著者
田口 真奈 後藤 崇志 毛利 隆夫
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.255-269, 2019-01-20 (Released:2019-02-02)
参考文献数
22

本研究では,京都大学において我が国で初めてグローバルMOOC を全面的に用いて反転授業を行った実践を2年間にわたって調査した.教員へのインタビュー調査と参与観察により,日本人学生を対象として実践された反転授業の授業デザインの特徴を明らかにした.さらに学習者へのインタビュー調査に基づく定性的手法による仮説生成と,MOOC の受講データと質問紙調査を組み合わせた定量的手法による仮説検証により,グローバルMOOC を活用した反転授業に学生がどのように取り組んだかを明らかにした.その結果,授業者が意図しなければ,学生は自発的には掲示板を利用しないこと,英語への抵抗感は反転授業やMOOC の成績と関連しないこと,講義ビデオ視聴や,課題への取り組みについては学生の個人差があることが明らかとなった.反転授業の成績との関連から「わかっているから内容をスキップする」というような視聴態度の学生は,そういった態度を持たない学生に比べて成績が低いという傾向が見られた.
著者
中村 晃 神藤 貴昭 田口 真奈 西森 年寿 中原 淳
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.491-500, 2007-12-30
被引用文献数
3

本研究では,大学教員初任者がもつ教育に対する不安について検討し,さらにこのような不安と同時に周囲からのサポートについても考慮し,これらがどのように仕事に対する満足感と関係するかを検討することを目的とした。そのため,まず教育不安尺度を作成し,次に教育不安が周囲からのサポート,および職務満足感とどのような関係にあるかを質問紙により検討した。その結果,教育不安尺度では因子分析により「教育方法に関する不安」「学生に関する不安」「教育システムに関する不安」の3因子が見出された。また教育不安と職場におけるサポート,および職務内容満足感との関係を検討した結果,教育に関する不安が高い場合,先輩教員のサポートが満足感を上げる要因になること,および教育システムに関する不安が高い場合,同世代教員によるサポートが少ないと満足感が低くなることが示唆された。これらのことから,特に不安の高い教員に対しては,職場のサポートが仕事の満足感を上げるうえで重要であると考えられる。
著者
梁 琳娟 田口 真奈
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S42093, (Released:2018-10-12)
参考文献数
7

近年,中国ではICTを活用した日本語教育が盛んになっている.中でも「沪江(Hujiang,フージャン)」(https://www.hujiang.com/)は,2015年時点で,登録者数8000万人を突破し,有料サービスの利用者数も300万人を超えるなど,現在,中国におけるもっとも大規模な語学教育プラットフォームであるといえる.しかし,本プラットフォームがどのような教授機能を有するかなど,日本語教育環境としての本プラットフォームについて明らかにされたものはほとんどみられない.そのため,本研究では文献調査ならびにユーザーインタビューによりその教授機能を明らかにするとともに,沪江のオンライン日本語教育のプラットフォームとしての可能性について論じた.
著者
大山 牧子 田口 真奈
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.129-143, 2013
被引用文献数
3

本研究では,大学のアクティブ・ラーニング型のコースにおいて教員が自らのコースの中で,グループ学習をデザインするための手がかりとなる枠組みをグループ学習の類型化とプロセス分析を通して提示することを目的とする.まず,大学における32のグループ学習実践事例を「事前作業」の有無と「事後作業」の在り方に着目して整理したところ(A)交流型,(B)意見獲得型,(C)課題解決型,(D)主張交換型,(E)理解深化型,(F)集約型という6類型が抽出された.さらに本類型が学生の学習プロセスに与える影響を検討した.具体的には(C)課題解決型と(F)集約型に関して,異なるグループ学習課題を遂行した同一グループを対象に,1コースの授業観察を行い,学生の学習プロセスを分析した.その結果,グループ学習の「事前作業」の有無は学生の既有知識,「事後作業」の在り方はコースの学習能力目標の設定と関連することが明らかになった.
著者
後藤 崇志 田口 真奈
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.17-23, 2018 (Released:2018-07-02)

