著者
奥窪 朝子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.11-16, 1975-01-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
4

家庭における有機溶剤を用いてのしみ抜きについて, 衛生学的見地からの検討を行った.1) アンケートの結果, 使用溶剤はベンジンが圧倒的に多いがCCl4やC6H6の使用もみられた.実施頻度の高い冬期, 換気に配慮して作業を行っている者は31%に過ぎなかった.また, しみ抜き作業時に頭痛, 吐気などを経験したことのある者が26%にみられた.2) 実態に基いて設定した標準的な作業条件で, 冬期, 窓を閉じた室内において, ベンジン, CCl4, C6H6など7種の溶剤を用いて作業した場合の気中溶剤ガス濃度は, C2H5OHを除き, 最高許容濃度 (MAC) を越える場合が多かった.CCl4やC6H6ではMACの約10倍の高濃度ガスが検出された.窓開放時は, ベンジンでは気中ベンジンガス濃度をMAC以下に保つことができたが, CCl4, C6H6ではMAC以下に低下できなかった.3) 自覚症状を, 冬期, 窓を閉じた室内でベンジンを用いてのしみ抜き時について調査した結果, 一過性ではあったが頭痛, 吐気などの訴えが25%の者にみられた.以上の成績から, 溶剤を用いてのしみ抜きに当っては, 衛生上の配慮が必要であるように思われる.毒性の強いCCl4やC6H6などの家庭における使用は, 絶対に避けるべきであると考える.
著者
奥窪 朝子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. II, 社会科学・生活科学 (ISSN:03893456)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.101-104, 1971

冬期の着衣量に及ぼす諸要因の影響を,女子大学生254名のうち,体調良好で,温熱感覚が快適であると答えた者103名について,数量化理論を応用して検討した。着衣量は最小291g/m^2,最大1014g/m^2で,極めて幅広の分布を示し,皮脂厚,厚着の習慣および耐寒性との偏相関係数はそれぞれ0.41,0.36および0.30で,有意の相関が認められた。スポーツ実施の有無,食の好み,身体精神的自覚症数,性格(情緒安定性,向性)母の年令および末っ子か否か等の要因との間の相関は有意でなかった。実測着衣量と皮脂厚,厚着の習慣および耐寒性に関して求められた重みによって算出した予測着衣量との相関係数は0.58であった。それら3要因によって着衣量の個人差がかなりまで説明されるように思われるが,決して十分とはいえないであろう。The subjects were 103 female college students who replied to be in the best health and comfortable in thermal feeling. The items adopted were as follows; skinfold thickness, cold-resistance, habit of heavy dressing, sportsman or not, liking about food, physical and mental complaints, emotion and aptitude, age of mother and youngest child or not. For the statistical analysis Hayashi's theory of quantification was applied. The significant partial correlation was recognized between weight of clothing being worn and skinfold thickness, habit of heavy dressing, cold-resistance, respectively. With the other items, however, no significant correlation was recognized. The correlation coefficient between values determined and those estimated applying the weight-values given to each category of skinfold thickness, habit of heavy dressing and cold-resistance was 0.58, showing that there must be other items which have been left out.
著者
小川 ソノ 奥窪 朝子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. II, 社会科学・生活科学 (ISSN:03893456)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.89-97, 1974

