著者
有田 英子 小川 節郎 花岡 一雄
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.35-42, 2009-01-15 (Released:2009-02-07)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

痛みは主観的な感覚であり, その測定・評価は難しい. 痛みの強さの測定についても, visual analogue scale (VAS) など, これまでにいくつかの評価法が提示されているが, いずれも主観的な測定法であった. この度, 患者がもつ痛みを, 痛みを伴わない異種感覚に置き換えて定量評価する知覚・痛覚定量分析装置が考案された. これにより, より客観的に痛みの強さを測定することができ, 患者間の痛みの強さや, ある患者の長期にわたる痛みの強さの比較・検討が可能になると考える. VASと比較した臨床データの一部を提示する.
著者
花岡 一雄 井手 康雄 角田 俊信 田上 惠 北村 亨之 関山 裕詩
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1.カルシウムチャネル拮抗集ジルチアセムやα2アドレナリン作動薬クロニジンがネコの脊髄後角Rexed第V層型単一細胞に対する作用を研究した。約3kgの成ネコを用いて、両側中脳網様体の除脳を行い、脊髄を露出し、L1-L2で脊髄を横断した。Rexed第V層単一細胞活動を細胞外微少電極誘導法にて記録した。実験は自発発射及ピンチ法による誘発発射の発射数の対照値を測定した後、微少電極刺入付近の脊髄表面にジルチアゼム10mg/ml(D10mg群)20mg/ml(D20mg群)を1ml投与し、自発発射及誘発発射を測定した。クロニジンについても同様の実験を行った。5マイクロg(1ml)(C5群)50マイクロg(1ml)(C50群)を投与した。その結果、いずれの群も単一細胞の自発発射及ぴ携先見射が減少した。ジルチアゼム実験では用量依存的な反応が見られたが、クロニジン実験では見られなかった。この結果、カルシウムイオンチャネルとα2アドレナリン受容体が疼痛制御機構に関与しており、慢性難治性疼痛患者への疼痛治療に応用され得る可飽性を示した。2.クロニジン軟膏を帯状痘疹後神経痛の患者に適応して、痛みの程度への影響を検討した。クロニジン軟膏(60mlcrogrom,150microgram,300microgram/軟膏1gramの3種類)を作成し、疼痛部位に塗布を行い、検索した。その結果、有効率は90%であった。濃度的には、150microgramが最も多く使われた。いずれも副作用は、認められなかった。クロニジンの作用は脊髄レベルのみならず、神経終末レベルにおいても疼痛効果が期待された。これらの一連の研究からも血管作動薬が疼痛制御に大きく関わっていることが明確となった。またこれらの一連の薬物の臨床への応用が期待された。
著者
青木 幸昌 佐々木 康人 平岡 真寛 名川 弘一 斎藤 英昭 花岡 一雄 中川 恵一 青木 幸昌 澤田 俊夫 小林 寛伊
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

術中照射専用可動型電子線照射装置が完成した。電子線エネルギーは4,6,9,12MeVのいずれかを選択可能で、出力は最大10Gy/分、照射野は直径3-10cmが可能である。既存の手術場内に設置して、一人による装置の移動が可能である。米国、カルフォルニア大学において、臨床治験を開始した。同施設において、漏洩線量を測定した結果、1週間に12例、2400Gyを照射して、手術室周囲の最大検出線量は、室外のドア表面で72μシ-ベルトであった。従って、室内を放射線管理区域に設定することによって、追加遮蔽を要さないことが確認された。電子線エネルギーが大きくなるに従って、漏洩線量も増加することが示された。実際の運用は以下のようなものとなる。先ず、装置の保管室から手術場へ移送する。装置を規定の場所に設置し、ケーブル類をとりつけた後、QAに関するチェックを行う。この段階で放射線治療スタッフは一旦退出し、外科スタッフが装置にプラスティックキャップとドレープで装置を覆う。外科操作が完了すると、放射線治療スタッフとともに、使用アプリケータを選択する。手術台を照射装置まで移動させる。放射線スタッフがアプリケータを照射装置にドッキングさせ、照射線量と電子線エネルギーを決定する。スタッフは保管室に入り、モニタをテレビで観察しながら、約2分の照射を行う。この後、必要に応じて、手術操作を継続する。本装置を規制する法規として、科学技術庁関係の放射線障害防止法と厚生省関係の医療法について検討を行った結果、放射線障害防止法では装置の移動に関する問題はなく、放射線管理区域設定上の運用が問題となるのみと考えられるのに対して、医療法では、診断用高エネルギー放射線発生装置は決められた使用室で使用するとされており、今後の重大な検討項目となった。