著者
牧野 知之
出版者
土壌物理学会
雑誌
土壌の物理性 (ISSN:03876012)
巻号頁・発行日
vol.144, pp.25-32, 2020 (Released:2020-10-29)
参考文献数
20

水田における有害元素汚染に対する化学的な対策として,カドミウムを対象とした土壌洗浄法および鉄資材と湛水栽培を組み合わせた玄米ヒ素低減法を紹介した.洗浄法では,各種薬剤から塩化鉄(III) を最適洗浄剤として選定した.塩化鉄(III) による土壌カドミウムの抽出メカニズムは鉄イオンの加水分解反応による pH 低下および塩素イオンとカドミウムの錯体形成である.洗浄後はオンサイトに設置した排水処理装置で洗浄廃水を処理する.土壌カドミウムは 60 ∼ 70 %,玄米カドミウムは 70 ∼ 90 %低減した.ヒ素に関しては,鉄鋼スラグ,水酸化鉄,ゼロ価鉄を水田に施用して,玄米ヒ素の低減効果を示した.ゼロ価鉄を施用すると土壌溶液および玄米ヒ素が最も低減した.強還元性を示すゼロ価鉄表面における難溶性ヒ素硫化物の生成に起因すると考えられる.
著者
牧野 知之
出版者
農業環境技術研究所
雑誌
農業環境技術研究所報告 (ISSN:09119450)
巻号頁・発行日
no.20, pp.107-161, 2001-08 (Released:2011-03-05)

土壌中のマンガン酸化物の重金属・有機物に対する酸化作用を解明するため,マンガン酸化物に起因する土壌酸化能の評価手法(クロムの酸化反応を利用)を検討した。次に本法を各種土壌に適用し,(1)黒ボク土の土壌酸化能は特異的に低く,(2)黒ボク土では酸化反応よりも吸着反応が優勢となること,(3)その他の土壌では本法により土壌マンガン酸化物の酸化反応を評価可能であること,(4)乾燥によって土壌酸化能が低下すること,を明らかにした。また,土壌乾燥にともなうマンガンの動態を解析し,(1)風乾および殺菌処理による水溶態,交換態,酸可溶態のマンガン・コバルトが増加すること,(2)圃場での土壌乾燥により交換態のマンガン・コバルトが増加すること,(3)これらの現象は,微生物遺体由来の糖によるマンガン酸化物の溶解反応に起因すること,を明らかにした。このことが,これまで不明であった,土壌乾燥にともなう作物のマンガン過剰症の土壌要因であると推察した。