- 著者
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田口 秀子
河本 美智子
- 出版者
- 一般社団法人 日本家政学会
- 雑誌
- 家政学雑誌 (ISSN:04499069)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.7, pp.603-613, 1986
乳児の適切な衣服着装を考えるための資料とすることを望み, 乳児を対象として, その衣服着装状態を母親に対するアンケート方法により回答を得て, 母親からみた乳児の衣服着装状態を検討した.<BR>乳児における衣服着装状態は, 各季節を通じて「ちょうどよさそうである」と思っている母親が室内では82~100%あり, 戸外では46~70%であった.しかし, 快適感では春, 冬に室内で11~12%の母親が「不快」ではないかと感じており, 戸外では20~49%の高い割合を示した.秋には室内, 戸外とも「快適である」と思っている母親は100%であり, 秋の戸外で14%の母親が「涼しそうである」とする傾向は快適感としてとらえているようである.また, 季節別にみて夏では蒸暑感を, 春と冬には冷感を感じていると回答した母親の割合が高い.しかし, 母親からみた乳児の厚着および薄着感は, 室内と戸外での傾向が似ており, 春, 夏, 冬においては「普通である」と思っている母親が, 室内で50~89%, 戸外は64~83%と多く, 秋では室内で41%, 戸外で36%の母親が「やや厚着である」と思っており, 全体的に春, 夏は薄着, 秋, 冬はやや厚着の傾向であった.<BR>母親からみた乳児の身体局部における冷感は, 春, 秋, 冬にあり, 室内, 戸外とも衣服で被覆されていない, 手, 足, 首, 顔, 頭にあると思う母親が多い.<BR>乳児の衣服着装の特徴としては, おむつカバーを除くすべての衣服が, 月齢よりも大きく, おむつカバーのように, その衣服の機能上フィット性をより望むもの以外は, 乳児の成長度を加味して大きなサイズの衣服を選択しているようである.それらの材質は, 肌着, ブラウス, Tシャツ, ベビードレス, カバーオール, ショートパンツ, おむつ, よだれかけ等, 直接肌に触れる割合の多い衣服がほとんどであるために, 取り扱いやすい綿が選ばれている.しかし, 乳児の月齢が増すにしたがって, 耐久性や耐洗濯性のある材質を着装させている.<BR>乳児の衣服着装パターンの特徴は, 各季節ともロンパース, カバーオールが主体で, ベビードレスは春に着装させる割合が比較的多く, 他の季節での着装は少ない.夏には肌着を着装させないで, Tシャツ+ズボンまたはロンパースのみという薄着の着装もあるが, 春, 秋, 冬では, おむつ+おむつカバー+肌着+カバー・オールまたはロンパース・ブラウス+ズボン+よだれかけが代表的なパターンである.なお, くつ下は夏, 秋に用いることは少ない.また, 家族構成別に乳児の着装パターンの特徴をみると, 祖母同居の家庭では父母のみの家庭にくらべ, 春, 冬に乳児の衣服着装枚数が多く厚着であり, 夏は薄着の傾向である.また, 授乳の方法別にみた乳児の着装パターンは, 秋, 冬の母乳児では薄着, 混合乳児ではやや厚着の傾向がみられた.