著者
満園 良一 勝田 茂 金尾 洋治 田渕 健一 永井 純
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.182-191, 1986-08-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
35
被引用文献数
1

本研究は, 中・長距離ランナー23名 (年齢19~25歳) を対象として, 外側広筋からニードル・バイオプシー法により筋組織を採取し, 骨格筋線維の諸特性を明らかにすること, およびこれら諸特性と, トレッドミル走行により測定された最大, 最大下運動時の有酸素的作業能との関係について検討した.結果は, 以下のように要約される.1) 外側広筋におけるST線維の比率は, %STが61.3%, %area STが63.4%の平均値であり, ST線維寄りの傾向にあった.また, ST・FT線維の平均横断面積は3, 000~13, 000μm2の範囲にあり, ST線維の方がFT線維よりも大きい傾向にあった.2) 外側広筋におけるCapillary supplyは, CDが279±51/mm2, C/F ratioが1.62±0.15, CC (/ST) が5.7±0.9, CC (/FT) が4.5±0.7であり, CCについてはST線維の周りの毛細血管数がFT線維のそれより有意に多かった (p<0.01) .3) 外側広筋におけるSDH活性は, 2.98~12.35μmoles/g/minの範囲にあり, %STおよびCC (/ST) との間にそれぞれr=0.480 (p<0.05) , r=0.640 (p<0.01) の有意な相関関係が認められた.4) トレッドミル走行により測定した有酸素的作業能は, VO2maxが68.5±7.3ml/kg/min (4, 066±329ml/min) , VO2@ATが45.9±5.1ml/kg/min (2, 756±313ml/min) であった.この有酸素的作業能と骨格筋線維の諸特性との関係については, VO2max, VO2@AT (ml/min) と%STとの間にr=0.583, r=0.537 (いずれもp<0.01) , VO2max, VO2@AT (ml/kg/min) とCC (/ST) との間にr=0.534, r=0.430 (いずれもp<0.05) , さらにVO2max, VO2@AT (ml/kg/min) とSDH活性との間にr=0.612 (p<0.01) , r=0.450 (p<0.05) の相関関係がそれぞれ認められた.以上の結果は, 中・長距離ランナーにおいて, ST線維や毛細血管などの構造的特性がSDH活性などの機能的特性を規定する一要因であること, および骨格筋線維の構造的・機能的特性が有酸素的作業能に大きく影響する可能性を示唆している.
著者
大垣 哲朗 小室 史恵 宅島 章 吉水 浩 満園 良一
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.99-106, 1990-03-28
被引用文献数
3

中高年婦人を対象とした健康づくり運動教室に, 4年間継続して参加してきた主婦8名(継続群 : 49±6歳)と1年間参加しその後中断した主婦9名(中断群 : 48±8歳)について, この4年間の血清脂質の動態を検討した。健康づくり運動教室は, エアロビック・ダンスを主体とし, 一回あたり90分(主運動は35〜45分間)の割合で週2回実施してきた。その結果担, 以下のとおりである。1.総コレステロールは, 運動継続群・中断群ともに年月の経過とともに上昇傾向を示し, 運動教室巨開始から2年経過した時点以降は両群ともに有意な上昇であった(p<0.05〜P<0.01)。2.HDLコレステロールは, 運動継続群・中断群ともに年月の経過とともに減少傾向を示し, 運動開始から3年後以降に有意な低下であった(p<0・.05)。また, HDLと総コレステロールの比(HDL/T-ch)も, 両群ともに年月の経過とともに減少傾向を示し運動開始から2年後以降は有意な低下であった(p<0.05〜P<0.01)。3.トリグリセリドは, 両群とも大きな変動が認められなかった。総脂質は, 運動開始から4年後に有意な増加であった(p<0.05)。4.総コレステロール, HDLコレステロール, HDL/総コレステロール, トリグリセリドおよび総脂質のどの項目においても, またどの測定時点においても, 運動継続群と中断群で有意な差異は認められなかった。5.これらの結果は, 運動が血清脂質にマイナスの効果をもたらした, ということを示したものではないくそれは, 本健康づくり運動教室の血清脂質に及ぼす影響が顕著なものではなかったこと, 閉経期前後の中高年婦人の場合, 加齢あるいは閉経にともなうホルモンバランスなどの影響が大きいこと, を示すものであると考えられた。6.したがって, 若い被験者や短期間のトレーニング実験の結果を, そのまま中高年婦人や長期間の健康づくり運動教室の効果まで拡大解釈すると, 過大評価する可能性があり, 慎重な対応が必要であると言える。