著者
山中 千恵
出版者
仁愛大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究を通じて日本の戦争体験を描いたマンガやアニメが受容されるとき、作品の評価や作品の読書・視聴体験が、かならずしも各国における戦争の記憶や日本の歴史的問題と直接的にむすびつけられて語られるわけではないということが明らかになった。語りは、受容された国におけるマンガ・アニメ文化の位置づけと、読者の「メディア体験史」との関係から、異なるやり方で歴史意識と接続される。以上の結果から、今後の研究において、個人の記憶と集合的記憶の間にメディア体験それ自体が生み出す記憶という中間領域を想定し、考察を進める必要があることがわかった。
著者
山中 千恵
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間学部篇 (ISSN:21853355)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.69-77, 2011-12-30

近年,マンガやアニメなどのポピュラー文化を博物館,美術館,図書館などの文化施設におさめ,その集客力をもって地域活性化を図ろうとする動きがすくなくない.だが,これらの施設は,なにをもって「成功」したとみなせるのだろうか.今後こうした施設の設立を検討している人々は,何を目指し,先行の施設を参照すべきなのか.本稿では,こうした問題意識に基づき,韓国において設立されたマンガ関連施設「韓国漫画映像振興院」(富川市)を事例としてとりあげ検討する.当該施設がいかなる政策的背景のもと設立されたのかを概観し,それがマンガの雑種性や多様性を引き出すというよりは,「近代的なミュージアム」の思想にのっとって運営されていることを指摘する.
著者
山中 千恵美 池上 幸江 青江 誠一郎
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.385-391, 2011 (Released:2012-04-25)
参考文献数
15

カルシウムの摂取量と形態の違いがKKマウスの腹腔内脂肪蓄積に及ぼす影響を比較した。KK/Taマウス3群に, カルシウム含量が0.5%となるように炭酸カルシウム (NC) あるいはミルクカルシウム (MC) を配合した飼料, あるいは, カルシウム含量が0.1%となるように炭酸カルシウム (LC) を配合した飼料をそれぞれ給餌した。終体重, 飼料効率はLC群がNC, MC群に比べて有意に高かった。肝臓脂質蓄積量は, LC群がNC, MC群に比べ有意に高かった。血糖値, 血清インスリンおよびレプチン濃度は, LC群がNC, MC群に比べて有意に高かった。血清PTH濃度は, MC群がLC群に比べて有意に低かった。各腹腔内脂肪組織の重量は, LC群がNC, MC群に比べて有意に増加した。MC群とNC群の間に有意な差は検出されなかった。以上の結果, カルシウムの摂取量の低下は, 腹腔内脂肪蓄積を促進することが認められ, おそらく, インスリン分泌の過剰によると考えられた。しかし, ミルクカルシウムと炭酸カルシウム間では, 腹腔内脂肪蓄積に対して顕著な差は見られなかった。
著者
山中 千恵 伊藤 遊 百瀬 英樹 Yamanaka Chie Ito Yu Momose Hideki
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要. 人間学部篇 (ISSN:21853355)
巻号頁・発行日
no.14, pp.39-50, 2015

本論文の目的は,台湾南投県にあるテーマパーク型宿泊施設「妖怪村主題飯店-渓頭明山森林会館」が作る南投渓頭妖怪村の事例をとりあげ,ポピュラー文化を活用した観光資源創造の可能性について検討することにある.非場所的な性質を持つポピュラー文化が,その特質ゆえにローカル化を容易にし,それによって,あらたな場所性を創造していくことを可能にする過程を確認する. 調査を通じて明らかになったのは,「妖怪」をめぐるポピュラー文化の再場所化を支えるのが,そこに書き込まれた「物語」を消費することではなく,むしろ,そうしたテキスト間の横断をうながす「キャラクターの自律性」という,日本に顕著にみられる能動的なポピュラー文化消費の形式と,それを支えるシステムだということである.こうしたシステムの存在に注目することで,ポピュラー文化のグローバルな消費をめぐる議論を,ファンの受容行動にとどまらない文脈へと接続することが可能になると思われる.
著者
村田 麻里子 パスキエ オレリアン 山中 千恵 伊藤 遊
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.57-81, 2014-10-31