近年、インターネット上で学びを進めることが可能な大規模公開オンライン講義(MOOC)と呼ばれる形態の講義が広まっている。本研究では受講者の社会経済的背景と内発的動機づけ・外発的動機づけの高さとの関連を検討した。研究1では1つのコースの受講者1,633名から得られた質問紙データを分析し、国民1人あたりの国内総生産(GDP)が低い国からの受講者は外発的動機づけが高い傾向にあることが示された。研究2では、研究1で扱ったコースを含めた7つのコースのデータについてメタ分析的手法を用いて検討を行った。その結果、国民1人あたりの国内総生産(GDP)が低い国からの受講者は内発的動機づけが低く、外発的動機づけが高い傾向にあることが示された。また、ジニ係数が高く、経済格差の大きい国からの受講者は外発的動機づけが高い傾向にあることも示された。以上より、社会経済的にあまり富んでいない国からの受講者は、MOOCを通じてキャリアを向上させようとするような外発的動機づけが高い傾向にあることが示された。これらの結果を踏まえ、MOOCに期待される役割のひとつである、教育機会の格差是正の実現可能性について論じる。
著者
稲葉 利江子 高比良 美詠子 田口 真奈 辻 靖彦
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.45085, (Released:2022-01-12)
参考文献数
16

2020年度新型コロナウィルス感染拡大防止のため,大学教員は否応なくオンライン授業に取り組むことになった.オンライン授業において授業効力感を得られた場合,多くの授業が対面授業に戻った後も,部分的にオンライン授業やICTツールを継続的に利用していく可能性がある.そこで,本研究では,大学教員のオンライン授業における授業効力感に着目し,「ソーシャルサポート」,「学生の受講態度」,「授業内のICT利用量」の3要因からの効果を明らかにすることを目的とした.具体的には,2020年7月〜8月に大学教員向けに実施したアンケート調査を基に,オンライン授業における授業効力感が,「指導方略」,「学生の状況把握」,「学生の活動促進」の3因子からなることを明らかにした.その上で,「ソーシャルサポート」,「学生の受講態度」,「授業内のICT利用量」の影響を検証するため,階層的重回帰分析を行った.その結果,講義,演習・実習,ゼミ・セミナーという授業形式に依らず,「学生の受講態度」が教員のオンライン授業における授業効力感の向上に全般的に影響を及ぼすことが明らかとなった.
著者
中村 晃 神藤 貴昭 田口 真奈 西森 年寿 中原 淳
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.491-500, 2007-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本研究では, 大学教員初任者がもつ教育に対する不安について検討し, さらにこのような不安と同時に周囲からのサポートについても考慮し, これらがどのように仕事に対する満足感と関係するかを検討することを目的とした。そのため, まず教育不安尺度を作成し, 次に教育不安が周囲からのサポート, および職務満足感とどのような関係にあるかを質問紙により検討した。その結果, 教育不安尺度では因子分析により「教育方法に関する不安」「学生に関する不安」「教育システムに関する不安」の3因子が見出された。また教育不安と職場におけるサポート, および職務内容満足感との関係を検討した結果, 教育に関する不安が高い場合, 先輩教員のサポートが満足感を上げる要因になること, および教育システムに関する不安が高い場合, 同世代教員によるサポートが少ないと満足感が低くなることが示唆された。これらのことから, 特に不安の高い教員に対しては, 職場のサポートが仕事の満足感を上げるうえで重要であると考えられる。
著者
田口 真奈 松下 佳代 半澤 礼之
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.269-277, 2011-12-20 (Released:2016-08-08)
参考文献数
8

