著者
中村 哲也 丸山 敦史 矢野 佑樹 Tetsuya Nakamura Maruyama Atsushi Yano Yuki 共栄大学 千葉大学 スウェーデン農業科学大学
出版者
共栄大学国際経営学部
雑誌
共栄大学研究論集 (ISSN:1880859X)
巻号頁・発行日
no.7, pp.89-106, 2009
被引用文献数
1

本稿では、栃木産にっこりととちおとめが、香港やバンコクの如何なる購買層に評価されるのか、プロビットモデルを推計し、考察した。分析の結果、下記の諸点が明らかにされた。まず、香港・バンコクにおける国産ナシ品種と国産イチゴ品種の認知度は非常に低かった。今後、栃木産にっこりととちおとめを輸出する際は、輸出専用パッケージ等による品種のイメージアップを図る必要があるだろう。そして、とちおとめは香港では大きさが、バンコクでは香りが評価された。そして、にっこりは中高年層に、とちおとめは女性に評価が高かった。最後に、香港でのにっこりの価格は中国産ナシの4倍、バンコクでのとちおとめの価格はタイ産イチゴの7倍の価格差があった。そして、香港ではにっこりは8割弱が、とちおとめも7割弱が、調査当日の小売価格または若干高くても購入するという回答が得られた。ただし、バンコクでは8割弱が、調査当日の店頭小売価格ならば購入しないという結果となった。そして、プロビットモデルの推計結果から判断するならば、今後の香港でのとちおとめ輸出は、中高年層をターゲットとし、食味評価の高い女性を如何に購買層に取り入れるかが輸出拡大のカギとなるだろう。
著者
中村 哲也 丸山 敦史 矢野 佑樹
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.63-79, 2012-03-15

本稿では、葉取らず、無袋、有袋といった3 つの栽培リンゴについて、色、糖度、価格を消費者に評価してもらい、総合的に比較検討した。その結果、葉取らずの糖度、有袋の色づきの評価は非常に高かった。色づき・甘さとも評価された無袋秋星・北斗・シナノスイート等の中生種は甘さと価格の相関が、有袋ふじ・むつ等は色づきと甘さの相関が確認された。そして一般的に色づきや糖度を評価するのは高齢者や高所得者であった。さらに、品種の価格差が30 円程度ならば若干高くとも高く評価したリンゴを購入するが、100 円以上の価格差がついた場合は購入せず、有袋ふじや無袋秋星を購入する者は著しく減る結果となった。ただし、有袋ふじ・むつ、無袋秋星は、高齢者や高所得者に販売が期待でき、葉取らず・有袋といった栽培方法を上手く使い分けることで、よりよい販売環境の構築が可能になると思われる。
著者
中村 哲也 丸山 敦史 矢野 佑樹 Tetsuya Nakamura Maruyama Atsushi Yano Yuki
巻号頁・発行日
vol.10, pp.63-79, 2012-03-15

本稿では、葉取らず、無袋、有袋といった3 つの栽培リンゴについて、色、糖度、価格を消費者に評価してもらい、総合的に比較検討した。その結果、葉取らずの糖度、有袋の色づきの評価は非常に高かった。色づき・甘さとも評価された無袋秋星・北斗・シナノスイート等の中生種は甘さと価格の相関が、有袋ふじ・むつ等は色づきと甘さの相関が確認された。そして一般的に色づきや糖度を評価するのは高齢者や高所得者であった。さらに、品種の価格差が30 円程度ならば若干高くとも高く評価したリンゴを購入するが、100 円以上の価格差がついた場合は購入せず、有袋ふじや無袋秋星を購入する者は著しく減る結果となった。ただし、有袋ふじ・むつ、無袋秋星は、高齢者や高所得者に販売が期待でき、葉取らず・有袋といった栽培方法を上手く使い分けることで、よりよい販売環境の構築が可能になると思われる。
著者
中村 哲也 矢野 佑樹 丸山 敦史
出版者
日本国際地域開発学会
雑誌
開発学研究 = Journal of agricultural development studies (ISSN:09189432)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.27-43, 2018-12

本稿では,ウクライナを事例として,食品内の放射性物質の知識と安全対策を考察し,如何なる階層の市民がその知識や対策を評価しているのか,統計的に分析した。ウクライナは独立後,国内は親露派と親欧派に分離し,現在に至るまで政治経済が混乱している。ウクライナではチェルノブイリ原発事故当時,西欧に比べてテレビや新聞等の報道メディアから得られる情報が乏しかった。チェルノブイリ原発事故を記憶している者は高齢者であるが,チェルノブイリ周辺地域の住民の記憶は,現在でも鮮明であった。ウクライナ人は放射性物質に関するロシア政府の情報公開を信頼し,親露派が多い東部の居住者も信頼している。しかしながら親欧派が多い西部の居住者はロシア政府の情報公開を信頼していない。ウクライナ人は,日本人よりも食品内の放射性物質の知識が高く,ウクライナではチェルノブイリの事故から30年が経過した今でも放射性物質の安全性を確認する者は9割を超えている。ただし,実際に経口的内部被曝に対して対策していない者は6割を超え,放射性物質の安全対策は家庭的な対策が限られていた。しかしながら,放射性物質の規制値を下回る食品が販売されていた場合の支払意志額はスウェーデンよりも高かった。そして,放射性物質の規制値を下回る食品を買う者は,女性や世帯員数が少ない者であったが,所得が低く汚染が広がる西部の居住者は,規制値を下回る割高な食料を購入しなかった。
著者
中村 哲也 丸山 敦史 矢野 佑樹
出版者
富民協会
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.52-57, 2009-06-25
被引用文献数
2

我が国におけるリンゴジュースの自由化は、1988年に農産物10品目の輸入自由化に関するGATT勧告を受諾し、その後の1990年から開始された。輸入枠があった自由化前の1987年の輸入量は僅か4,000tであったが、2006年には84,525tとなり、自由化後の輸入量は約21倍に急増している。他方、オレンジジュースも1992年に自由化されているが、1987年には8,500t、2006年には88,621tが輸入され、自由化後の輸入量は約10倍に急増している。オレンジジュースの輸入量と比較しても、リンゴジュースの輸入量が如何に拡大したかが分かる。そして、自由化開始以来、急増した米国産は、1997年には中国産にシェア第一位を、そして、2000年にはオーストリア産にもシェアを奪われ、2008年現在、輸入先国のシェア構成比も大きく変化している。他方、国内では2008年8月、青森県弘前市のリンゴ加工品製造・販売会社A社が、産地や加工法を偽装表示した飲料製品などを販売したとして、JAS法違反で業務改善が指示された事件は記憶に新しい。この事件は、リンゴジュースの自由化が開始以来、一般飲用と加工業務用の中国産濃縮還元ジュースを青森産ストレートジュースと不正表示した初めての事件であった。このように貿易自由化後に国内外で流通構造が変革したリンゴジュースの消費者選好構造について、本研究ではアンケートによるデータを用い分析する。