著者
田中 善一郎
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

1947年から2009年までに実施された参議院選挙について、個々の選挙が実施された背景、各党の立候補者の数や選挙出場回数、当該選挙時の世論調査の状況と事前予測、選挙の投票率と都市部と農村部の投票率の違いについて分析を行った。さらに、選挙の結果については、各党の得票数、得票率、獲得議席数と議席率などについて、地方区(または選挙区)と全国区(比例区)とに分けて、特に前々回との比較や地域別傾向を分析した。参議院選挙は、衆議院選挙に比べて、第一党への集中度が大きくなく、その結果として、参議院は衆議院に対して、「抑制と均衡」の機能を果たしてきたことが明らかとなった。
著者
田中 善一郎
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.19-31,177, 1999-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
71

ギリシャ以来の民主政治に対して,選挙を通じて選出された代表者を通じて統治する代議制民主政治は18世紀末以来の人類にとって有望な統治のための装置となった。しかし,選挙で有権者が行う投票の内容は本質的に曖昧である。すなわち,有権者が,もしあるとしても,いかなる理由から特定の政党や候補者に投票したのかは自明ではない。本稿は,民主政治における選挙をめぐる重要なテーマの中から,代表,多数,公約,マンデート,そして,投票の手段性を取り上げ,投票と選挙結果が有する本質的な曖昧性の視点を中心に,それらが抱える問題点を検討する。現代の民主政治における選挙は,理論と実践の両面において,十分注意して取り扱わねばならない。
著者
河田 潤一 小川 有美 加藤 淳子 小林 正弥 仙石 学 田中 善一郎
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本共同研究は、日本、韓国、イタリア、フランス、南欧諸国、中束欧諸国、EUを直接の対象とする、政治汚職・腐敗、クライエンテリズム、社会資本をめぐる、実証的・理論的・比較政治学的研究を行うことを目的とするものである。我々一同は、汚職・腐敗(corruption)とクライエンテリズム(clientelism)の区別に留意しつつ、クライエンテリズムを近代化の残滓と見る従来の考え方を批判的に乗り越えようとした。そのことは、同時に、汚職とクライエンテリズムの衰徴はパラレルに進行するとの楽観的見方を克服しようとするものである。従来の近代化論的視座は、汚職とクライエンテリズムを資本蓄積(=資本主義)、合理化(=官僚制化)、政治参加(=民主主義)の多様な要求がもたらす利益の共生=相反関係が構造化する権力構造の構造的・制度的産物と見てこなかったのである。汚職とクライエンテリズムは、行政効率の点で「潤滑油」として評価すべきなのか。両者は、社会的・経済的不平等あるいは経済発展を修正するための社会の周辺部分からの正当な要求として評価すべきなのか。それらは、「社会資本」/「道徳資本」の欠如によって強化される「悪循環」の結果として理解されるべきなのか。政治汚職・腐敗を規制する法律の強化はいかなる効果を持ちうるのか。あるいは選挙制度改革や地方分権化は汚職やクライエンテリズムの抑制の万能薬でありうるのか。こうした問いに答えるべく、我々は、広範な理論的アプローチと実証的証拠を駆使し、「腐った(corrupted)」・恩顧主義的(clientelistic)慣行を形成する歴史的・制度的・社会=文化的要因の解明に努力した。こうした作業の一端は、公開報告として、2006年度世界政治学会(International Political Science Association)福岡大会のRC06(Political Sociology)なるセッションにて2006年7月10日に行った。本研究にとって益すること大であった。研究成果の一部は、Junichi Kawata (ed.), Comparing Political Corruption and Clientelism (Hampshire : Ashgate)として既に上梓されている。我々は、本共同研究の知見が、我々が生きる時代の民主主義をよりよく機能させることに役立つものと確信するものである。