2009年度から開始された京都大学文学研究科プレFDプロジェクトのために,ENGESTROM(1994)の「教授の計画と分析のためのフォーム」を改変し,個別作業で利用可能な,教授のデザインとリフレクションのためのワークシートを開発した.授業実施後の研修会で運用した結果,当初想定した本ワークシートの特徴((1)〜(3))のうち,(1)学生の学習の観点から教授をリフレクションし,個々の教授機能をとらえなおすこと,(2)「一斉講義形式」の授業を相対化し,他に多様な選択肢が存在することを理解すること,にとって有効であるとの結論を得た.しかしながら,(1)の今後の教授デザインを検討すること,(2)の多様な選択肢から根拠をもって選択すること,(3)授業を学習サイクルを実現する一連の教授プロセスとしてとらえることには至らず,より体系的なプログラムの開発とコーディネーター教員を巻き込む組織化が課題として残った.
著者
田口 真奈 後藤 崇志 毛利 隆夫 飯吉 透
出版者
京都大学高等教育研究開発推進センター
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.109-118, 2017-12-01

京都大学は2014年よりKyotoUxとして、MOOCの提供を行っている。KyotoUxの研究チームでは、MOOCで得られた行動ログに加えて、質問紙調査を設計・実施して得られた回答を分析し、MOOCの質の向上に役立てるために講義を制作するチームやコース提供者に向けたフィードバックを行っている。本論文では、質問項目の設計プロセスやフィードバックのためのデータの可視化など、KyotoUxのデータ分析の実践について報告するとともに、今後、大学においてMOOCなどを通した教育実践を推進していくうえでの課題について論じた。
著者
重田 勝介 中澤 明子 田口 真奈 松河 秀哉
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、高等教育初任者のキャリア形成を促し不安感を緩和するハイブリッド型対話支援システムを開発し評価するものである。そのために、オンラインで教員が普段の研究・教育活動を共有し語り合う教員用ソーシャル・ポートフォリオシステムを開発した。さらに、大学院生がプレFDの一環として反転授業を実施する知識や技能を身につけ、将来教員となるにあたってのスキル育成や不安感の低減を狙う研修プログラムを開発し実施した。評価の結果、参加者は教材内容に関する知識や実習における評価方法のほか、教材と授業双方に渡って学習目標の一貫性を保つことの重要性と難しさについて学んだことが明らかとなった。
著者
香西 佳美 田口 真奈
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.449-460, 2018-03-01 (Released:2018-03-16)
参考文献数
28
被引用文献数
2

本研究は,大学教員の授業力量のうち重要な要素のひとつであるTPACK に焦点をあて,MOOCでの授業実践の経験を通じて大学教員がどのようにTPACK を形成しているのかを明らかにすることを目的とする.具体的には,MOOC での授業実践を経験した大学教員に対するインタビューにより,大学教員の授業力量がどのように変化したのかをTPACK フレームワークを用いて検討した.その結果,単一要素の知識ではなく複合的な知識を形成していることが明らかになった.これは,教員と専門家スタッフの双方が主体的な実践者として関与することで,互いに学び合う関係が構築されていたというMOOC 実践の特徴によるものであることが示唆された.さらに,MOOC での実践を普段の授業と関連づけることでTPACK 形成が促進され,普段の授業との違いが大きいほどより広範なTPACK が形成される可能性が示唆された.
著者
稲葉 利江子 高比良 美詠子 田口 真奈 辻 靖彦
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.241-253, 2022-05-20 (Released:2022-06-22)
参考文献数
16

2020年度新型コロナウィルス感染拡大防止のため,大学教員は否応なくオンライン授業に取り組むことになった.オンライン授業において授業効力感を得られた場合,多くの授業が対面授業に戻った後も,部分的にオンライン授業やICT ツールを継続的に利用していく可能性がある.そこで,本研究では,大学教員のオンライン授業における授業効力感に着目し,「ソーシャルサポート」,「学生の受講態度」,「授業内のICT 利用量」の3要因からの効果を明らかにすることを目的とした.具体的には,2020年7月〜8月に大学教員向けに実施したアンケート調査を基に,オンライン授業における授業効力感が,「指導方略」,「学生の状況把握」,「学生の活動促進」の3因子からなることを明らかにした.その上で,「ソーシャルサポート」,「学生の受講態度」,「授業内のICT 利用量」の影響を検証するため,階層的重回帰分析を行った.その結果,講義,演習・実習,ゼミ・セミナーという授業形式に依らず,「学生の受講態度」が教員のオンライン授業における授業効力感の向上に全般的に影響を及ぼすことが明らかとなった.
著者
木原 俊行 田口 真奈 生田 孝至 水越 敏行
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.1-14, 1996-03-31 (Released:2017-07-18)

