著者
登倉 尋実 原 文江 岡田 守彦 目方 文夫 大沢 済
出版者
THE PHYSIOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
The Japanese Journal of Physiology (ISSN:0021521X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.147-152, 1975 (Released:2011-06-07)
参考文献数
12
被引用文献数
10 11

Thermoregulatory responses in four male adult Japanese macaques and four male adult crab-eating macaques, weighing 6-12kg and 6.2-8kg, respectively, were compared at ambient temperatures (Ta) ranging from 5° to 25°. The average values±S. E. for some physiological measurements made at Ta of 25° in the Japanese macaque and the crab-eating macaque, respectively, were as follows: resting metabolic rate; 47.6±5.0 and 42.5±1.7W/M2; tissue conductance; 11.9±0.8 and 8.9±0.8W/M2/°; respiratory evaporative heat loss; 4.1±0.3 and 3.2±0.5W/M2; rectal temperature; 38.6±0.1 and 37.4±0.2°; mean skin temperature; 34.0±0.3 and 31.2±0.1°. When Ta was lowered stepwise from 25° to 20, 15, 10, and 5° successively, and maintained constant at each temperature level for 1 hr, metabolic heat production gradually increased in both species. When Ta was lowered from 10° to 5°, the crab-eating macaque did not show further increase in heat production and the result was a loss of thermal equilibrium with rectal temperature continuing to fall. On the other hand, the Japanese macaque maintained thermal balance even at Ta of 5°. Tissue conductance, which was significantly higher in the Japanese macaque than in the crab-eating macaque at Ta of 5, 15, and 25°, decreased in both species as Ta was lowered from 25° to 15 and 5°. The specific differences in thermoregulatory responses are considered to be adaptational, relative to the natural habitat of the two species studied. Received
著者
登倉 尋実 飯塚 幸子 奥窪 朝子 田口 秀子 田村 照子 大野 静枝
出版者
奈良女子大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1989

"健康・快適"をキャッチフレ-ズとして,様々な特殊機能を付記していることを誇大な表示と広告で示した衣料品について,平成元年度に実態調査を行った結果,着用効果が確認されていないものや弊害が考えられるものが含まれていた。広告の実態が,果して表示通りの機能を有しているかどうかを,また人体生理に与える影響について,実験室及びフィ-ルドにおける着用実験で,平成2年度から3年度に調べ,得られた主な実見は女下の通りである。登倉はウォタ-ベットについて,使用時には通常のベット使用時よりも深い睡眼が得られるが水温設定には注意を要することを報告し,飯塚は睡眼実験によって,特殊機能を付記した部位別温度制御可能電気毛布の問題点をあげ,伊藤は拘束衣服の着心他と整容効果は数gf/cm^2の被服圧によって影響を受けることを,大野は女子大生約50名について,サポ-トタイプパンストの使用実態,着用感のアンケ-ト調査結果と,市販のサポ-トタイプパンストを収集分類して10種を選んで行った着用実験の結果を,奥窪は成人女子被験者及び発汗マネキンによるサウナス-ツ着用実験の結果をス-ツ下に着用する肌着素材及び発汗量レべルとの関連について,田村は,パンストによる過度の身体圧迫は血流を抑制することを,出口は健康サンダルには明確な仕様書や品質表示がないこと,またサンダル底面の刺激点と使用者の土踏まずとの適合性は個人差が大きいことを,栃原はー5℃の人工気候室内で一般のスキ-ウエアと,特殊加工し保温性に優れると称しているスキ-ウェア-とを着用した実験結果を,緑川は寒冷環境において特殊下半身加温用足温器を着装時には非着装時よりも作業能率低下が少なくなることを,中谷は衛生加工は洗濯によりその効力が失われることなどを,綿貫はハイサポ-ト型パンテイストッキングを着用すると心臓への静脈還流量が増し血行が改善された可能性があることを報告した。
著者
緑川 知子 登倉 尋実
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.421-427, 1992-05-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
18
被引用文献数
2

