著者
玄場 公規 児玉 文雄
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.179-189, 1999-11-25
被引用文献数
7

各産業の研究開発活動及び事業活動における多角化度を定量的に分析した。多角化度については、エントロピー値という指標により測定した。1980年代においては、多くの産業で研究開発活動の多角化が進展しており、事業活動の多角化についても、研究開発活動に追随するように進展している。次に、研究開発活動及び事業活動の多角化データと産業連関表の産出投入表のデータを用いて、多角化の方向性を川上多角化度及び川下多角化度といった指標により定量化した。そして、研究開発の多角化の方向性を各産業の技術機会と捉え、産業カテゴリー毎に技術機会の方向性を整理した。分析の結果、ハイテク産業及び規模依存型産業は、川下方向への技術機会があり、科学技術と関連のある繊維・医薬・紙パ産業では川上方向への技術機会があると考えられる。さらに、本研究では、収益性向上に資する多角化戦略を検討するため、事例分析を行い、付加価値の高い川下方向への技術の展開を図る多角化戦略が収益性向上に寄与するという仮説を導き出した。最後に、この仮説を示唆する実証結果を多変量解析により得た。
著者
玄場 公規 矢野 正晴 ヤング 麻里子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は日本及び海外の研究大学のURA(大学のリサーチ・アドミニストレーター)の機能、モチベーション、役割の比較分析を行う。調査の結果、以下の点が明らかとなった。海外の研究大学のURA人材は法律、経理・財務、知的財産などの高い専門性を有しており、研究者に高度な研究支援サービスを提供していた。また、仕事に対するモチベーションも高く、職務への満足度も高い。さらにキャリアパスも多様であり、研究者としてのキャリアを有している人材も数多くいるが、一方で人材の流動性は決して高くないことが確認された。日本のURAも政策支援により採用されているが、専門性とモチベーションを高める努力が必要である。
著者
品川 啓介 玄場 公規 阿部 惇
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.200-213, 2014

青色発光ダイオード製品開発を例にとり,科学論文書誌情報をもとにこの製品開発に伴い生じた科学知識の爆発を分析することによって,その背後にある技術的プロセスイノベーションの特徴を探る。青色発光ダイオード製品開発においては,青色発光を可能にする新しい半導体結晶材料の候補として,ガリウムナイトライド(以下,GaNとする)結晶とセレン化亜鉛(以下,ZnSeとする)結晶が時期を同じくして存在し,結果,GaN結晶の開発成功によって初めて製品化を実現したことが知られている。科学論文の書誌情報をもとに,1970年から2012年(データ収集時におけるデータベースの最新収録年)までの両結晶開発推移を分析した結果,GaN結晶開発に関わる研究論文はロジスティック曲線を描くように増加する一方で,ZnSe結晶開発に関わる研究論文では緩やかな単調増加が観察された。GaN結晶開発に見られるこの曲線の前半には,科学知識の爆発と見られるGaN結晶開発研究の論文急増が生じており,GaN結晶の製品化を可能とするプロセス技術として知られるMetalorganic chemical vapor deposition(MOCVD)が研究課題として含まれていた。以上の発見から,GaN開発研究成功の背景には「科学的知識の爆発」が存在し,その爆発の様子は製品開発に関わる論文累積数の急激な上昇によって観察され,その因子のひとつとして科学を起点として形成される技術的プロセスイノベーションが挙げられることを指摘する。
著者
馬場 敏幸 玄場 公規
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.71-82, 2003-08-29

本研究は,インドネシアの現地系自動車部品メーカーの獲得した技術水準に着目し,アジアの自動車産業の産業システム高度化進展度を分析することを目的としている。分析にあたっては自動車メーカーとサプライヤー間の取引方式に着目した。先行研究によると「承認図」方式を通じてなされる取引方式では,双方化による学習(Learning-by-Reciprocating)効果が期待され,開発途上国への技術移転速度を速めると提唱されている。しかし,一方で,「承認図」方式による取引には,1)初期開発能力(企画・設計), 2)後期開発能力(工程開発能力,VE), 3)量産能力(品質,納期など),4)改善能力(VAなど)のすべての能力が必要とされている。そのため,本研究では現地系自動車部品メーカーヘの「承認図」方式の普及状況が産業システム高度化進展度の指標になると考え,承認図に関する事例分析を行った。分析の結果,現地系の部品メーカーは自動車メーカーに対して製造技術を提供できる段階に達しているが,その開発能力は発展途上にあり,産業システムとしてはいまだ未成熟であるとの結論を得た。しかし,「承認図メーカー」に近い現地系自動車部品メーカーも存在しており,産業システムが進化しつつあることも確認された。