著者
足澤 萌奈美 脇田 雅大 上床 尚 阿部 恵 松島 理明 矢部 一郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.291-297, 2023 (Released:2023-05-27)
参考文献数
18

症例は50代男性.受診3年前から寒冷での皮膚変色を自覚し,2ヶ月前より微熱,体重減少,夜間の盗汗などのB症状と四肢異常感覚・表在覚鈍麻が加わった.血液検査で炎症反応亢進,リウマトイド因子(rheumatoid factor,以下RFと略記)高値,補体低下を認め,クリオグロブリン陽性であった.画像検査で全身リンパ節腫大がみられ,頸部リンパ節生検,筋生検を施行した.病理組織診で節性辺縁帯リンパ腫,クリオグロブリン血症性血管炎(cryoglobulinemic vasculitis,以下CVと略記)の診断となり,化学療法,ステロイド療法で症状は軽快した.CVは稀な免疫複合体性小血管炎であるが,血管炎を疑った際には鑑別に挙げ,RFや補体の測定を考慮し,感染症,膠原病,血液疾患などの原因疾患を検索すべきである.

1 0 0 0 OA 脊髄空洞症

著者
矢部 一郎 佐々木 秀直
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.346-349, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
17

We reviewed the recent advances in syringomelia based on nationwide survey on the epidemiology of syringomyelia in Japan. The estimated prevalence of ambulatory syringomyelia patients in Japan was 1.94 per 100,000. The proportion of asymptomatic syringomyelia patients was 22.7%. Chiari type I malformations and idiopathic syringomyelia were the first and second most common etiologies. Approximately 70% patients were performed foramen magnum decompression (FMD) with dural patch grafting and/or dural dissection. Several pedigrees with familial syringomyelia were observed. The progress of genetic analysis study is expected.
著者
長沼 亮滋 矢部 一郎 高橋 育子 松島 理明 加納 崇裕 佐々木 秀直
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.83-87, 2018 (Released:2018-02-28)
参考文献数
27
被引用文献数
2

3,4-diaminopyridine(3,4-DAP)を投与した9例のランバート・イートン筋無力症症候群患者の治療効果について後方視的に検討した.3,4-DAPは筋力低下と自律神経異常症に対し有効である一方,傍腫瘍性小脳変性症の小脳性運動失調に無効であった.有効例8例の投与期間は15~149ヵ月であった.3例が10年以上投与しており,長期間安全に投与できた.2例が小細胞肺癌(small cell lung carcinoma; SCLC)により死亡し,1例がSCLCの悪化で投与中止した.副作用が生じた2例のうち1例は投与中止したが1例は減量し投与継続した.維持用量や副作用の生じた用量には個人差があり,慎重な用量決定を必要とした.
著者
堀内 一宏 山田 萌美 白井 慎一 高橋 育子 加納 崇裕 金子 幸弘 秋沢 宏次 梅山 隆 宮崎 義継 矢部 一郎 佐々木 秀直
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.166-171, 2012 (Released:2012-03-28)
参考文献数
17
被引用文献数
2 4

症例は37歳女性である.子宮頸癌術後,胸部CTにて腫瘤影をみとめ,クリプトコッカスを検出した.脳MRIで多発腫瘤影をみとめ脳,肺クリプトコッカス症と診断し,抗真菌薬を投与したが効果なく意識障害が出現した.抗真菌薬脳室内投与をおこない意識状態は改善,脳病変の縮小をみとめた.その後脳病変の再増大をみとめ,遅発性増悪と考えステロイドを投与し改善した.難治性経過のため菌株の同定検査をおこないCryptococcus gattii (VGI型)と判明した.C. gattii 感染症では強毒株による健常人症例も報告されている.難治性症例ではC. gattii の検索,ステロイド併用,脳室内投与をふくめた積極的な治療法を検討すべきである.
著者
白井 慎一 水戸 泰紀 小松 博史 矢部 一郎 佐々木 秀直
出版者
The Japan Stroke Society
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.408-412, 2011
被引用文献数
1

症例は17歳女性,既往に特記すべきことなし.2009年8月中旬,突然の右片麻痺が出現し,救急搬送された.初診時,中等度構音障害と右片麻痺あり,NIHSSスコアは11であった.MRI拡散強調画像で左レンズ核部に高信号域を,MRAにて左MCAのM1近位部の途絶を認めた.最終未発症確認時間後2時間52分にrt-PA療法を施行.使用直前のNIHSSスコアは12であったが,90分後には0に改善し,静注120分後のMRAで左M1再開通を確認した.第7病日に経食道心エコーで二次口欠損型の心房中隔欠損症を認め,発症1カ月後に開胸下で閉鎖術を施行した.その後,軽度の右上肢筋力低下を認めるのみで,日常生活動作は自立し,学業に復帰した.未成年発症例におけるrt-PA療法は報告症例数が少ないが,本例のように血栓溶解療法が奏功する場合もあるので,未成年発症例においてもrt-PA療法を治療の選択肢として考慮すべきである.