小学生1年から6年まで1,386名(男子702名,女子684名)を対象とし,着衣の選択における主体が学童であるか否かについての実践状況を,質問紙法により調査した。取上げた項目は,A)通学用衣服についてのデザインや色の選択,B)家庭用衣服についてのデザインや色の選択,C)通学用衣服についての寒暖に対する調節,D)家庭用衣服についての寒暖に対する調節である。いずれの項目においても男女とも,高学年になるに従い自分で行う者が増加,母へ依存する者が減少し,着衣調節における自主性の発達が認められた。自分で行う者の率は,男女,各学年ともAが最も低く,Dが最も高い。低学年では男女ともAに次いでCが低く,外出時の着衣調節における自主性の劣りが認められた。中,高学年においてDに次ぐ高率を示したのは,男子ではC,女子ではBであり,また,Bの率は女子が男子よりも高く,男女差が認められたのは興味深い。全項目を通じてのおおよその傾向を示す目安として算出した着衣調節指数をもとに,男女差をみると,自分で行う者(着衣調節指数83~100)の率は,低学年では有意差が認められなかったが,中,高学年では女子のほうが男子より高く,女子での着衣調節における自主性は,男子よりほぼ1学年早い発達を示していた。6年男子の41%に対し,女子のそれは62%であった。しかし,着衣調節指数が100に達した学童の率は,最高を示した6年女子においても20%に過ぎず,着衣調節における自主性の発達は遅れているように思われる。一方,母親が職業を持たない学童,ひとりっ子や末っ子,母親が高令である学童において,母へ依存する者の率が高かった成績は注目すべきであろう。A survey on the children's growth of independence in choosing of clothes was carried out by questionnaire to 1386 pupils (702 boys and 684 girls) from the first-year to the sixth-year. In questionnaire we dealt with four items to choose clothes; A) design and color of a school wear or uniform, B) design and color at home, C) school wear suiting to climate, and D) home wear suiting to climate. With the advance in school grades, both boys and girls who themselves choose clothes increase in rate, and the rate of children who depend on their mothers in choosing clothes decreases in every item. Even in the sixth-year girls the parcentage of pupils who themselves choose clothes in all the items is only 20% and it is the highest value in this survey. Then it is suggested that children's growth of independence in choosing clothes is slow. The rate of children themselves choosing clothes is highest in the item D and lowest in A in any of the lower, middle or upper grades. In the lower grades the item C shows to be low next to A. Therefore it reveals that children's independence in choosing outdoor clothes is inferior to the case of choosing home wear in both boys and girls. The rate of pupils who themselves choose clothes in all the items or wish for just a little help of their mothers in some items is higher in girls than in boys in the middle and upper grades, and then girls' growth of independence in choosing clothes is found to be superior to boys' one by about one school year, while no significant difference is recognized between boys and girls in the lower grades. On the other hand, the rate of depending on their mothers entirely or almost entirely in all the items is higher in the case of pupils whose mothers have no occupation or are advanced in years, andor who are the only or the youngest.
著者
登倉 尋実 飯塚 幸子 奥窪 朝子 田口 秀子 田村 照子 大野 静枝
出版者
奈良女子大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1989

"健康・快適"をキャッチフレ-ズとして,様々な特殊機能を付記していることを誇大な表示と広告で示した衣料品について,平成元年度に実態調査を行った結果,着用効果が確認されていないものや弊害が考えられるものが含まれていた。広告の実態が,果して表示通りの機能を有しているかどうかを,また人体生理に与える影響について,実験室及びフィ-ルドにおける着用実験で,平成2年度から3年度に調べ,得られた主な実見は女下の通りである。登倉はウォタ-ベットについて,使用時には通常のベット使用時よりも深い睡眼が得られるが水温設定には注意を要することを報告し,飯塚は睡眼実験によって,特殊機能を付記した部位別温度制御可能電気毛布の問題点をあげ,伊藤は拘束衣服の着心他と整容効果は数gf/cm^2の被服圧によって影響を受けることを,大野は女子大生約50名について,サポ-トタイプパンストの使用実態,着用感のアンケ-ト調査結果と,市販のサポ-トタイプパンストを収集分類して10種を選んで行った着用実験の結果を,奥窪は成人女子被験者及び発汗マネキンによるサウナス-ツ着用実験の結果をス-ツ下に着用する肌着素材及び発汗量レべルとの関連について,田村は,パンストによる過度の身体圧迫は血流を抑制することを,出口は健康サンダルには明確な仕様書や品質表示がないこと,またサンダル底面の刺激点と使用者の土踏まずとの適合性は個人差が大きいことを,栃原はー5℃の人工気候室内で一般のスキ-ウエアと,特殊加工し保温性に優れると称しているスキ-ウェア-とを着用した実験結果を,緑川は寒冷環境において特殊下半身加温用足温器を着装時には非着装時よりも作業能率低下が少なくなることを,中谷は衛生加工は洗濯によりその効力が失われることなどを,綿貫はハイサポ-ト型パンテイストッキングを着用すると心臓への静脈還流量が増し血行が改善された可能性があることを報告した。