著者
本間 はるな 齋藤 香保里 高橋 俊章
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.107-112, 2021 (Released:2021-02-24)
参考文献数
25

〔目的〕体幹への揺動刺激が身体柔軟性に及ぼす影響を男女別に検討した.〔対象と方法〕健常成人20名を対象にクロスオーバーデザインを用い,揺動刺激の介入と背臥位姿勢を保持するのみの非介入の実験を行った.揺動刺激前後で体圧,筋硬度,脊椎可動性,皮膚伸張性,長座体前屈,主観的な寝やすさを評価した.〔結果〕揺動刺激により男性では接触面積増加,体圧平均値減少,体幹最大屈曲位での胸椎後弯角減少,脊椎可動域拡大,長座体前屈距離増加,腰部筋硬度が低下した.女性では,接触面積および皮膚伸張性が増加し,体圧平均値が減少した.〔結語〕揺動刺激で男女ともに柔軟性が向上した.揺動刺激は男性では深部の軟部組織である筋や関節に対して,女性は浅部の軟部組織である皮膚に対して主に作用した.
著者
北嶋 英彦 高橋 俊章 堂下 豊史 毛海 敬
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.2, pp.239-242, 1988-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1

The palladium-catalyzed alkynylation of 4, 6-disubstituted 2-iodo-1, 3, 5-triazines [1] (substituent a, NMe2; b, Ph; c, OMe) with monosubstituted acetylenes [2] (substituent a, Ph; b, COOMe; c, CMe2OH) afforded the corresponding cross-coupling products [3] in moderate yields except for the case of [2 c]. The cross-product [3 ac] reacted with [1 a] to give bis [4, 6-bis(dimethylamino)-1, 3, 5-triazin-2-yl]acetylene.
著者
宮脇 慎平 高橋 俊章 江川 廉
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A4P3030-A4P3030, 2010

【目的】<BR> 我々が食物を取り込む時,手と口が互いに近づき,この時,頸部・体幹・股関節の運動が起こり,また食物形態,食事道具の違いにより運動様式の違いがみられる.先行研究では,摂食時の姿勢分析に関する研究は散見されるが,食物取り込み時の頸部・体幹・股関節運動を同時に分析し,また食物形態,食事道具の違いによる運動の比較をしている研究は見当たらない.そこで本研究の目的は,食物形態,食事道具の違いによる頸部・体幹・股関節運動の分析を行い,食事介助時の誘導を検討するための基礎データを得ることである.<BR><BR>【方法】<BR> 対象は,右利き手の健常男性成人10名(平均年齢21.7±0.7歳)である.測定は三次元動作解析装置(VICON370)を使用し,反射マーカーは頭頂部,両側耳介上側頭部,両側肩峰,第7頸椎棘突起,第12胸椎棘突起,第1正中仙骨稜,両上前腸骨棘,両大転子,両大腿骨外側上顆,右上腕骨外側上顆,右橈骨茎状突起,座面の四隅ABCDに貼付し,頸部及び体幹の屈伸・側屈・回旋,骨盤前後傾・側方傾斜・回旋,右股関節屈伸,右肘関節屈伸の運動角度を算出した.また,動作所要時間,最大角度を呈した時期を計測した.食物形態は海苔巻き,ヨーグルト,水の3種類とし,食事道具は割り箸,スプーン,平皿,深皿,コップを使用した.課題は,海苔巻を箸で食べる(NC),海苔巻をスプーンで食べる(NS),ヨーグルトをスプーンで食べる(YS),水をスプーンで飲む(WS),水をコップで飲む(WG)の5種類とした.統計処理は,反復測定による分散分析を行い,各課題間の差の検定は多重比較検定(Tukey法)を行った.