著者
田中 惣治 山本 澄子
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.107-117, 2016 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9
被引用文献数
9 2

麻痺側立脚期の膝関節の動きにより片麻痺者の歩行パターンを分類し, 歩行パターンの違いにより歩行時の下肢筋活動と運動力学的特徴が異なるか, 三次元動作分析装置と表面筋電計を用いて分析した. 回復期片麻痺者35名を対象とし, 歩行時の膝関節と下腿傾斜角度から, 健常者の膝の動きと近い健常膝群 (15名), 荷重応答期と単脚支持期にそれぞれ膝関節が伸展する初期膝伸展群 (5名) と中期膝伸展群 (15名) に分類した. 結果, 健常膝群は荷重応答期で腓腹筋の筋活動を抑えながら前脛骨筋が働くため十分な背屈モーメントを発揮し, 踵ロッカーが機能した. 中期膝伸展群は荷重応答期で腓腹筋の筋活動が大きいため背屈モーメントが十分に発揮されず, 踵ロッカー機能が低下しており, 初期膝伸展群は荷重応答期で前脛骨筋の筋活動が小さく背屈モーメントが発揮されないことから, 踵ロッカーが機能しないことが明らかになった.
著者
田中 惣治
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.199-203, 2022-07-01 (Released:2023-07-15)
参考文献数
7

短下肢装具が脳卒中者の歩行にどのような影響があるか,バイメカクスの観点から理解することは,短下肢装具の選定や使用に欠かすことのできない知識である.脳卒中者の歩行を対象とし,矢状面における短下肢装具の効果について解説する.また,足継手の種類,歩行のロッカー機能と短下肢装具の作用,下腿前後傾角度(Shank to Vertical Angle:SVA)に着目した評価のポイントについて述べる.さらに症例を通じて短下肢装具の使用により脳卒中者の歩容や筋活動が変化することを示す.
著者
田中 惣治 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.873-876, 2014 (Released:2015-01-21)
参考文献数
11
被引用文献数
1

〔目的〕麻痺側立脚期に膝が伸展する歩行(extension thrust pattern :以下,ETP)と膝の動きが健常者と近い歩行(normal knee pattern:以下,NKP)の片麻痺者に対し歩行時の麻痺側足関節の筋活動を分析した.〔対象〕対象は回復期片麻痺者14名とした.〔方法〕自由速度の歩行での麻痺側立脚期における麻痺側前脛骨筋と腓腹筋の筋活動を測定した.〔結果〕NPは単脚支持期と比較し荷重応答期で前脛骨筋の筋活動が有意に大きかったが,ETPは立脚期の間で前脛骨筋の活動に有意差を認めなかった.腓腹筋の筋活動は両者において立脚期の間で有意差を認めなかった.〔結語〕麻痺側立脚期に膝が伸展する要因として麻痺側荷重応答期の前脛骨筋の筋活動が関与している可能性が示された.
著者
田中 惣治 本島 直之 山本 澄子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11359, (Released:2018-06-07)
参考文献数
23

【目的】片麻痺者の麻痺側膝関節の動きによる歩行パターン分類を基に,歩行パターン別に歩行各相の割合が短縮,もしくは延長するかを調べ,その運動学・運動力学的要因を分析した。【方法】回復期片麻痺者121 名を対象とし,三次元動作分析装置と床反力計を用いて歩行を計測した。【結果】歩行パターンにより違いがみられた時間因子は単脚支持期と前遊脚期時間であった。前遊脚期時間はこの時期に膝関節が十分屈曲するかが重要となり,足底屈モーメントによるPush off の減少が膝屈曲角度の低下に影響している。特に荷重応答期に膝関節が過伸展する歩行パターンは,前遊脚期で膝屈曲モーメントが大きく膝関節が屈曲しにくくなり,前遊脚期時間が延長するのが特徴である。【結論】片麻痺者の歩行パターンにより前遊脚期時間に差がみられ,その運動学・運動力学的要因は歩行パターンで異なることが明らかになった。