著者
渡辺 光一 黒崎 浩行 弓山 達也
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.47-66, 2011-06-11 (Released:2017-07-18)
被引用文献数
1

100項目の宗教概念について日米の回答者に賛成か反対かを尋ねると、日米共通で信仰者のほうが非信仰者よりも賛成する共通概念が90も検出され、日米共通で生命主義的救済観が信じられているなど意外な点が多かった。教義と実際の信仰のかい離も検出された。さらに、1)人格神への信仰、2)教団宗教的規範、3)超越への働き掛け、4)大生命と魂、5)現世利益、6)感情の制御というお互いに相関する6つの共通概念群からなる日米共通の構造が検出された。それら共通概念群は、実践論的・顕教的か存在論的・密教的かという2つの独立したメタ因子からなるメタ共通構造に包摂され、有機的階層的な構造を成している。このうち、実践論的・顕教的なメタ因子のみが、信仰者の幸福度に対してプラスの効果を持つ。また、神に関する概念と幸福度の関係を調べると、人格的な神概念は幸福度にプラスの効果を、非人格(原理)的な神概念はマイナスの効果を持つ。
著者
渡辺 光一
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.3-35, 2006

宗教について、組織理念とブランド、交換を通じた価値創造など、コミュニケーションとマーケティングという視点から考察を行った。そして、布教や教団活性化など教団の実践に役立つ実学を念頭に、インターネット利用者を対象とする定量的な実証調査について、「信仰者」と「関心者」を中心とした彼らの特徴を統計的に分析した。まず、宗教へのコミットメントや判断などの宗教的志向性について分析し、またメール相手の種類、相談やアドバイス、ネットコミュニティにおける匿名性や感情効果など、布教にかかわる情報コミュニケーションについて分析した。それを踏まえ、インターネットでのマーケティング手法を考慮してネットコミュニティによる布教の可能性について考察し、その可能性を生かせない教団のインターネット利用の問題点や現状認識について述べ、それらを克服するための望ましい宗教的な情報コミュニケーションのデザインについて提案した。
著者
渡辺 光一 黒崎 浩行 弓山 達也
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.3, pp.1-4, 2010-07-24
参考文献数
5
被引用文献数
1

思想研究は数千年にわたって恣意的で属人的な方法が用いられてきた.思想の体系化は非構造的であり,またその根拠は個人的な信念に依拠していた.本研究は,信念を蓋然性により定式化することで,人文科学的な文献研究の知見を低コストに構造化し,それを社会科学的な調査データと融合して,段階的に発展させていく.本稿では,その全体像をコストパフォーマンスとホップ・ステップ・ジャンプのメタファーから説明する.これは,価値・思想研究における知の巨人たちの混沌した縄張り争いの歴史に転換を図るものである.As for thoughts research, arbitrary methods have been conducted depending on individual skills for several thousand years. In those processes, systematization of thoughts/ideas has been non-structural and leaned personal beliefs. In this research, we propose a method, for structuring literal study of human science, for integrating the structure with survey data collected in a way of social science and developing the structure spirally. In this report we will explain the method using metaphors of cost-performance and "hop, step, and jump." This is to switch over the history of chaotic struggle of intellectual giants.
著者
渡辺 光一
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.109-130, 2006-04-30 (Released:2007-08-01)
参考文献数
20

社会的影響力とは、ある主体が社会/集団全般から一般的な注目をどの程度得ているかを表わす特性であり、社会的評価やその結果としての社会的資源が配分される程度の尺度と考えることもできる。理想環境のように人間が他の全てのメンバに注意を払い判断を下すことは、現実環境では組み合わせ爆発により不可能である。そのため、現実環境では、複雑系における初期値敏感性により、本来的価値(能力)と影響力が対応しない局所均衡に陥る。すると、本来的価値に見合う影響力がないメンバが存在する(「埋もれた才能」)、本来的価値があまり高くないのに影響力を独占するメンバが存在する(「僭越」)、などの現象が生じ、社会的不公正やコミュニケーションの非効率が生じ、社会/集団全体で見ても非常に大きな損失となる。本研究では、そのような影響力などの特性の相互依存関係のモデルを構築し、理想環境においてはメンバの本来的価値(能力)の高低が影響力の高低を一意に決定すること、一方の現実環境(に近似した環境)においては「埋もれた才能」「僭越」という現象が生じることをそれぞれ確認した。その上で、そのような現実環境における問題点を解決すべく、新たなコミュニケーションの制御プロトコルのモデルを開発しその挙動を調べた。さらに、当該モデルが効率的で公正な影響力の実現に資することをシミュレーションで確認し、併せて電子掲示板によるユーザ参加の社会実験を行った。