著者
冨田 真永
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.231-234, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
1
被引用文献数
1

本稿の目的は,批判的思考に基づく仮説検定の考え方の指導のあり方を明らかにすることである.初めに,柗元(2018)の「統計的問題解決における批判的思考の働き」の表をもとに,不確実な事象の起こりやすさに着目して問題解決を行う際に働きうる批判的思考とPPDACサイクルとの関係を考察し,3つの活動を提案した.授業実践を通して検証した結果,仮説検定において重要な「確率事象と見なすこと」や「まれと判断する基準」に着目する上で批判的思考が有効に働き,仮説検定の考え方の理解を深める要因になることが明らかになった.
著者
内田 隆 青木 孝
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.483-486, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
6

本研究では,通電によるジュール熱でパンを作る電気パン実験の起源をあきらかにするため,電極式調理の歴史について文献調査と聞き取りを行った.その結果,電気パンの起源は陸軍の阿久津正蔵らが開発した炊事自動車で,電極式調理による製パンよりも前に炊飯が先に実用化されていたことがあきらかになった.終戦後にこの技術が活用されて家庭用電極式炊飯器である厚生式電気炊飯器やたからおはちが製造されたこと,さらに,現在はパン粉用パンの製造量の半分程度が電気パンと同じ電極式調理でつくられていることがわかった.
著者
森永 康子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.7-8, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
5

STEM分野における女性研究者や女性学生はなぜ少ないのかについて,ジェンダー・ステレオタイプ(GST)に関する社会心理学的研究を取り上げて,1) GSTが他者評価に影響を与え,女性が低く評価される可能性,2) ST脅威の現象に見られるように,GSTが自己成就予言として働く可能性,3) 潜在的STの影響,4) 表面的にポジティブに聞こえる場合でも,GSTがネガティブな結果をもたらしうること,の4点から説明を試みる.これらの研究をもとに科学教育にどのような示唆ができるかを考えてみたい.
著者
齊藤 智樹
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.17-20, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
1

本研究では,Next Generation Science Standards(NGSS, 2013)における,領域横断的な概念(Cross-cuing Concepts: CCs)と米国でのその歴史的な扱いに着目し,STEM教育の統合的・領域横断的な学習を支える分析的な枠組みの在り方について,基礎的な研究を行った.特に,NGSSにおけるこれら概念が,領域の核となる概念(DCIs)や科学とエンジニアリングの体験的・経験的活動(SEPs)と効果的に統合されることを目指す,3Dラーニングモデルにおいてどのように扱われているか,それぞれの概念と領域がどのようにつながれているか,またCCs同士がどのように連携するかといった点を明らかにし,領域横断的なカリキュラムの結節点として,期待される機能について考察した.
著者
井上 敦
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.9-12, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
8
被引用文献数
1

本稿の目的は, 親の数学のジェンダーステレオタイプと娘の自然科学専攻の関係を定量的に明らかにすることである. 2018年3月に実施したアンケート結果を用いて分析したところ, 「女性は男性に比べて数学的能力が低い」という質問に肯定的な回答をした母親の娘に比べて, 否定的な回答をした母親の娘は自然科学専攻の確率が高く, 統計的に意味のある差が確認された. さらに, 自然科学のなかでも特に高度な数学の専門性が要求される理工系専攻において, その傾向が強いことも確認された. 一方で, 父親の数学のジェンダーステレオタイプと娘の自然科学専攻の間には, 統計的に意味のある関係はみられなかった. これらの結果を踏まえて, 数学のジェンダーステレオタイプに関する母親のロールモデル効果の存在を指摘し, 求められる支援策を議論した.
著者
石橋 一昴
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.572-575, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
12

本研究は,高等学校数学Aの確率における根元事象についての問題の答えが,学問数学による答えとは異なることから,数学教育の確率単元における根元事象には暗黙的な仮定が存在すると考え,それを明らかにすることを目的とした.また,先行研究の知見から,暗黙的な仮定が存在すればそこから指導上の課題が明らかになるとの示唆を得たことから,確率教育の課題の指摘にも取り組んだ.その結果,確率教育の根元事象は,各根元事象が同様に確からしいことを暗黙的な仮定としていることが明らかになった.次に,事象の確率の定義に「根元事象が全て同様に確からしい」という記述があることと,各根元事象が同様に確からしくない問題が扱われていることを,確率教育における自己矛盾として指摘した.さらに,これらの矛盾から,確率教育における根元事象の意味が一貫していないことを指摘し,それを乗り越えるための対応方策を提案した.
著者
田村 篤史
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.560-563, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
3

Math for Excellenceの教材開発のためには,数学的能力・才能の高い生徒のより多くの抽出,およびその特徴の分析が不可欠である.そのため,(田村,2018)において数学的才能のチェックリスト(質問紙)を開発した.質問紙は,数学オリンピック予選合格者と一般的な高校生のグループから,予選合格者を正判別率93%以上で判別することができるが,マハラノビスの距離による2次の判別分析を用いたため,判別関数が非常に煩雑である(48変数の2次式).任意の集団から予選合格者の予測が容易に行えることが望ましく,本研究では,変数増加法によるロジスティック回帰分析を用いて,任意の集団に適用可能な汎用的でシンプルな回帰式を導出した.
著者
生田目 美紀
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.125-126, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
1

科学教育では、視覚的な資料を提示することにより理解を促すことが多い。本稿では、視覚的な資料を提示できないサイエンスコミュニケーションの場において、視覚言語である手話を取り入れることについて、調査と事例紹介等を通じて考察し、その可能性について述べる。手話は、形状・様態・科学的理論を組み合わせながら「意味を適切に表現し、理解しやすい」ように工夫して創られた視覚言語であり、体を使って表現するため、視覚的な資料の提示が困難な場合でも、容易に組み入れることができる。また、これまでの経験により、形状と様態を組み合わせた手話単語は、かなりの確率で伝わること、伝わらない手話でも解説することで、驚きと納得を得られることがわかっている。このことから、手話を併用することによって、サイエンスコミュニケーションによる学びの広がりが期待でき、科学教育のユニバーサルデザインを推進できると考える。
著者
瀬戸崎 典夫 三重野 愛
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 43 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.457-458, 2019 (Released:2020-07-31)
参考文献数
3

「特別の教科道徳」が教科化され,「考え・議論する道徳」への転換が求められている.しかしながら,教育現場において,授業の中で「考え・議論する」時間を十分に確保できているとは言い難い.そこで,本研究では「特別の教科道徳」における反転授業用シナリオベース教材の開発を目的とした.さらに,小学2年生および,小学校教員を対象に,開発した反転授業用教材の有用性を評価した.その結果,本教材は小学2年生がひとりでも操作することができ,自宅で物語の内容を把握できることが示唆された.さらに,授業内の議論の充実に有用な反転授業用教材である可能性が示された.