著者
平岡 真寛 宮越 順二
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

各種磁場(0.2T均一定常磁場、0.45Tの不均一定常磁場、0.2Tの変動磁場)の細胞への影響を細胞増殖、細胞致死、熱ショック蛋白質および癌遺伝子発現を指標に明らかにした。0.2Tの均一定常磁場を培養器内で1ー8日間HeLaS3細胞(ヒト子宮癌)に負荷しても細胞増殖に影響を与えなかった。放射線(6Gy)あるいは温熱(45C,15min)の併用処置についても変化を認めなかった。0.2Tの変動磁場、0.45Tの不均一定常磁場を室内で1、2時間SCCVII細胞(マウス扁平上皮癌)、HeLaS3細胞に負荷しても細胞増殖、細胞致死いずれも影響を認めなかった。放射線あるいは温熱の併用についても変化を認めなかった。0.2Tの均一定常磁場のHeLaS3細胞での癌遺伝子(Nーras,mycおよびfosを検討)への影響をNorthern blotting法で評価した。無処置対照においては、fosmRNAの産生はほとんど認められなかった。2、8時間の磁場負荷では認められなかった。fosmRNAの産性が、4時間の磁場負荷で軽度認められた。既に報告されているようにfosはTPA、温熱処置にて発現したが、それらの発現に磁場は影響を与えなかった。NーrasおよびmycのmRNA発現に磁場は関与しなかった。ヒト大腸癌由来COLO細胞を対象に0.2T均一定常磁場の熱ショック蛋白質発現への影響をSDSーPAGEで検討したが、6、24時間磁場を負荷しても熱ショック蛋白質の発現を認めなかった。以上、0.2Tの均一定常磁場にてfosmRNAの産性が軽度認められることが本研究で明らかにされた。磁場と癌遺伝子発現の関係についての報告は皆無に等しく今後の研究が望まれる。
著者
平岡 真寛
出版者
一般社団法人 日本生体医工学会
雑誌
BME (ISSN:09137556)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.40-47, 1992-05-10 (Released:2011-09-21)
参考文献数
7
被引用文献数
4
著者
平田 雄一 宮本 直樹 清水 森人 吉田 光宏 平本 和夫 市川 芳明 金子 周史 篠川 毅 平岡 真寛 白土 博樹
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
雑誌
Synthesiology (ISSN:18826229)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.238-246, 2014 (Released:2015-03-14)
参考文献数
14

がんの放射線治療においては患者の呼吸等にともなって放射線の照射中に患部の位置が変化する可能性がある。放射線の患部への照射効果を向上させるとともに、周辺の正常部位へのダメージを最小化するために、患部の3次元的な位置の時間的な変化を考慮した4次元放射線治療が最近日本で開発され治療効果を上げている。この時間軸を付加した4次元放射線治療を実現するシステムの安全性に関する技術的要件を盛り込んだ規格を日本から国際電気標準会議(IEC)に提案した。理由は、IECの国際標準は、各国の規制当局によって引用されると、強制力を有するようになるため、IECにおける国際標準化活動は、4次元放射線治療システムの確固とした安全性担保のために非常に効果的であるためである。この論文は、今後さらに需要が増す4次元放射線治療システムに関する国際標準化の戦略について分析した内容をまとめたものである。戦略の要は、4次元放射線治療システムの安全性に関する技術的要件の国際標準化に焦点を絞り、臨床的視点を盛り込む形で、幅広い分野の専門家の意見を結集して国際的な合意形成を図ることである。今後4次元放射線治療を一層普及させるために、このような戦略にもとづいて、4次元放射線治療システムを構成する個別装置に関する既存規格の改訂に加えて、4次元放射線治療システム全体についてシステムとしての安全性評価を行ったうえで、新しい規格の作成を推進する。
著者
青木 幸昌 佐々木 康人 平岡 真寛 名川 弘一 斎藤 英昭 花岡 一雄 中川 恵一 青木 幸昌 澤田 俊夫 小林 寛伊
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

術中照射専用可動型電子線照射装置が完成した。電子線エネルギーは4,6,9,12MeVのいずれかを選択可能で、出力は最大10Gy/分、照射野は直径3-10cmが可能である。既存の手術場内に設置して、一人による装置の移動が可能である。米国、カルフォルニア大学において、臨床治験を開始した。同施設において、漏洩線量を測定した結果、1週間に12例、2400Gyを照射して、手術室周囲の最大検出線量は、室外のドア表面で72μシ-ベルトであった。従って、室内を放射線管理区域に設定することによって、追加遮蔽を要さないことが確認された。電子線エネルギーが大きくなるに従って、漏洩線量も増加することが示された。実際の運用は以下のようなものとなる。先ず、装置の保管室から手術場へ移送する。装置を規定の場所に設置し、ケーブル類をとりつけた後、QAに関するチェックを行う。この段階で放射線治療スタッフは一旦退出し、外科スタッフが装置にプラスティックキャップとドレープで装置を覆う。外科操作が完了すると、放射線治療スタッフとともに、使用アプリケータを選択する。手術台を照射装置まで移動させる。放射線スタッフがアプリケータを照射装置にドッキングさせ、照射線量と電子線エネルギーを決定する。スタッフは保管室に入り、モニタをテレビで観察しながら、約2分の照射を行う。この後、必要に応じて、手術操作を継続する。本装置を規制する法規として、科学技術庁関係の放射線障害防止法と厚生省関係の医療法について検討を行った結果、放射線障害防止法では装置の移動に関する問題はなく、放射線管理区域設定上の運用が問題となるのみと考えられるのに対して、医療法では、診断用高エネルギー放射線発生装置は決められた使用室で使用するとされており、今後の重大な検討項目となった。