著者
石坂 友司
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.115-127,155, 2003-03-21 (Released:2011-05-30)
参考文献数
65

明治44 (1911) 年に新聞紙上で繰り広げられた「野球害毒論争」は我が国の近代スポーツの受容に際して, 多数の教育家・知識人がそのあり方について意見をたたかわせた歴史的意義を有する論争である.本稿はこれまで野球史上に位置づけられて論じられることの多かったこの論争を,我が国の教育制度を特徴づける学歴主義の整備・拡張という文脈からとらえ返す試みである. 本稿では以下のような考察を試みた.第一に, この論争の背景を当時の教育制度の整備・拡張というコンテクストに結びつけて論じた. そこでは進学の困難さと智育 (試験) 重視のメカニズムが一つの教育問題として議論されていたことを示した. その一方で, 運動を行うことが学業との関係から弊害として認識され, 野球が管理・統制の対象として把握される背景を明らかにした.第二に, 論争は官・私の対立という側面をもち, 官立の教育者による野球排斥論は, 当時台頭していた私大への批判の論理から展開されていたことを明らかにした. これに対する私学の応戦は, 学歴主義の制度化に抗う一つの差異化戦略であったことを示した.以上のように, 論争はP. ブルデューの文化的再生産論の視角から, 文化の「正統性」をめぐる象徴的闘争という側面をもつ「教育論争」として定立していたことが論じられた.
著者
石坂 友司
出版者
関東学園大学
雑誌
関東学園大学紀要. Liberal arts (ISSN:09194355)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-11, 2013-03-31

The new educational guidelines stipulated a compulsory subject of Budo at junior high school for 1st and 2nd year students from 2012. Budo as a subject consists of Judo, Kendo, and Sumo. The educational effects expected from making Budo a compulsory subject are that Japanese tradition and culture would be respected more through Budo education. But the subject contents of Budo referring to Japanese tradition remain vague and cause confusion for teachers. The aim of this study is to consider the educational effects of Budo as a difference between "task" and "achievement." We explore the new possibilities of Budo education as an activity of generating bodily sympathy.
著者
石坂 友司
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.60-71,136, 2002-03-21 (Released:2011-05-30)
参考文献数
44
被引用文献数
3

本稿の目的は,「学歴社会」における運動部の社会的意味を描くことである。明治時代中期に, スポーツはもっぱら将来のエリートたる高等教育機関の学生達によって行われていた。特に, ボート競技は当時最も人気を博したスポーツであった。戦前, 我が国の教育システムの中で最高権威を誇った帝国大学は, そのような活動の中心的存在であった。従って, 我が国のスポーツ文化の総体を理解するために, そこで行われたボート競技がどのような意味をもっていたのかについて考える必要があるだろう。本稿は, 帝国大学生がボートを漕ぐ実践を把握するために, 文化的再生産論の視角から以下のような考察を試みた。第一に, 帝国大学でボートを漕ぐことは, 他者とは異なる卓越した文化資本, 身体資本を獲得する「文化の正統性」をめぐる闘争としてとらえなおすことができる。結果として, それが階級の再生産につながっていくことを論じた。第二に, 帝国大学や一高における運動部, 特にボート部の学校内での覇権が応援の加熱やバーバリズムの結果として失われていく過程を示唆した。以上のように, 本稿はこれまであまり注目されてこなかったボート部に焦点を当て,「スポーツの文化性」をめぐる議論を, スポーツ社会学のみならず, 社会学や歴史学との接合から問いなおす試みである。
著者
井上 洋一 井上 洋一 仁平 典宏 仁平 典宏 石坂 友司 石坂 友司 浜田 雄介 浜田 雄介
出版者
奈良女子大学スポーツ健康科学コース
雑誌
奈良女子大学スポーツ科学研究 (ISSN 2434-0200) (ISSN:24340200)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.30-77, 2019-07-03

奈良女子大学生活環境学部心身健康学科スポーツ健康科学コース主催「第6回 奈良女子大学オリンピック・公開シンポジウム「オリンピックとスポーツボランティア」(2018年11月17日(土)14時~16時15分、奈良女子大学G棟101教室)の採録。シンポジスト:仁平典宏(東京大学準教授)「オリンピックボランティアと「物語」の動員ー「やりがい搾取」論を問い直す」、石坂友司(奈良女子大学準教授)「長野オリンピックからみたスポーツ・ボランティア」、浜田雄介(京都産業大学講師)「トライアスロン大会におけるボランティアとは」、コーディネーター:井上洋一(奈良女子大学教授)本報告は,2018年11月17に行われた第6回奈良女子大学オリンピック・公開シンポジウム「オリンピックとスポーツ・ボランティア」(奈良女子大学生活環境学部心身健康学科スポーツ健康科学コース主催,G棟101教室,14時~16時30分)の採録である.オリンピック開催に向けたボランティアの募集に関して,「やりがい搾取」と批判される問題の検証、ボランティアの社会的意義、スポーツ・ボランティアの特殊性とは何かといった切り口から議論を深めた.

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著者
石坂 友司
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.3-6, 2014-03-30 (Released:2016-07-02)
参考文献数
12
著者
石坂 友司
出版者
奈良女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、1998年の開催から10年を経過した長野オリンピックの開催地域が、大会によって得られた遺産をどのように活用し、意義づけているのかを評価するとともに、各開催地域がどのような変容を経験しているのかについて、それぞれの取り組みから明らかにすることを目的とした。多額の投資にもかかわらず、現在でもポジティブな影響が見られるのは一部の地域にとどまり、多くの地域では借金や競技施設の後利用に課題を抱える結果が浮き彫りとなった。一方で、カーリングに代表されるように、遺産を積極的に運用し、スポーツを文化として育むことを目指す地域の取り組みもみられ、そのことを実証的に明らかにした。