著者
鮫島 伸一 澤田 俊夫 長廻 紘
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.415-421, 2005
被引用文献数
20 35

第59回大腸癌研究会では,本邦における肛門部扁平上皮癌と痔瘻癌の,臨床病理,治療法,予後について,会員施設にアンケートを実施した.肛門部悪性腫瘍症例は総数で1,540例報告され,1,029例(66.8%)は腺癌,粘液癌で,扁平上皮癌は226例(14.7%)であった.肛門部扁平上皮癌患者の平均年齢は63.4歳で,男女比は1:2.25であった.組織型では中分化型扁平上皮癌が50.4%と最も多くみられ,低分化癌も24.4%にみられた.47.6%にリンパ節転移を認め,そけいリンパ節の転移率は25%であった.腫瘍マーカーは,stage II~IVの52%の症例でSCCの上昇を認めた.治療法では68.4%でAPRを含む治療が行われたが,放射線療法,化学療法が増加している.全肛門部扁平上皮癌の5年生存率は51.4%で,治療法による予後の有意差は認められなかった.<BR>痔瘻癌痔瘻罹患年数は18.8年で,粘液癌が60.8%でリンパ節転移は28.9%にみられた.治療は95.0%にAPRないしTPEが行われた.5年生存率は,stage 0,Iで90.1%,stage IIで66.7%,stager IIIで29.0%であった.
著者
青木 幸昌 佐々木 康人 平岡 真寛 名川 弘一 斎藤 英昭 花岡 一雄 中川 恵一 青木 幸昌 澤田 俊夫 小林 寛伊
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

術中照射専用可動型電子線照射装置が完成した。電子線エネルギーは4,6,9,12MeVのいずれかを選択可能で、出力は最大10Gy/分、照射野は直径3-10cmが可能である。既存の手術場内に設置して、一人による装置の移動が可能である。米国、カルフォルニア大学において、臨床治験を開始した。同施設において、漏洩線量を測定した結果、1週間に12例、2400Gyを照射して、手術室周囲の最大検出線量は、室外のドア表面で72μシ-ベルトであった。従って、室内を放射線管理区域に設定することによって、追加遮蔽を要さないことが確認された。電子線エネルギーが大きくなるに従って、漏洩線量も増加することが示された。実際の運用は以下のようなものとなる。先ず、装置の保管室から手術場へ移送する。装置を規定の場所に設置し、ケーブル類をとりつけた後、QAに関するチェックを行う。この段階で放射線治療スタッフは一旦退出し、外科スタッフが装置にプラスティックキャップとドレープで装置を覆う。外科操作が完了すると、放射線治療スタッフとともに、使用アプリケータを選択する。手術台を照射装置まで移動させる。放射線スタッフがアプリケータを照射装置にドッキングさせ、照射線量と電子線エネルギーを決定する。スタッフは保管室に入り、モニタをテレビで観察しながら、約2分の照射を行う。この後、必要に応じて、手術操作を継続する。本装置を規制する法規として、科学技術庁関係の放射線障害防止法と厚生省関係の医療法について検討を行った結果、放射線障害防止法では装置の移動に関する問題はなく、放射線管理区域設定上の運用が問題となるのみと考えられるのに対して、医療法では、診断用高エネルギー放射線発生装置は決められた使用室で使用するとされており、今後の重大な検討項目となった。