暑熱放射熱存在下での帽子の防暑効果について明らかにし, それが温熱生理反応に与える影響を調べることを目的に, 環境温28℃においてコントロール値をとったのちに, 人工気候室の環境温を約15分かけて35℃に上昇させるとともに, 400Wの陽光ランプ2個を用いて, 被験者の後ろ上方50cmの位置から, ランプが後頭部表面に直角にあたるように (Fig.1参照) 60分照射した.これと同時に着帽時には着帽した、鼓膜温・直腸温・皮膚温・心拍数・発汗速度・帽子表面温度・衣服内気候を測定し, 着帽時と無帽時について比較した.得られた主な知見は次のとおりである.(1) 鼓膜温ならびに直腸温のレベルと上昇度は, 着帽時に比べ無帽時に有意に高くなった.(2) 頭部表面温は無帽時には着帽時に比べ, 上昇速度が速く有意に高いレベルになった.(3) 着帽時に比して無帽時に, 発汗が速く始まり発汗量も多かった.熱が頭部に流入した結果, 帽子表面温と頭部表面温が上昇した (Fig.3) が, 着帽により熱の流入を防ぐ効果が現れて, そのレベルは着帽時に低い値になった.その効果は, 鼓膜温, 直腸温にも同様の変化をもたらし, 着帽時においてこれらの値は低くなった (Fig.2).無帽時の鼓膜温が37℃にほぼ達したとき (15分目), 鼓膜温のレベルに有意差が現れたとともに発汗が認められた.発汗開始は, 無帽時に15.3±2.3分で, 着帽時の22.2±3.4分より有意に速かった (Fig.4).鼓膜温が37℃に上昇すると, いずれの条件においても発汗が観察された.そして, 無帽時に鼓膜温のレベルが高かったために, 発汗中枢の活動が高くなり, 発汗量はすべての被験者において無帽時に多い値が得られた (Fig.4).本実験において無帽時には熱流入が多かったが, これに対して放射, 対流, 伝導による熱放散だけで熱平衡を保つことができなくなったために, 蒸発による熱放散を増加させるために発汗が生じて蒸発による熱放散を行った.発汗が速く始まって蒸発による熱放散が増加したので直腸温に差が現れるのが遅れた (25分目) と考えられる.鼓膜温のレベルと上昇度が着帽時に比べ無帽時に有意に高くなったのは, 無帽時に頭部表面温の上昇速度が速くレベルが有意に高く保たれたことと関係している.放射熱が後頭部上方50cmから加えられたために頭部表面温が上昇し, 上矢状静脈洞・横静脈洞・海綿静脈洞から流入した静脈血が加温されて, 鼓室近くを上行する内頸動脈血が内頸静脈血液と対向流熱交換により加温されたために, 鼓膜温が上昇したと考察した.
著者
登倉 尋実 緑川 知子 登倉 尋実
出版者
奈良女子大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

実験1)平成8年度の実験で両大腿部加圧時に唾液消化能力への被服圧の影響が大きいことがわかったので、今回は両大腿部に10mmHg,2mmHg,30mmHgの圧力を加えて加圧量により唾液消化能力・自律神経機能がどの様な影響を受けるかを調べた。被験者の両大腿部に血圧測定用カフを巻いただけの非加圧期間30分の後、60分カフに空気を送り加圧を行った。唾液消化能力の低下がすべての加圧時に、唾液分泌速度の低下、唾液中アミラーゼ濃度の低下が20mmHg,30mmHg加圧時に見られた。唾液中カルシウム濃度の上昇が30mmHgで、コルチゾール濃度の上昇は20mmHgで顕著に見られた。光に対するボタン押し随意反応時間は20mmHg、音に対する随意反応時間は30mmHg加圧時に遅延する傾向が見られた。皮膚圧迫により心臓における副交感神経活動の有意な亢進と交感神経活動の抑制が認められ、心拍数は有意に減少した。今回の加圧量と加圧部位においては交感神経系地域性能のより、加圧が唾液腺への副交感神経活動を抑制していたことが示唆された。実験2)実験において唾液腺への副交感神経が加圧により抑制されていることが示唆されたので、今回はさらに加圧によるストレスが唾液腺に影響を与えた可能性があると考え、ストレス下での加圧を試みた。ストレスとして環境温35±0.5°C,相対湿度60±3.0%の人工気候室内で暑熱負荷を行い体温調節反応も併せて測定した。その結果加圧時には発汗量が抑制され深部体温の上昇度が有意に多くなった。唾液中コルチゾール・尿中カテコールアミン類・アンケートによる疲労感・不快感が加圧時に上昇を示した。唾液分泌量の減少が認められた。以上のことから、被服圧は加圧部位における直接的な影響からは計り知れない生理的影響を,自律神経系ストレス系を通して体中に生じていることが示唆された。