著者
澁川 幸加
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.44079, (Released:2020-11-19)
参考文献数
63

本稿の目的は,ブレンド型授業との比較・従来授業における予習との比較を通して,反転授業独自の特徴と定義を検討することである.検討の結果,反転授業は対面授業時の学習活動の質を向上したり新たな学習活動を取り入れたりするために授業外学習の時間の使い方を変えることに重きを置いているが,ブレンド型授業は対面学習と個別学習の組み合わせとテクノロジーの使用に重きを置いているという相違を明らかにした.また,従来授業における予習とは異なり,反転授業における事前学習には教師による学習内容の解説と丹念な設計という要素が含まれることを明らかにした.さらに反転授業は事前学習と対面授業の間に順序性,主と主の関係,不可分性があることが独自の特徴であると述べた.最後に,反転授業では事前学習と対面授業を連関させた授業設計をする必要性と,反転授業を契機に「対面」の価値を再考する議論の必要性を示した.
著者
澁川 幸加
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.3, pp.80-87, 2021-10-29 (Released:2021-10-29)

本稿では,高校と大学における遠隔授業や「ハイブリッド化」の制度上の特徴と相違を整理した.具体的には,①遠隔授業の制度上の相違を整理した結果,大学は教室外の自宅等から受講できる同期・非同期双方向型の遠隔授業が,高校は生徒が教室で受講する同期双方向型の遠隔授業が実施できること,②ハイブリッド化の相違を卒業単位・一単位・活動レベルで検討した結果,高校では一単位レベルの方法が限定されることや,活動レベルに対応するハイフレックス型が原則実施できないことなどを示した.
著者
澁川 幸加
出版者
京都大学高等教育研究開発推進センター
雑誌
京都大学高等教育研究 = Kyoto University Researches in Higher Education (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.25-36, 2020-12-01

本稿の目的は、コロナ禍以降の単位制度における遠隔授業をめぐる論点を整理し、その論点に一定の応答をすることである。具体的には、遠隔授業が大学設置基準に制度化された2000 年代初頭以降、新たに登場したブレンド型授業やハイフレックス型授業によって、遠隔授業と面接授業との区別が困難になっているという課題などを指摘した。これら課題への応答ではミネルヴァ大学を事例として取り上げ、コロナ禍以降の単位制度において、(1)授業形態を面接授業が導入される割合により分類し、かつ履修状況を一元管理するシステムを導入することで、現行の遠隔授業と面接授業の区別を継続使用する案、(2)現行の区別に「ブレンド型授業」など新たな区別を加える案、(3)現行の遠隔授業と面接授業という区別を廃止し、時間の同期性のみに基づく新たな区別を設定し、単位制度を運用する案を述べた。
著者
長沼 祥太郎 杉山 芳生 澁川 幸加 浅川 裕子 松下 佳代
出版者
京都大学高等教育研究開発推進センター
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
no.25, pp.13-24, 2019

本研究の目的は、学習者自身によるパフォーマンス評価の評価結果は妥当な評価に近づきうるかどうかを明らかにすることである。本研究ではまず、「市民的オンライン推論能力」を素材として、パフォーマンス課題とルーブリックを開発した。先行研究を参考に、回答を客観的に判断可能な箇所を課題に組み込み、ルーブリックとの対応関係を明確化して採点しやすさを追究した。次に、ある私立大学の学生90名がパフォーマンス課題に取り組み、ルーブリックを用いて自己評価・相互評価を行った。分析では、これらの学生の自己・相互評価の結果を課題作成者による評価結果と比較し、それらの一致度(一致率・相関係数)を算出した。その結果、いずれも高い一致度を示した。本研究は、学習者自身の自己評価や相互評価は、評価方法や対象とする能力によっては、より専門的な鑑識眼を持った採点者と大きな齟齬なく採点できることを示した。このことにより、パフォーマンス評価の実行可能性を高める上で、学習者自身の採点結果を使用できる可能性が示唆された。
著者
澁川 幸加 田口 真奈 西岡 貞一
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-19, 2019 (Released:2019-09-30)
参考文献数
29

本研究の目的は,反転授業の事前学習時に既有知識と新しい学習内容を整理し,関連づけるワークシートへ取り組むことが,対面授業時の学びへどのような影響を及ぼすかを深い学習アプローチ得点の変化と対面授業時の発話内容の差異をもとに明らかにすることである。そのために,事前学習時に講義映像の視聴とノートテイクのみ行うワークシート無し群と,この事前学習に加えてワークシートへ取り組むワークシート有り群を設定し,大学生18名を対象に実験を行った。その結果,ワークシート有り群では対面授業後に深い学習アプローチ得点が向上した。また,ワークシート有り群では事前学習時に解説されたキーワードの発言数が顕著に多くなることや,学んだ知識を多様に活用した議論を展開したことが明らかになった。本研究は,反転授業の事前学習時に既有知識と新しい学習内容を整理し,関連づけるワークシートに取り組むことが,対面授業時に学んだ知識を多様に活用して議論を行うことを促進し,その結果,深い学習を促進させることを示唆した。