著者
山中 千恵 伊藤 遊 百瀬 英樹 Yamanaka Chie Ito Yu Momose Hideki
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間学部篇 (ISSN:21853355)
巻号頁・発行日
no.14, pp.39-50, 2015

本論文の目的は,台湾南投県にあるテーマパーク型宿泊施設「妖怪村主題飯店-渓頭明山森林会館」が作る南投渓頭妖怪村の事例をとりあげ,ポピュラー文化を活用した観光資源創造の可能性について検討することにある.非場所的な性質を持つポピュラー文化が,その特質ゆえにローカル化を容易にし,それによって,あらたな場所性を創造していくことを可能にする過程を確認する. 調査を通じて明らかになったのは,「妖怪」をめぐるポピュラー文化の再場所化を支えるのが,そこに書き込まれた「物語」を消費することではなく,むしろ,そうしたテキスト間の横断をうながす「キャラクターの自律性」という,日本に顕著にみられる能動的なポピュラー文化消費の形式と,それを支えるシステムだということである.こうしたシステムの存在に注目することで,ポピュラー文化のグローバルな消費をめぐる議論を,ファンの受容行動にとどまらない文脈へと接続することが可能になると思われる.
著者
伊藤 遊
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.35-40, 2022-02-01 (Released:2022-03-22)
参考文献数
8

本稿の目的は、近年急速に社会的な関心の対象となりつつある「マンガ原画」のアーカイブについて、とりわけ2010年代以降の状況を報告することである。マンガ文化と社会の関係性という背景にも触れつつ、ここでは特に、文化庁によるマンガ原画アーカイブ事業における具体的な実践を紹介する。アーカイブが公的な事業として展開しているという事実は、マンガ文化に対する社会的な評価が変化してきたことを示す一方、アーカイブ作業の現場で顕在化する脆弱性や膨大さといったポピュラー文化の本質は、そうした性質とは真逆の形で定義付けられていた近代以降の「文化・芸術」概念を揺さぶり、拡大させていることもわかるだろう。
著者
村田 麻里子 パスキエ オレリアン 山中 千恵 伊藤 遊
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.57-81, 2014-10-31

This paper reports on the special exhibition of Korean comics ‘Flowers that Never Wilt’ at the 2014 Angouleme International Comics Festival. It also analyzes the ‘politics’ involved in the festival site and the exhibition display. The exhibition, which dealt with the issues of ‘comfort women’, raised disputes among the three involved countries: Korea, Japan and France. This paper tries to carefully examine the cause of these disputes, and to clarify the differences or the gaps in their perspectives towards exhibiting such political issues.本稿は、フランス・アングレーム市で毎年開催されるアングレーム国際BDフェスティバルに出展された韓国漫画の展覧会「枯れない花」展を、現場のレポートを交えて概観するとともに、そこにおいて顕在化した場と展示の〈政治性〉についての考察を行うものである。これによって、日韓仏三国には、〈政治性〉をめぐる解釈に齟齬があること、またここには日韓間の問題だけではなく、ヨーロッパからみた「オリエント」としてのアジアという問題も、影を落としていることが明らかになった。
著者
山中 千恵 伊藤 遊 村田 麻里子
出版者
日本マンガ学会
雑誌
マンガ研究
巻号頁・発行日
vol.17, pp.76-85, 2011-03

近年「メディア芸術」に重点化した文化政策への関心が高まっており、中でもマンガを扱う文化施設が増えている。しかし、ちまたに流通しているマンガをあえて文化施設に収めること、またそれを人々が見に(読みに)訪れるとはいかなることなのだろうか。本論は、京都国際マンガミュージアムに注目し、2009年度に実施した来館者調査をもとに上記の問いに答えようとするものである。調査の結果、利用者の行動としては、館内でマンガを読んで過ごす図書館的な行動と、展示を見るように館内を観覧するような博物館的な行動に加え、このどちらにも回収できないような行動がみられた。本論ではこの3つ目の行動パターンに注目し、その特徴を分析する。このことを通じて、マンガ文化施設とは、単にマンガをどこかに集めればよい、あるいはマンガの展示を洗練させればよいという発想では捉えきれず、むしろ〈マンガ環境〉に注目した分析が今後必要とされることがわかった。
著者
村田 麻里子 山中 千恵 伊藤 遊 YAMANAKA Chie 伊藤 遊 ITO Yu 谷川 竜一 TANIGAWA Ryuichi
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.95-113, 2012-03

本稿は、宝塚市立手塚治虫記念館を取り上げ、館がいかなるコンセプトのもとに設計・運営されているのか、訪れる来館者がその空間をいかに受容しているのかに注目して行った調査結果を考察するものである。地域活性化・地域振興を掲げたマンガ関連文化施設の一例として、その現状を来館者の行動から詳細に繙き、地域振興という言葉が抱える矛盾や、そもそもマンガを博物館などで扱うことの意義や課題が見過ごされてきた点について分析・考察する。This paper questions the purpose of manga museums intended to promote regional development. This has been at rend for more than 20 years in Japan,an d Tezuka Osamu Manga Museum is one of the earliest museums established for such purpose. Through conducting a visitor survey and analyzing the visitor's movements and attitudes,w e aim to understand what it means to adopt manga in a museum for regional development.
著者
村田 麻里子 パスキエ オレリアン 山中 千恵 伊藤 遊
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.57-81, 2014-10

※本研究の一部は、平成24年度関西大学在外研究による成果である。※本論文は、2013年度仁愛大学共同研究費およびJSPS 科学研究費・若手研究(B)研究課題番号:24730047 (代表 山中千恵)による研究成果の一部である。This paper reports on the special exhibition of Korean comics 'Flowers that Never Wilt' at the 2014 Angouleme International Comics Festival. It also analyzes the 'politics' involved in the festival site and the exhibition display. The exhibition, which dealt with the issues of 'comfort women', raised disputes among the three involved countries: Korea, Japan and France. This paper tries to carefully examine the cause of these disputes, and to clarify the differences or the gaps in their perspectives towards exhibiting such political issues.本稿は、フランス・アングレーム市で毎年開催されるアングレーム国際BDフェスティバルに出展された韓国漫画の展覧会「枯れない花」展を、現場のレポートを交えて概観するとともに、そこにおいて顕在化した場と展示の〈政治性〉についての考察を行うものである。これによって、日韓仏三国には、〈政治性〉をめぐる解釈に齟齬があること、またここには日韓間の問題だけではなく、ヨーロッパからみた「オリエント」としてのアジアという問題も、影を落としていることが明らかになった。