著者
須藤 紀子 澤口 眞規子 吉池 信男
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.349-355, 2010 (Released:2011-12-27)
参考文献数
41

災害時の栄養・食生活支援活動の参考となるように、被災者の栄養リスクについての知見をまとめた。被災のようなライフイベント発生時には、ストレスによる食欲低下と共に、食事やその準備にかけられる時間の減少、調理意欲の低下によって、食事摂取量が減少する。しかし、時間や調理意欲のなさに、ファストフードやインスタント食品を選択することによって対応するとエネルギー摂取量は増加する。ストレスが慢性化すると、ストレスからの回復をめざして食欲は増進する。ストレス対処行動として菓子類の摂取が増加するので、摂り過ぎに注意が必要である。ストレス負荷時は脳のエネルギー源となる糖質と必須アミノ酸を含む良質なたんぱく質を十分に摂取する必要がある。微量栄養素では、生鮮食品を含む多様な食品を摂取することで、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンC を確保する。特に平常時から不足しがちな鉄とカルシウムには注意が必要である。
著者
池田 登顕 井上 俊之 菊谷 武 呉屋 朝幸 田中 良典 呉屋 弘美 佐野 広美 庄司 幸江 須藤 紀子 長島 文夫 藤澤 節子 佐藤 博之
出版者
特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.185-189, 2016-03-01 (Released:2021-12-10)
参考文献数
17

在宅医療・緩和ケアカンファレンス(以下、本会という)は、北多摩南部医療圏にて多職種連携推進研修を開催してきた。今回、阿部らが開発した「医療介護福祉の地域連携尺度」を一部本地域に合わせて改変したものを用いて、本会の取組みを客観的に評価した結果、有用な知見が得られたので報告する。 調査は、75名を対象とし多職種が集まる本会以外の研修会への参加頻度も含め、過去3年間で、「本会の研修会参加6回以上」、「本会以外の研修会も含めて6回以上参加」、「多職種連携の研修会参加6回未満」の3群に分け、連携尺度スコアをKruskal-Wallis検定にて検証した。post-hoc testとしては、Scheffe法を用いた。 最終的に、15%以上の欠損値が存在した1名を除外した、74名の回答を分析した。過去3年間において、「本会の研修会参加6回以上」、「本会以外の研修会も含めて6回以上参加」、「多職種連携の研修会参加6回未満」の3群間における連携尺度スコアのKruskal-Wallis検定の結果、有意差がみられた。また、多重比較の結果「本会の研修会参加6回以上」群の連携尺度スコアは、「本会以外の研修会も含めて6回以上参加」群および「多職種連携の研修会参加6回未満」群と比較して有意に高かった(P<0.001)。 地域での多職種連携推進には、その地域で開催されている研修会へ年2回以上の参加が推奨されると考えた。
著者
久保 彰子 大原 直子 焔硝岩 政樹 積口 順子 須藤 紀子 笠岡(坪山) 宜代 奥田 博子 澁谷 いづみ
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.344-355, 2020

<p><b>目的</b> 本研究は,災害時の栄養・食生活支援について,対人サービスに係る被災者の健康管理支援と対物サービスに係る被災者への提供食の準備状況を明らかにすることと準備における行政管理栄養士等の関わりの状況を検討することを目的とした。</p><p><b>方法</b> 2018年9月,全国1,741市区町村の防災担当課宛に大規模災害時の栄養・食生活支援に係る準備状況を尋ねる質問紙調査を依頼した。防災担当課で回答が難しい質問は関係各課に照会し回答するよう求めた。基本集計の他,地域防災計画等策定への行政管理栄養士等の参画の有無および常勤行政管理栄養士等の配置の有無と質問項目との関連をピアソンのカイ二乗検定で調べた。</p><p><b>結果</b> 1,056市区町村から回答があった(回収率60.7%)。栄養・食生活支援を計画等へ記載している市区町村は52.8%,要配慮者の把握の防災計画等への記載は35.9%だった。要配慮者に対応した固定備蓄として,おかゆを備えているのは28.2%,乳児用粉ミルクは30.8%,アレルギー対応食は20.9%であった。炊き出しを提供する市区町村は82.1%だが献立基準を設定しているのは5.2%,弁当等を事前協定している市区町村は32.6%,献立基準を設定しているのは0.9%と少なかった。常勤行政管理栄養士等の発災時の従事内容は,要配慮者への支援33.2%,炊き出し又は弁当等の献立作成や助言39.3%だった。管理栄養士等の応援要請を記載している市区町村は29.0%と少なく,応援要請しない理由は,どのような活動をしてもらえるのかわからないが33.6%と最も多かった。地域防災計画等に行政管理栄養士等が参画したところは,栄養・食生活支援の記載や食事調査の実施,食事調達や炊き出し等の関係部署との連携が多かった。常勤行政管理栄養士等が配置されているところは,それらに加え流通備蓄や食料の衛生保管および適温提供の機器整備も多かった。</p><p><b>結論</b> 栄養・食生活支援に関する記載や要配慮者に対応した食品備蓄は以前より増加したが,炊き出しは減少した。要配慮者に対応した食事提供や炊き出しおよび弁当等の献立基準の作成等,行政管理栄養士等の関与が必要な準備について防災担当課等との連携不足が示唆され,積極的な関与が必要と考えた。一方,常勤行政管理栄養士等が未配置の市区町村は,管理栄養士を活用した食事提供支援の準備をすすめるために適正な配置が望まれた。</p>
著者
須藤 紀子 佐藤 加代子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.291-299, 2005-10-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
71
被引用文献数
2 1

