著者
山中 千恵 伊藤 遊 百瀬 英樹 Yamanaka Chie Ito Yu Momose Hideki
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間学部篇 (ISSN:21853355)
巻号頁・発行日
no.14, pp.39-50, 2015

本論文の目的は,台湾南投県にあるテーマパーク型宿泊施設「妖怪村主題飯店-渓頭明山森林会館」が作る南投渓頭妖怪村の事例をとりあげ,ポピュラー文化を活用した観光資源創造の可能性について検討することにある.非場所的な性質を持つポピュラー文化が,その特質ゆえにローカル化を容易にし,それによって,あらたな場所性を創造していくことを可能にする過程を確認する. 調査を通じて明らかになったのは,「妖怪」をめぐるポピュラー文化の再場所化を支えるのが,そこに書き込まれた「物語」を消費することではなく,むしろ,そうしたテキスト間の横断をうながす「キャラクターの自律性」という,日本に顕著にみられる能動的なポピュラー文化消費の形式と,それを支えるシステムだということである.こうしたシステムの存在に注目することで,ポピュラー文化のグローバルな消費をめぐる議論を,ファンの受容行動にとどまらない文脈へと接続することが可能になると思われる.
著者
尹 靖水 百瀬 英樹 黒木 保博 中嶋 和夫
出版者
同志社大学
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.1-18, 2011-03

本調査研究は,台湾の多文化家族の夫が日常生活の中で妻から受けるHusband Abuseの頻度(潜在的ストレッサー)と夫の妻に対する否定的感情(ストレス認知)との関連性を明らかにすることを目的とした。調査には,台北市,高雄市,台北県,桃園県に在住する多文化家族の夫が参加した。調査内容は,属性(夫の現在と結婚時の年齢,宗教,学歴,収入,家族構成,結婚継続期間,妻の現在と結婚時の年齢,国籍,宗教,コミュニケーション能力),夫が妻から被る虐待(Husband Abuse)の頻度,妻に対する否定的な感情で構成した。回収された186人のデータ(回収率93.0%)を基礎に,多文化家族の夫が妻から被る虐待(7因子)を独立変数,夫の妻に対する否定的感情を従属変数とする因果関係モデルのデータへの適合性を,構造方程式モデリングで解析した。このとき,統制変数として夫の収入と妻のコミュニケーション能力を投入した。その結果,前期の因子別に検討した因果関係モデルはそれぞれデータに適合した。また,前記Husband Abuseの妻に対する否定的感情に対するパス係数は,「性的虐待」が0.704,「社会的虐待」が0.641,「心理的虐待」が0.597,「言語的暴力」が0.576,「身体的虐待」が0.496,「経済的虐待」が0.412,「ネグレクト」が0.358となっていた。潜在的ストレッサーがストレス認知に影響するというラザルスのストレス認知理論を前提にするなら,多文化家族のHusband Abuse問題を,社会福祉学的な生活ニーズと位置づけ,積極的に解消することの必要性が示唆された。