロ法の変容とイスラーム・フォビア-宗教差別とレイシズムの相乗効果(上)」(『国際公共政策研究』(大阪大学大学院国際公共政策研究科、第14巻第2号、2010年3月、17-28頁)を発行することができた。