市町村保健センターの栄養指導担当者においで, 妊娠中の飲酒が生まれてくる子どもに悪影響を及ぼすことは漠然と認識されているが, 具体的にどのような障害が生じるのかについてはあまり知られていない実態を受け, (1)これまでに前向きコホート研究において観察された, 妊娠中の飲酒が子どもに及ぼす影響にはどのようなものがあるかを整理し, 情報提供することを目的とした。また, 少量飲酒であれば容認する意見もあったことから, (2)飲酒量のレベルを純アルコール14g以下の少量飲酒に限定した場合でも, 障害が認められるかどうかを明らかにすることを目的とした。系統的レビューの結果, 妊娠中の母親の飲酒の影響は, 成長遅滞, 先天奇形, 脳の形成異常, 睡眠障害, 神経学的機能障害, 認知力低下, IQ・学習能力の低下, 言語発達遅滞, 注意欠陥, 問題行動と多岐にわたることが分かった。少量飲酒が子どもの身体発育に及ぼす影響については研究結果間で不一致がみられ, 一定の見解は得られなかった。今後はこれら一つひとつの障害について絞り込んだ文献検索を行い, メタアナリシスを用いて研究結果を統合することで, 科学的根拠に基づいた飲酒指導を行うためのエビデンスを蓄積していく必要があると考える。指導の現場においては, 妊娠中の少量飲酒が子どもに及ぼす影響について研究結果が不十分である現時点では, 少量飲酒を容認することは避けたほうがよいと考えられた。
著者
島本 和恵 須藤 紀子
出版者
日本健康学会
雑誌
日本健康学会誌 (ISSN:24326712)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.179-192, 2019-09-30 (Released:2019-10-28)
参考文献数
75
被引用文献数
1

For evidence-based nutrition counseling, we conducted a systematic review on the relationship between breast- or bottle feeding and oral conditions/functions of infants. We searched peer-reviewed research papers published between 1980 and 2017 by five literature databases. Two authors independently examined their titles, abstracts and texts, and 45 literatures that met the inclusion criteria were extracted. After that, we manually searched references cited in the adopted articles. As a result, it was suggested that weaning at 12 to 18 months of age, as recommended in the “lactation and weaning guide book,” reduced the risk of dental caries. As for dentition and masticatory ability, breastfeeding or use of baby bottle should be stopped by this time point as well.
著者
網谷 有希子 須藤 紀子 笠岡(坪山) 宜代 石川 文子 迫 和子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.192-200, 2014 (Released:2014-03-18)
参考文献数
13

保育所での災害対策について、東日本大震災(H23.3.11)(以下、3.11 大震災)前後での食料等の備蓄の変化、食事提供に関する訓練の実施状況、被災時の適切な対応を明らかにするため、首都圏政令A 県の指定都市B の保育課に勤務する管理栄養士と保育士、B 市内私立保育所C の施設長、保育士、栄養士を対象にグループインタビューを実施した。食料等の備蓄は震災前に比べて、アレルギー対応食品の備蓄、分散備蓄などの点で質・量ともに大きく改善されていた。3.11 大震災後、市内全公立保育所に対して、行政による備蓄食品の一括購入が行われていた。私立保育所C では、1 日4 食3 日分の災害時メニュー計画書の作成に取り組み、それをもとに備蓄整備を進めていた。一方で、避難訓練は毎月実施されているものの、子どもに備蓄食品を保育所で食べさせる訓練や、炊き出しを想定した大量調理の訓練は行われていなかった。加えて3.11 大震災時には、備蓄食品を、入所児だけでなく職員や保護者が食べる場面も見られた。