著者
小林 達 澤田 歩 葛西 智 後藤 聡 松本 和浩 工藤 智
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.287-294, 2021 (Released:2021-09-30)
参考文献数
34
被引用文献数
1

近年のリンゴ開花期間における低温傾向に対応するため,10°Cの低温条件でも発芽が可能で,主力品種 ‘ふじ’ に対する人工受粉用花粉として適する品種を選定した.まず,受粉専用品種を含む全26品種を対象とし,10, 15および20°Cの各条件における花粉発芽率を調査した結果,10°Cにおける発芽率は ‘ふじ’ を除くと2か年とも ‘はるか’ が最も高く,‘王林’ が最も低かった.次に,‘はるか’ および ‘王林’ の他,10°Cでの花粉発芽率が高かった品種のうち,広く生産され花粉を獲得しやすい ‘シナノゴールド’ を加えた3品種について,10または20°C条件でそれぞれの花粉を ‘ふじ’ の花に受粉した.その結果,‘はるか’ および ‘シナノゴールド’ の花粉の場合は両条件とも高い結実率を示したのに対し,‘王林’ の花粉の場合,10°C条件では20°C条件に比較して明らかに低かった.また,50花当たりの花粉重量は,これら3品種の中で ‘王林’ が最も少なかった.さらに,3品種のいずれの花粉を受粉しても,‘ふじ’ の果実形質および果実品質に差はないことを確認した.以上より,‘はるか’ および ‘シナノゴールド’ の花粉は低温発芽性を有し,花粉量も多いことから,低温条件下の ‘ふじ’ に対する人工受粉用の花粉として有望であると考えられ,現在一般的に使用されている ‘王林’ よりも優れた特性を有することが明らかとなった.
著者
田中 福代 岡崎 圭毅 樫村 友子 大脇 良成 立木 美保 澤田 歩 伊藤 伝 宮澤 利男
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.101-116, 2016
被引用文献数
12

リンゴみつ入り果と非みつ果の香味特性および香味成分のプロファイリングを実施し,嗜好性と香味成分との関連を検討した.みつ入り果の揮発性成分はメチルエステル類,エチルエステル類が特徴的に増加した一方,酢酸エステル類や炭素数3以上のアルコール由来のエステル類は減少した.可溶性成分ではソルビトール,スクロース,L-アラニン,ピログルタミン酸,デヒドロアスコルビン酸が増加し,グルコースが低下した.試算した甘味度積算値はみつ入り果がわずかに大きかった.官能評価の結果,'ふじ' のみつ入り果は全体的な香り,フルーティ,フローラル,スィートが顕著に強く,嗜好性も高かった.みつ入り果で特徴的に検出されたエチルエステル類等(特に2-メチル酪酸エチル,ヘキサン酸エチル,チグリン酸エチル,2-メチル酪酸メチル)は嗅覚による閾値が小さく,スィート·フローラルな,リンゴ·パイナップル様の香調を呈する.以上から,みつ入り果の嗜好性の高さは糖類よりもメチル·エチルエステル類を中心とした香気成分が強く寄与したものと示唆された.また,これらの成分はみつ部分における低酸素·高炭酸条件下の代謝により集積したものと推定した.
著者
吉江 明広 澤田 歩実 澤﨑 円香 田邊 公一 朝見 祐也
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.451-457, 2021 (Released:2021-08-01)
参考文献数
29

本研究は、取り扱いの簡易な食物アレルゲン検出キットを大量調理機器の洗浄終了の確認に活用することを試みた。食物アレルゲン検出キットは「牛乳(カゼイン)」用および「小麦」用を用いた。大量調理機器は、ブレージングパンを一定条件の料理の調理後に、その料理を取り除いた状態のものを用いた。洗剤の有無で2種の洗浄を行い、食物アレルゲンの除去までに必要な洗浄水量の比較を行った。食物アレルゲンの種類による比較では、洗浄水量の差は認められなかった。一方、洗剤の有無の比較では、洗剤を用いることで有意に洗浄水量が少なく、洗剤による食物アレルゲン除去の効果を示すことができた。ブレージングパンに目視で汚れが確認できない状況だとしても、食物アレルゲン検出キットで「陽性」となることがあった。そのため、目視だけで洗浄の終了を判断することは、食物アレルゲン除去の観点から不十分であると確認された。大量調理機器の洗浄の際に食物アレルゲン検出キットを使用することは、食物アレルゲンの残存の確認に有効であり、さらに食物アレルゲン除去に必要な洗浄水量を算定し、洗浄方法の標準化に有用であると考えられた。以上より、大量調理機器の洗浄終了の確認において、食物アレルゲン検出キットの活用の可能性を示すことができた。