This paper reports on the special exhibition of Korean comics ‘Flowers that Never Wilt’ at the 2014 Angouleme International Comics Festival. It also analyzes the ‘politics’ involved in the festival site and the exhibition display. The exhibition, which dealt with the issues of ‘comfort women’, raised disputes among the three involved countries: Korea, Japan and France. This paper tries to carefully examine the cause of these disputes, and to clarify the differences or the gaps in their perspectives towards exhibiting such political issues.本稿は、フランス・アングレーム市で毎年開催されるアングレーム国際BDフェスティバルに出展された韓国漫画の展覧会「枯れない花」展を、現場のレポートを交えて概観するとともに、そこにおいて顕在化した場と展示の〈政治性〉についての考察を行うものである。これによって、日韓仏三国には、〈政治性〉をめぐる解釈に齟齬があること、またここには日韓間の問題だけではなく、ヨーロッパからみた「オリエント」としてのアジアという問題も、影を落としていることが明らかになった。
著者
山中 千恵 伊藤 遊 村田 麻里子
出版者
日本マンガ学会
雑誌
マンガ研究
巻号頁・発行日
vol.17, pp.76-85, 2011-03

近年「メディア芸術」に重点化した文化政策への関心が高まっており、中でもマンガを扱う文化施設が増えている。しかし、ちまたに流通しているマンガをあえて文化施設に収めること、またそれを人々が見に(読みに)訪れるとはいかなることなのだろうか。本論は、京都国際マンガミュージアムに注目し、2009年度に実施した来館者調査をもとに上記の問いに答えようとするものである。調査の結果、利用者の行動としては、館内でマンガを読んで過ごす図書館的な行動と、展示を見るように館内を観覧するような博物館的な行動に加え、このどちらにも回収できないような行動がみられた。本論ではこの3つ目の行動パターンに注目し、その特徴を分析する。このことを通じて、マンガ文化施設とは、単にマンガをどこかに集めればよい、あるいはマンガの展示を洗練させればよいという発想では捉えきれず、むしろ〈マンガ環境〉に注目した分析が今後必要とされることがわかった。
著者
村田 麻里子 山中 千恵 伊藤 遊 YAMANAKA Chie 伊藤 遊 ITO Yu 谷川 竜一 TANIGAWA Ryuichi
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.95-113, 2012-03

本稿は、宝塚市立手塚治虫記念館を取り上げ、館がいかなるコンセプトのもとに設計・運営されているのか、訪れる来館者がその空間をいかに受容しているのかに注目して行った調査結果を考察するものである。地域活性化・地域振興を掲げたマンガ関連文化施設の一例として、その現状を来館者の行動から詳細に繙き、地域振興という言葉が抱える矛盾や、そもそもマンガを博物館などで扱うことの意義や課題が見過ごされてきた点について分析・考察する。This paper questions the purpose of manga museums intended to promote regional development. This has been at rend for more than 20 years in Japan,an d Tezuka Osamu Manga Museum is one of the earliest museums established for such purpose. Through conducting a visitor survey and analyzing the visitor's movements and attitudes,w e aim to understand what it means to adopt manga in a museum for regional development.
著者
谷本 奈穂 東 園子 猪俣 紀子 増田 のぞみ 山中 千恵
出版者
関西大学総合情報学部
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.37-50, 2013-08-10

本論は,日本アニメが海外でどのようにして読み取られるかについて,キャラクターの図像に焦点を当てながら考察するものである.具体的にはフランスの学生に対し,キャラクターを10種類提示して出身地を予測させた.その結果,出身地をキャラクターの外見に基づいて判断する場合と,マンガ・アニメに関する知識に基づいて判断する場合があると分かった.日本では「自然主義的リアリズム」と「まんが・アニメ的リアリズム」の二つがあり,その二つが作品の消費形態を規定するとされるが,フランスでも二つの読み取りが行われている(二つのリテラシーがある)ことが確認できた.This paper examines and investigates how Japanese animation is being interpreted in France. To this end, we focus on character iconography interpretation. We presented French students with ten types of characters and asked them to predict the fictional birth places of these characters. The results showed that the students came to their conclusions based on either the appearance of the characters or their knowledge of manga and anime. In Japan, “naturalistic realism” and “manga or anime-istic realism” are thought to define how works of art are consumed, and we identified these two forms of interpretation (literacies) in France.
著者
増田 のぞみ 猪俣 紀子 東 園子 谷本 奈穂 山中 千恵
出版者
甲南女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、少女マンガ黎明期のジャンル形成過程において作家や編集者がどのような役割を果たしたのかを明らかにすることである。戦後日本のメディア文化をより深く理解するためには、少女マンガという世界的にも稀有なジャンルがどのような作家や雑誌によって作られてきたのか、黎明期の少女マンガの形成過程を多角的に問う必要がある。本研究では、1950年代から1960年代にかけての、「少女マンガ」というジャンルの黎明期とされる時期から活躍を続けるわたなべまさこ、牧美也子、水野英子、花村えい子といった女性のマンガ家たちに焦点を当て、それらの作家たちが少女マンガというジャンルとどのような関わりを持ってきたのかを明らかにすることを目指している。2018年度は、水野英子が呼びかけ人となり、少女マンガ黎明期に活躍した作家や編集者らによる座談会が計4回開催された「少女マンガを語る会」の活動に注目し、この座談会の記録を報告書として後世に残すための作業を進めた。また、少女マンガ黎明期の「少女」イメージに大きな影響を与え、その後は女性週刊誌などを舞台に「劇画」作品を描いた牧美也子を取り上げ、牧の作品と少女マンガジャンルとの関わりを掘り下げる調査を進めた。その内容については、2018年12月に仁愛大学にて行われた中部人間学会大会において、「黎明期少女マンガと牧美也子――「少女」イメージと女性向け「劇画」をめぐって」と題した成果報告を行った(報告者・増田のぞみ)。
著者
村田 麻里子 パスキエ オレリアン 山中 千恵 伊藤 遊
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.57-81, 2014-10

