著者
玉田 太朗 岩崎 寛和
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.947-952, 1995-09-01
被引用文献数
11 6

1. 産婦人科外来を訪れた35歳〜59歳(1929年4月〜1953年3月の間に誕生)の患者のうち, 両側卵巣摘出あるいは子宮摘出, ホルモン剤服用および子宮筋腫合併例を除く1,654例について閉経年齢を調査した. 2. 受診時の月経の有無(1年以上の無月経を閉経と判定した)に基づき, プロビット法により解析した結果では, 50%閉経年齢(閉経年齢中央値)は50.54歳, 10%閉経年齢, 90%閉経年齢はそれぞれ45.34歳, および56.34歳であった. 3. 既閉経者の記憶による閉経年齢に基づき閉経年齢を推定した. 記憶閉経年齢は左裾が長い非正規分布を示したが, 平均49.47歳, 標準偏差3.526歳であった. 記憶閉経年齢の分布は, 50歳, 45歳など区切りのよい年齢で異常に高く, 正確さに問題があると推測される. 4. 子宮筋腫が閉経を遅延させる因子(Odds比=9.41)であることが明らかになったので上記の解析では子宮筋腫合併例は除いたが, 卵管結紮あるいは一側卵巣摘出術は閉経年齢に影響を及ぼさなかったので解析に含めた.

2 0 0 0 代償月経

著者
玉田 太朗
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.27, no.11, pp.892-893, 1973-11-10

I.症状 思春期あるいは性成熟期の女性にみられる,子宮以外の場所からの周期的な出血と定義できるが,これは月経出血とほぼ同時におこるもののほかに,月経出血をともなわないが周期的に1ヵ月に1回くらいの割合でおこる性器外出血の意味に用いられていることもある。 しかし診断上のまぎらわしさをさけるためには前者のみを代償月経とよぶべきであろう。
著者
玉田 太朗
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.192-199, 2004

ナラティヴ・ベイスト・メディスン(以下,NBM)は,10年ほど前から本邦の医療界にも普及してきたが,その特徴的な主張の一つは「患者の病い」と「病いに対する患者の対処行動」を,患者の人生と生活世界における,より大きな物語の中で展開する「物語り」であるとみなすことにより患者を全人的に診ようということである.表題は,柳澤桂子氏の同名の著書(中公文庫1988)からお借りしたものであるが,この本は彼女が30年余にわたって原因不明の腹痛発作に悩まされ,生き甲斐としていた研究からの引退も余儀なくされ,介護病院のお世話になるまでの病気の経過と医師の対応ならびに家庭的・社会的な活動性を失っていく経過に対する患者の認知と心理的反応,思考と対処行動を克明に述べたもので,まさにひとりのすぐれた生物科学者が述べた,ほとんど一生にわたる「病の物語」である.この物語の結論として彼女は,診断がつかないという不安以上に,彼女を悩ませたのは「病気そのものの苦しみよりも,医療から受けた苦しみの方がずっと大きかった」,「原因が分からないために,すべては私の気のせいであるとされたり,あるいは私が人間として未熟であり,自己中心的であるとされた.多くの場合根拠となるデータもなしに,安易にそのように結論されたことが残念である.」と記している.これはどの苦しみを患者さんに与えた原因は,医療者がひたすら苦痛の原因をbiomedicalに追求する余り,その苦痛が患者さんの人生全体に及ぼす影響を考慮し,生物的・社会心理的な視点からの全人的な対応を欠いたことがある.そのためこの「病の物語」は,ほとんど患者さんの独白である. NBMでは「治療者と患者の間で取り交わされる(あるいは演じられる)対話を,治療の重要な一部であるとみなす」(同上)とされているが,その対話はほとんどなかった.