著者
石井 研士 黒崎 浩行 川島 堅二 葛西 賢太
出版者
国学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、現在急速に進行しつつある高度情報化が、精神文化としての宗教にどのような影響を及ぼし、宗教団体がどのような対応をとったか、あるいは対応を迫られたかを調査研究することを目的としている。また、高度情報化社会と宗教との関係を考察する上で、その前史ともなるラジオ、テレビといった映像メディアと宗教との関係にも留意することとした。具体的な調査内容として、以下の項目を念頭に置いて研究調査を行った。1)音声メディア・映像メディアにおける資料収集と分析2)宗教団体のニューメディア利用の調査研究3)コンピュータ・ネットワーク上の宗教サイトおよび利用者情報の収集と主催者へのインタビュー4)コンピュータ・ネットワーク上の宗教的行為についてのインテンシヴな調査5)上記に関する面接調査6)インターネット利用の国際比較本研究が「基礎的研究」と謳っているように、この領域での研究成果の蓄積は、現象自体が新しいこともあってほとんどない。こうした中で、ラジオ放送における宗教番組の変化と現状を石井がとりまとめ、あわせて昭和28年から始まったテレビ放送における宗教番組の収集、川島による日本のウェブサイトの分析、とくにキリスト教関係のホームページの現状とその分析、および海外との比較、黒崎による宗教ウェブサイトの傾向の時系列的な分析、神社ウェブサイト主催者へのインタビュー等の調査結果は、今後の研究の基礎になるものと考えることができる。他方で、ほとんど研究蓄積のない領域だけに、研究すべき事柄が多く残ったことも確かである。とくに、テレビにおける宗教状況の把握が十分でなかったことは、現在においてもテレビの与える影響力の大きさを考えたときに、残念かことであった。今後こうした領域の研究調査を地道に継続し、成果を公開することで、現代社会と宗教に関する多くの問題点が明らかになるものと考えられる。
著者
渡辺 光一 黒崎 浩行 弓山 達也
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.47-66, 2011-06-11 (Released:2017-07-18)
被引用文献数
1

100項目の宗教概念について日米の回答者に賛成か反対かを尋ねると、日米共通で信仰者のほうが非信仰者よりも賛成する共通概念が90も検出され、日米共通で生命主義的救済観が信じられているなど意外な点が多かった。教義と実際の信仰のかい離も検出された。さらに、1)人格神への信仰、2)教団宗教的規範、3)超越への働き掛け、4)大生命と魂、5)現世利益、6)感情の制御というお互いに相関する6つの共通概念群からなる日米共通の構造が検出された。それら共通概念群は、実践論的・顕教的か存在論的・密教的かという2つの独立したメタ因子からなるメタ共通構造に包摂され、有機的階層的な構造を成している。このうち、実践論的・顕教的なメタ因子のみが、信仰者の幸福度に対してプラスの効果を持つ。また、神に関する概念と幸福度の関係を調べると、人格的な神概念は幸福度にプラスの効果を、非人格(原理)的な神概念はマイナスの効果を持つ。
著者
渡辺 光一 黒崎 浩行 弓山 達也
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.3, pp.1-4, 2010-07-24
参考文献数
5
被引用文献数
1

思想研究は数千年にわたって恣意的で属人的な方法が用いられてきた.思想の体系化は非構造的であり,またその根拠は個人的な信念に依拠していた.本研究は,信念を蓋然性により定式化することで,人文科学的な文献研究の知見を低コストに構造化し,それを社会科学的な調査データと融合して,段階的に発展させていく.本稿では,その全体像をコストパフォーマンスとホップ・ステップ・ジャンプのメタファーから説明する.これは,価値・思想研究における知の巨人たちの混沌した縄張り争いの歴史に転換を図るものである.As for thoughts research, arbitrary methods have been conducted depending on individual skills for several thousand years. In those processes, systematization of thoughts/ideas has been non-structural and leaned personal beliefs. In this research, we propose a method, for structuring literal study of human science, for integrating the structure with survey data collected in a way of social science and developing the structure spirally. In this report we will explain the method using metaphors of cost-performance and "hop, step, and jump." This is to switch over the history of chaotic struggle of intellectual giants.
著者
櫻井 義秀 土屋 博 櫻井 治男 稲場 圭信 黒崎 浩行 濱田 陽 石川 明人
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

社会貢献活動を行う宗教団体・宗教文化の特徴を比較宗教・比較社会論的視点から明らかにする調査活動を実施し、共生・思いやり・社会的互恵性・公共性の諸理念を形成することに宗教の果たす役割があることを明らかにした。その成果の一部は稲場圭信・櫻井義秀編『社会貢献する宗教』世界思想社、2009年で明らかにされ、分担・協力研究者たちの研究により、宗教と社会貢献の関連を研究する研究分野を宗教社会学に確立した。