各項目での食物取り込み時角度と最大角度の差の検定は対応のあるt検定,最大角度の時期の偏りはχ<SUP>2</SUP>適合度検定を使用した.有意水準は5%とした.<BR><BR>【説明と同意】<BR> 参加者には紙面および口頭にて研究の目的,方法,参加・協力の拒否権,もたらされる利益と不利益,個人情報の保護,研究成果の公表について十分説明を行い,同意書を得た.<BR><BR>【結果】<BR> 食物取り込み時角度では,頸部屈曲はWS(22.4±7.5:単位°)が,NC,YS,WGより有意に大きかった(p<0.05).体幹屈曲はWS(18.9±7.2)がNC,NS,WGより有意に大きく,YS(14.6±7.0)が,NC,WGより有意に大きかった.また,NS(13.5±5.5)がWGより有意に大きかった(p<0.05).骨盤前傾はWG(4.1±6.3)が,WS,YSより有意に小さかった(p<0.05).右股関節屈曲はWS(8.9±3.3)が,NC,NS,WGより有意に大きかった(p<0.05).また,YS(8.6±4.0)が,NS,WGより有意に大きかった(p<0.05).食物取り込み時角度と最大角度の比較は,頸部・体幹屈曲,骨盤前傾,股関節屈曲の多くの課題間で有意に差があった(p<0.05).最大角度の時期では,頸部屈曲の各課題が他の部位よりも「前」の割合が高く,体幹屈曲,骨盤前傾,股関節屈曲では「同じおよび後」の割合が高かった.<BR><BR>【考察】<BR> NCでは,固形物は箸で挟むと口に近づけて取り込めるため,他課題に比べ各関節の屈曲角度が小さかったと考えられた.NSでは,スプーン上方から食物を覆うようにして取り込むため,頸部屈曲が大きく,体幹屈曲,骨盤前傾,股関節屈曲角度が小さかったと考えられた.YSでは,半固形物はこぼれる可能性は高いが,スプーンに留められるため,体幹屈曲,骨盤前傾,股関節屈曲角度がWSよりも小さい.また取り込み時,口腔内にスプーンごと入れる必要があり,頸部屈曲が小さくなったと考えられた.WSでは,液体は半固形物に比べてこぼれやすく,スプーンの位置を固定しながら全身を屈曲させて食物に近づくため,他課題よりも,頸部・体幹屈曲,骨盤前傾,股関節屈曲角度が大きいと考えられた.WGでは,ほぼ上肢の運動のみでコップを口に近づける.頸部屈曲位での飲水は困難であるため,頸部・体幹屈曲,骨盤前傾,股関節屈曲角度が小さかったと考えられた.また,頸部屈曲において全課題で最大角度が食物取り込み前に呈する割合が高かったことから,頸部が先行して食物に近づくことが多いと考えられた.以上のことから,食物形態,食事道具の違いによって食事介助時の誘導を考慮する必要があると考えられ,今後,臨床における食事介助の誘導方法についてさらに検討を行いたい.<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 食事は生きるために重要なことであり,楽に摂食できることが望まれる.本研究では自立的な食事動作の分析を行ったが,この運動が本来食物の取り込みやすさにつながる.本研究の運動分析を,実際の食事介助の誘導に応用することにより,患者様に快適な摂食支援を提供できると考える.
著者
赤塚 清矢 神先 秀人 内田 勝雄 永瀬 外希子 高橋 俊章 佐藤 寿晃 千葉 登 後藤 順子 藤井 浩美 熊谷 純 八木 忍 日下部 明
出版者
山形県立保健医療大学
雑誌
山形保健医療研究 : 山形県立保健医療大学紀要 (ISSN:1343876X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.29-34, 2013-03

生涯を通した健康づくりと総合的な介護予防の推進は,やまがた長寿安心プランの重点課題の一つとして掲げられており,急速な高齢化に向けた対策が急務である.本研究の目的は,我々が開発した介護予防体操の負荷の大きさと安全性を検討することである.日常生活が自立した地域在住者12 名を対象に,花の山形!しゃんしゃん体操(Ver.Ⅰ),新たに開発した介護予防体操(Ver.Ⅱ),対照としてNHKラジオ体操第一(ラジオ体操)を実施し,体操中の酸素摂取量を計測して比較した.その結果,Ver.Ⅰと比較しVer.Ⅱが、酸素摂取量,二酸化炭素排出量,代謝当量が大きく,Ver.ⅡはVer.Ⅰより負荷量が大きかった.呼吸商,呼吸数,心拍数,自覚的疲労度は3 つの体操において同程度であった.Ver.Ⅱは,心拍数や疲労感を上げずに負荷量を増加させることができ,高齢者や運動習慣のない者にとって安全で効果的な介護予防活動の手段であることが考えられた. キーワード:介護予防体操,酸素摂取量