※本研究の一部は、平成24年度関西大学在外研究による成果である。※本論文は、2013年度仁愛大学共同研究費およびJSPS 科学研究費・若手研究(B)研究課題番号:24730047 (代表 山中千恵)による研究成果の一部である。This paper reports on the special exhibition of Korean comics 'Flowers that Never Wilt' at the 2014 Angouleme International Comics Festival. It also analyzes the 'politics' involved in the festival site and the exhibition display. The exhibition, which dealt with the issues of 'comfort women', raised disputes among the three involved countries: Korea, Japan and France. This paper tries to carefully examine the cause of these disputes, and to clarify the differences or the gaps in their perspectives towards exhibiting such political issues.本稿は、フランス・アングレーム市で毎年開催されるアングレーム国際BDフェスティバルに出展された韓国漫画の展覧会「枯れない花」展を、現場のレポートを交えて概観するとともに、そこにおいて顕在化した場と展示の〈政治性〉についての考察を行うものである。これによって、日韓仏三国には、〈政治性〉をめぐる解釈に齟齬があること、またここには日韓間の問題だけではなく、ヨーロッパからみた「オリエント」としてのアジアという問題も、影を落としていることが明らかになった。
著者
山中 千恵美 青江 誠一郎
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.75-82, 2018 (Released:2018-04-16)
参考文献数
22

食餌中へのカルシウム (Ca) 添加量がマウスの膵臓の機能に及ぼす影響を調べた。KK/Taマウスを3群に分け, AIN-93G組成を基本とし, Ca含量が0.25% (L群) , 0.5% (M群) , 1.0% (H群) となるように炭酸Caを配合した飼料をそれぞれ7週間給餌した。その結果, 血清Ca濃度に差はなかったが, 血清リン濃度は, L群, M群に比べてH群で有意に高かった。血清副甲状腺ホルモン (PTH) 濃度は血清リン濃度と有意な負の相関が認められた。インスリン負荷試験 (ITT) では, 15分, 30分値の血糖値がM群に比べてL群, H群で有意に高かった。膵臓の機能に関わる遺伝子発現は, M群, H群に比べてL群で有意に高かった。膵臓の炎症に関わる遺伝子発現では, H群に比べてL群で有意に高かった。以上の結果, 低Ca摂取は, 膵臓での炎症を誘発し, インスリン抵抗性を示すことが認められた。また, 高Ca摂取では, 低Ca摂取とは異なり, 別のメカニズムで膵臓の機能に影響した可能性が示された。
著者
谷本 奈穂 東 園子 猪俣 紀子 増田 のぞみ 山中 千恵
出版者
関西大学総合情報学部
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
no.39, pp.37-50, 2013-08

本論は,日本アニメが海外でどのようにして読み取られるかについて,キャラクターの図像に焦点を当てながら考察するものである.具体的にはフランスの学生に対し,キャラクターを10種類提示して出身地を予測させた.その結果,出身地をキャラクターの外見に基づいて判断する場合と,マンガ・アニメに関する知識に基づいて判断する場合があると分かった.日本では「自然主義的リアリズム」と「まんが・アニメ的リアリズム」の二つがあり,その二つが作品の消費形態を規定するとされるが,フランスでも二つの読み取りが行われている(二つのリテラシーがある)ことが確認できた.This paper examines and investigates how Japanese animation is being interpreted in France. To this end, we focus on character iconography interpretation. We presented French students with ten types of characters and asked them to predict the fictional birth places of these characters. The results showed that the students came to their conclusions based on either the appearance of the characters or their knowledge of manga and anime. In Japan, "naturalistic realism" and "manga or anime-istic realism" are thought to define how works of art are consumed, and we identified these two forms of interpretation (literacies) in France.