本研究では映像視聴能力の発達差を明らかにするために小学生5、6年生、中学校1、2年生、そして大学生を対象とした質問紙調査を計画・実施した。まず、映像視聴能力の構造を再考し、これに場面把握、状況把握、先読み、技法理解、主題把握、感情移入の6つの柱を設定した。次いで、この能力を厳密に測定するために、セリフのない映画『裸の島』を調査用刺激に選定した。そして、この映画の内容等に関する8つの問題を設定して質問紙を構成し、調査をおこなった。515名の回答を分析した結果、多くの映像視聴能力の構成要素について小学校5年生と小学校6年生の間に断層がみられること、技法理解や先読みについては中学校2年生と大学生の間の能力差も激しいことなどの映像視聴能力の発達的側面を明らかにすることができた。
著者
蓮 行 松下 佳代 田口 真奈 平田 オリザ 斎藤 有吾 安藤 花恵 芝木 邦也 川島 裕子
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

高等教育機関における教育への演劇的手法の活用に関して、特に看護分野での活用事例を分析し、プログラムの設計指針を構築することができた。さらに、事例分析の結果と作成した設計指針から、主に看護分野を対象としたロールプレイの手法を用いた教育プログラムである「模擬健康相談」を提案し、看護学部におけるモデル授業の実施と評価も行なった。その結果、プログラムの有用性の実感には課題が残ったものの、参加者が楽しんでプログラムに参加しており、また、看護師として患者に対応することの難しさを実感したことが示唆された。
著者
澁川 幸加 田口 真奈 西岡 貞一
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-19, 2019 (Released:2019-09-30)
参考文献数
29

本研究の目的は,反転授業の事前学習時に既有知識と新しい学習内容を整理し,関連づけるワークシートへ取り組むことが,対面授業時の学びへどのような影響を及ぼすかを深い学習アプローチ得点の変化と対面授業時の発話内容の差異をもとに明らかにすることである。そのために,事前学習時に講義映像の視聴とノートテイクのみ行うワークシート無し群と,この事前学習に加えてワークシートへ取り組むワークシート有り群を設定し,大学生18名を対象に実験を行った。その結果,ワークシート有り群では対面授業後に深い学習アプローチ得点が向上した。また,ワークシート有り群では事前学習時に解説されたキーワードの発言数が顕著に多くなることや,学んだ知識を多様に活用した議論を展開したことが明らかになった。本研究は,反転授業の事前学習時に既有知識と新しい学習内容を整理し,関連づけるワークシートに取り組むことが,対面授業時に学んだ知識を多様に活用して議論を行うことを促進し,その結果,深い学習を促進させることを示唆した。
著者
後藤 崇志 田口 真奈
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.17-23, 2018

近年、インターネット上で学びを進めることが可能な大規模公開オンライン講義(MOOC)と呼ばれる形態の講義が広まっている。本研究では受講者の社会経済的背景と内発的動機づけ・外発的動機づけの高さとの関連を検討した。研究1では1つのコースの受講者1,633名から得られた質問紙データを分析し、国民1人あたりの国内総生産(GDP)が低い国からの受講者は外発的動機づけが高い傾向にあることが示された。研究2では、研究1で扱ったコースを含めた7つのコースのデータについてメタ分析的手法を用いて検討を行った。その結果、国民1人あたりの国内総生産(GDP)が低い国からの受講者は内発的動機づけが低く、外発的動機づけが高い傾向にあることが示された。また、ジニ係数が高く、経済格差の大きい国からの受講者は外発的動機づけが高い傾向にあることも示された。以上より、社会経済的にあまり富んでいない国からの受講者は、MOOCを通じてキャリアを向上させようとするような外発的動機づけが高い傾向にあることが示された。これらの結果を踏まえ、MOOCに期待される役割のひとつである、教育機会の格差是正の実現可能性について論じる。
著者
田口 真奈 寺嶋 浩介 中橋 雄 加藤 友香 水越 敏行
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.13-25, 2000-03-20

