著者
久保 彰子 大原 直子 焔硝岩 政樹 積口 順子 須藤 紀子 笠岡(坪山) 宜代 奥田 博子 澁谷 いづみ
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.344-355, 2020

<p><b>目的</b> 本研究は,災害時の栄養・食生活支援について,対人サービスに係る被災者の健康管理支援と対物サービスに係る被災者への提供食の準備状況を明らかにすることと準備における行政管理栄養士等の関わりの状況を検討することを目的とした。</p><p><b>方法</b> 2018年9月,全国1,741市区町村の防災担当課宛に大規模災害時の栄養・食生活支援に係る準備状況を尋ねる質問紙調査を依頼した。防災担当課で回答が難しい質問は関係各課に照会し回答するよう求めた。基本集計の他,地域防災計画等策定への行政管理栄養士等の参画の有無および常勤行政管理栄養士等の配置の有無と質問項目との関連をピアソンのカイ二乗検定で調べた。</p><p><b>結果</b> 1,056市区町村から回答があった(回収率60.7%)。栄養・食生活支援を計画等へ記載している市区町村は52.8%,要配慮者の把握の防災計画等への記載は35.9%だった。要配慮者に対応した固定備蓄として,おかゆを備えているのは28.2%,乳児用粉ミルクは30.8%,アレルギー対応食は20.9%であった。炊き出しを提供する市区町村は82.1%だが献立基準を設定しているのは5.2%,弁当等を事前協定している市区町村は32.6%,献立基準を設定しているのは0.9%と少なかった。常勤行政管理栄養士等の発災時の従事内容は,要配慮者への支援33.2%,炊き出し又は弁当等の献立作成や助言39.3%だった。管理栄養士等の応援要請を記載している市区町村は29.0%と少なく,応援要請しない理由は,どのような活動をしてもらえるのかわからないが33.6%と最も多かった。地域防災計画等に行政管理栄養士等が参画したところは,栄養・食生活支援の記載や食事調査の実施,食事調達や炊き出し等の関係部署との連携が多かった。常勤行政管理栄養士等が配置されているところは,それらに加え流通備蓄や食料の衛生保管および適温提供の機器整備も多かった。</p><p><b>結論</b> 栄養・食生活支援に関する記載や要配慮者に対応した食品備蓄は以前より増加したが,炊き出しは減少した。要配慮者に対応した食事提供や炊き出しおよび弁当等の献立基準の作成等,行政管理栄養士等の関与が必要な準備について防災担当課等との連携不足が示唆され,積極的な関与が必要と考えた。一方,常勤行政管理栄養士等が未配置の市区町村は,管理栄養士を活用した食事提供支援の準備をすすめるために適正な配置が望まれた。</p>
著者
人見 哲子 焔硝岩 政樹
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】 「晴れの国おかやま」のキャッチフレーズで知られている岡山県は、自然災害の少ない県である。しかし、平成21年に発生した台風9号の影響により岡山県は大雨に見舞われ深刻な被害をもたらした。このような、背景から岡山県美作保健所勝英支所が主体となって"みんなでつくる災害時の食生活支援ネットワーク"が立ち上げられ、自助・共助・公助の役割を明確にした"災害時食生活支援のための手引き"、献立集 "食事ホッとカード"(以下ホッとカードと記す)を作成した。このカードは、被災現場での炊き出しで健康な方にも提供でき、少しの工夫で乳幼児や高齢者、病気で食事治療を受けている方にも提供できるメニューを検討し、実際の場面で活用できるか住民らと共に検証した。【方法】(1)幼児から高齢者、特別な配慮が必要な方やアレルギー体質の方等、全てに対応できる献立になっているかを、ネットワークのワーキンググループにおいて検討を行い、繰り返し試作を重ねて決定した。(2)小学生を対象とした「つなげよう人の輪 防災体験inつやま」に参加し、ホッとカードの中から、実際に作ってもらい、試食をし、疑似体験した。【結果・考察】ホッとカードは、誰でも、どこでも、作りやすいことをコンセプトに、写真、タイトル、ライフラインの状況を明記し、献立選びのヒントを載せ、区分ごとに色分け、見やすいようにノンブルを配置した。また、ライフラインの状況に応じた調理方法から、献立を選択できるよう配慮し、字体は大きく、被災経験から紙質は耐水性で破れにくく、水害にも対応した献立集ができあがった。防災体験を通して、幼い子供でも作れる献立内容であった。会場ではホッとカードを拡大したものの掲示や、市販されている備蓄食品の展示を行い、実際に体感することで、幼い頃から知ってもらうきっかけになった。。
著者
磯部 澄枝 諸岡 歩 焔硝岩 政樹 富川 正恵 新田 和美 齋藤 芸路 澁谷 いづみ
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.501-509, 2020 (Released:2020-09-01)
参考文献数
9

本研究は、地域包括ケアシステムの推進における行政管理栄養士の役割を明らかにするため、都道府県本庁、保健所および市町村の管理栄養士等を対象に、管理栄養士配置状況、地域包括ケアシステムへの関与状況等を把握する悉皆調査を実施した。介護保険・高齢福祉部門に管理栄養士を配置している都道府県および市町村は少なく、地域包括ケアシステムの推進に取り組んでいる都道府県本庁は7(15.9%)、保健所は24(8.0%)、市町村は190(19.9%)であった。保健所は医療・介護連携支援ツール作成、社会資源把握、管理栄養士・栄養士の育成と確保、食環境整備等を行っており、市町村はケース対応、教室の企画・運営、普及啓発、医療と連携した栄養食事指導体制の構築等を行っていた。市町村が保健所管理栄養士に期待することは、情報発信、リーダーシップ、組織体制整備等であった。地域包括ケアシステムの充実を目指すため、市町村管理栄養士は介護予防事業と保健事業を連動させた取り組みに積極的に関わることが望まれる。また、保健所管理栄養士は調整能力とリーダーシップを発揮し、栄養・食生活課題の見える化、地域栄養ケア拠点の整備、社会資源の活用、栄養・食生活改善に関する人材育成を行う必要があることが示唆された。