著者
永瀬 外希子 伊橋 光二 井上 京子 神先 秀人 三和 真人 真壁 寿 高橋 俊章 鈴木 克彦 南澤 忠儀 赤塚 清矢
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.G0428, 2008

【目的】理学療法教育において客観的臨床能力試験(OSCE)の中に取り入れた報告は散見されるが、多くは模擬患者として学生を用いている。今回、地域住民による模擬患者(Simulated Patient以下SPと略)の養成に取り組んでいる本学看護学科(山形SP研究会)の協力を得、コミュミケーションスキルの習得を目的とした医療面接授業を実施した。本研究は、効果的な教育方法を検討するために、授業場面を再構成し考察することを目的とする。 <BR>【対象と方法】面接授業は、本学理学療法学科3学年21名を対象とし、臨床実習開始2週間前に行った。山形SP研究会に面接授業の進行と2名のSPを依頼し、膝の前十字靭帯損傷患者(症例A)、脊髄損傷患者(症例B)のシナリオを作成した。事前打合せや試行面接を行い、シナリオを修正しながらより実際の症例に近い想定を試みた。学生に対しては、授業の1週間前に面接の目的、対象症例の疾患名、授業の進行方法についてオリエンテーションを行った。面接授業実施30分前に詳しい患者情報を学生に提示し、4つに分けたグループ内で面接方法戦略を討論する機会を設けた。症例A・BのSPに対し、各グループから選出された学生が代表で10分間の面接を行い、それ以外の学生は観察した。それぞれの面接終了後に、面接した学生の感想を聞き、その面接方法に関して各グループで20分間の討論を行った。この面接からグループ討論までの過程を各症例につき交互に2回ずつ合計4回行い、全体討論としてグループごとに討論内容を発表し合った。最後に、SPおよび指導教員によるフィードバックを行った。<BR>【結果と考察】今回の医療面接の特徴は、第一点が情報収集を目的とするのではなく、受容的、共感的な基本的態度の習得を目的としたこと、第二点はトレーニングを受けている初対面のSPを対象としたこと、第三点は代表者による面接後グループごとに討論する時間を設定したことである。理学療法場面における医療面接では、医学的情報収集が中心となる傾向にある。今回の学習目的は、初対面の患者の話を拝聴し信頼関係を築くこととした。これにより、SPの訴えや思いなどを丁寧に聞いている学生の姿勢が認められた。また、初対面のSPとの面接を導入したことで、より臨場感あふれた状況の中で、学生が適度な緊張感を持って対応している場面が認められた。一巡目の面接では、SPに対して一方的に質問する場面が多くみられたが、二巡目ではSPが答えた内容に対して会話を展開させていく場面が際立った。これは、初回の面接終了後の討論により、面接者自身の反省や第三者の視点から得られた新たな方策を、次の面接に生かすことができたためと推測される。理学療法教育にSP参加型医療面接を導入することは、コミュニケーションスキルの向上を図るうえで有効な教育方法であると考えられる。 <BR>
著者
須藤 沙弥香 高橋 俊章 神先 秀人 遠藤 優喜子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A1037, 2008 (Released:2008-05-13)