本研究では、同じテーマで構造の異なる2つの番組を続けて視聴したとき、先行する番組におけるテーマの取り扱い方の違いが後に視聴する番組の視聴や概念形成にどのような影響を与えるのかを検証した。NHK一般番組『クローズアップ現代』とCTW制作の小学生向け教育番組『3-2-1 CONTACT』とから、「ゴミ」を扱った番組を選定し、調査の題材とした。小学生と大学生という発達段階の大きく異なる被験者137名を対象とした質問紙調査を行った結果、先行する番組の視聴は、後に視聴する番組の見方そのものには影響を及ぼさないが、視聴後の概念形成には影響を与えることが明らかとなった。
著者
酒井 博之 田口 真奈
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.35-44, 2012
被引用文献数
2 5

本研究では,個人の大学教員が担当する単一の「コース」に焦点を当て,そのデザイン,実施,学生の学びについて教員が反省的に記述するコースポートフォリオの実践プログラムを開発し,その試行を通じて教員にコースの振り返りや改善を促すことを確認した.本実践プログラムは,授業実施期間を含む約半年間で個人教員がウェブ上でコースポートフォリオを効率的・効果的に作成する過程を支援するもので,ポートフォリオ作成支援のためのテンプレート及びワークブックを開発し,教員間のピアレビューを含む研修プログラムとしてデザインされた.3名の大学教員による試行において,本実践プログラムによるコースポートフォリオ作成過程を通じ,各教員のコースの振り返りが促進されたことを確認するとともに,今後のコースの改善へ結びつく可能性が示唆された.
著者
田口 真奈 半澤 礼之 杉原 真晃 村上 正行
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.327-337, 2012
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究は,FD(Faculty Development)業務を担当する若手教職員を対象とした調査結果から,担当者が業務上,連携を取る必要のある部局との連携の程度,ならびに担当者のキャリア展望が,FD業務へのやりがいや不安といった感情にどのような影響を与えるのかを明らかにするものである.大学教育センター等に所属する教員,FD委員会に所属する教員,事務職,組織の代表者といったポジションによる違いを検討したところ,センター所属の教員の方が委員会所属の教員よりも,また代表者は,若手教員よりもやりがいが高いことが明らかとなった.次に,こうしたやりがいや不安に影響を与える要因として,委員会所属の教員においては,連携が取れていることと,FD業務を自身のキャリア展望に位置づけられることがやりがいを増すことにつながる可能性が示唆された.センター所属の教員については,キャリア展望と,やりがいにのみ関連がみられた.事務職については関連はみられなかった.
著者
田口 真奈 西森 年寿 神藤 貴昭 中村 晃 中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.19-28, 2006
被引用文献数
10 9

大学教員初任者に対して「何に不安を抱き,どのようなサポートを必要としているのか」に関する調査を行った.また,高等教育機関に対して「どのような初任者研修を必要と感じ,実施しているのか」に関する調査を実施した.前者の調査からは,初任者が教育方法に関してもっとも不安を感じていることが明らかになった.ただし教育方法に関する研修に対する教員の必要性は必ずしも高くはなく,有効なサポート方法の検討が課題であることが示唆された.後者の機関調査からは,教育方法やITに関わる内容について機関による十分なサポートが提供されていないことが明らかとなった.特に,小規模な機関においては,その必要性が認められているにもかかわらず,サポートが十全でない状況が推測され,そうした機関の初任者をサポートする手だての必要性が示唆された.