【目的】「食べる」という動作は、栄養を摂取し生きていくために必要な動作であり、摂食姿勢は円滑な咀嚼・嚥下を行う上で重要な因子である。嚥下障害がある場合に、ギャッジアップ30度ないし45度程度での食事摂取を推奨するとの報告があり、座位が不安定な場合などにも、ギャッジアップの状態で食事摂取を行うことがある。しかし、通常われわれは頭部や体幹を自由な状態にして食事をしており、後方へ傾斜した状態は頭部や体幹の制限をするため必ずしも自然な姿勢とは言いがたい。そこで本研究の目的は、ギャッジアップ45度、65度の肢位並びに端座位の肢位の違いが咀嚼・嚥下に及ぼす影響を明らかにすることである。【方法】神経学的疾患ならびに顎形態異常を有さないベッド上長座位が可能な健常成人男性5名(平均年齢22.4歳±0.5)及び女性5名(平均年齢22歳±1.2)を対象とした。なお、対象者全員に文書にて十分な説明を行い、同意を得た。ギャッジアップ45度(枕使用・不使用)、65度(枕使用・不使用)、端座位の5つの肢位で、食物テスト、水飲みテスト、反復唾液嚥下テスト(以下RSST) の3つのテストを行った。食物テストはこんにゃくゼリー16gを完食するまでの咀嚼回数・嚥下回数・時間を測定した。水飲みテストは硬度20の冷水30mlの嚥下回数・飲み終えるまでの時間を測定した。また、これらのテストの間、表面筋電計を用いて舌骨上筋群、咬筋、側頭筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋の筋活動を測定した。筋活動の比較では各テストにおいて、テストの開始から終了までの積分値を用いた。さらに主観的評価として、各テストにおいて最も楽な姿勢を問診にて調査した。統計処理は、多重比較検定を用い、有意水準は5%とした。【結果】筋活動量の比較においては、食物テストとRSSTを行った際の胸鎖乳突筋の活動量が、端座位と比較してギャッジアップ45度枕使用時において有意な増加が認められた。また、RSSTを行った際の僧帽筋の活動量は、端座位と比較して他の全ての姿勢において有意な増加が認められた。主観的評価においては、端座位がゼリーの咀嚼・嚥下、水の嚥下、唾液の嚥下いずれにおいても最も楽な姿勢であった。端座位の次に楽な姿勢は、ゼリーの咀嚼・嚥下、水の嚥下においてギャッジアップ65度枕使用であった。またゼリーの咀嚼回数、水の嚥下回数では明らかな差は認められなかった。【考察】結果より、端座位と比較して、ギャッジアップ45度、65度どちらも胸鎖乳突筋及び僧帽筋の筋活動量が増加した。これらは主観的評価から得られた、端座位がゼリーの咀嚼・嚥下、水の嚥下、唾液の嚥下いずれにおいても最も楽な姿勢であったという結果と一致しており、本研究の対象である健常成人においてはギャッジアップベッドの食事姿勢が咀嚼・嚥下に不利な影響を及ぼしている可能性が示唆された。
著者
加藤 沙織 渡部 美穂 武田 輝美 高橋 俊章
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0888, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】リーチングは,発達過程の様々な場面で頻繁に行われ,姿勢制御の能力を向上させ,奥行き知覚の発達などに寄与する。しかし,脳性麻痺痙直型両麻痺児はスムーズな重心移動が困難であり,代償運動や特異的な運動パターンを用いることが多い。本研究の目的は,痙直型両麻痺児者のリーチング動作時の各身体部位の運動角度と移動距離および重心移動を定量化し代償運動を明らかにすること,リーチング促通の介入ポイントを検討することである。【方法】脳性麻痺痙直型両麻痺児者(年齢15.6±6.3歳,両麻痺群)7名,健常成人(対照群)8名を対象に座位前方へ利き手側のリーチングを行った。両麻痺群は自力,他動的骨盤前傾操作,体幹伸展操作の3条件,対照群は自力の1条件で行った。ハイブリッド高速度カメラを使用して,頭部,C7,Th7,S1,ASIS,大転子,外側裂隙,肩峰,尺骨茎状突起の移動距離・速度,頸部・体幹・股関節の運動角度を算出した。また,重心動揺計を用いて軌跡長・単位軌跡長を計測した。統計処理は,3条件のパラメータの比較には一元配置分散分析及びTuker法,両麻痺群と対照群の比較は対応のないt検定,尺骨茎状突起と各身体部位の移動距離との関係をPearsonの相関係数を用いて検討した。統計ソフトはSPSSver.22を用い,有意水準は5%とした。【結果】自力リーチングにおいて,両麻痺群は対照群より,移動距離は頭部,C7及び尺骨茎状突起が有意に長く,ASISは有意に短かい(p<0.05)。また,股関節屈曲角度は有意に小さく,上・下部体幹屈曲角度は有意に大きかった(p<0.05)。また対照群は尺骨茎状突起と外側裂隙,頭部,Th7,C7の移動距離に高い相関(それぞれr=.51,r=.64,r=.69,r=.76,p<0.01)があり,両麻痺群は頭部にのみ高い相関があった(r=.78,p<0.05)。骨盤操作の場合,体幹操作より各部位の速度の増加,軌跡長や単位軌跡長が増加し,体幹伸展は小さい傾向があった。また,尺骨茎状突起と頭部,Th7,C7の移動距離に高い相関(それぞれr=.76,r=.84,r=.87,p<0.05)があった。体幹操作の場合,骨盤操作より頸部伸展角度及び上部体幹屈曲角度は減少し,軌跡長は有意に小さかった(p<0.05)。尺骨茎状突起とASIS,頭部,S1,Th7,C7の移動距離に高い相関(それぞれr=.84,r=.84,r=.85,p<0.05。r=.91,r=.94,p<0.01)があった。【結論】下部体幹や骨盤周囲の筋緊張が低下している両麻痺児のリーチングの代償運動は,骨盤の運動性低下のため,肩甲帯や上肢を過剰に前方に移動し,目標物を目視するために頸部は過剰に伸展する傾向がある。よりスムーズな重心移動や遠い場所へのリーチングを促通するための理学療法ポイントは,リーチングと骨盤運動を連動させるための体幹操作が有効であり,少ない重心移動でリーチングが可能になることがわかった。
著者
永瀬 外希子 伊橋 光二 井上 京子 神先 秀人 三和 真人 真壁 寿 高橋 俊章 鈴木 克彦 南澤 忠儀 赤塚 清矢
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.G3P1572, 2009

【はじめに】我々は第43回日本理学療法学術大会において、地域住民による模擬患者(Simulated Patient以下SPと略)を導入した医療面接の演習授業の紹介を行った.今回、授業後に行った記述式アンケートを通して、SP参加型授業による教育効果を検討したので報告する.<BR>【対象】対象は本学理学療法学科3学年21名で、本研究の趣旨と目的を説明し、研究への参加に対する同意を得た.<BR>【方法】医療面接の演習目的はコミュニケーションスキルの習得とした.演習方法は2症例のシナリオを作成し、2名のSPに依頼した.学生には1週間前に面接の目的と進め方、症例の疾患名を提示した.さらに面接30分前に症例の詳しい情報を提示した.グループを4つに分け、面接方略の討論後、各グループの代表者1名がSPと面接を行い、それ以外の学生は観察した.1回の面接時間は10分以内とし、面接後、学生間のグループ討議、SPならびに教員によるフィードバックを行った.演習終了後、授業に参加した学生を対象に、授業を通して学んだことや感じたことについて自由記載による記述式アンケート調査を行った.得られた記述内容を単文化してデータとし、内容分析を行った.得られた127枚のカードから3名の教官が学生の学びに関するカードを抽出し、同じ内容を示すカードを整理しサブカテゴリー化した.その後さらに関連のあるカードを整理してカテゴリー化し、それぞれの関係性について検討した.<BR>【結果と考察】「学び」に関与すると判断されたカードは40枚であった.それらを分析した結果、「SPと自分との乖離」、「自分自身の振り返り」、「基本的態度の獲得」、「対応技術の習得」の4カテゴリーが抽出された.「SPと自分との乖離」は、「表出されない相手の思い」、「思いを知ることの難しさ」のサブカテゴリーで構成されていた.また「自分自身の振り返り」は「基本的なコミュニケーションスキルの知識不足」、「疾患についての知識不足」、「話を発展させる技術不足」、「質問攻めの一方的なコミュニケーション」、「基本的態度の獲得」は「傾聴的な態度」、「共感的態度」、「相手を分かりたいという思い」、「対応技術の習得」は「患者をみる視点・観点」、「目をみて話すことの大切さ」、「相手に合わせた関わり方」のサブカテゴリーから構成された.これらの結果より、SPからのフィードバックを通して、SPと自分の感じ方や捉え方の違いや、言葉では表出されない思いがあることに気付き、それらを理解することの難しさを実感するとともに、学生自身の不足している点を認識したことがわかった.そして、相手と信頼関係を築くためには、相手を思い、傾聴し、共感するなどの基本的態度の大切さに加え、目をみて話すことや相手に合わせた関わり方などの対応技法の習得も必要であることを学んでいた.